オバマの賢人から学ぶこと

2020年05月04日 14:00

毎年、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーハサウェイ社の株主総会は一種のお祭り騒ぎになるのですが、今年は同じ会場ながらも無観客ならぬ株主ゼロのオンライン総会を実施しました。私も一部、「生放送」を見ていましたが、89歳になるバフェット氏の詳細にわたる分析、実務に対するアップデートされた知識に驚かされます。どんな質問にも論理的な回答をパシッと行うところは年齢を感じさせないものがありました。

(ウォーレン・バフェット氏 Twitterから:編集部)

(ウォーレン・バフェット氏 Twitterから:編集部)

さて、同社の決算は表面だけの数字を見れば1-3月の決算の赤字幅は5兆円にも上っていますが、これは所有株式の評価損で未実現の損であります。これが第1四半期であることと年後半には経済活動の回復と共に株価の更なる回復も期待できますので一時的な数字であり、大きくブレると見込まれあまり意味はありません。

いくつか感じたポイントを述べます。営業利益は前期比6%増の約6000億円となっていますが、ポートフォリオが多岐にわたっており、今回は保険事業など救う神がいたというのが見て取れます。日本はバブル後に本業回帰という言葉が流行りましたが、私はこの15年、事業の多角化という真逆のスタンスを取ってきました。本業回帰による深掘りは好調時は利益貢献度が高いものの不調時には救いようがなくなることを体得してきたからです。

今回のコロナにより私の会社へのインパクトも多少はありますが、乗り切れると思われるのは止まるビジネスがなかったことが大きかったと思います。その点ではバフェット氏のスタンスを見続けてきた意味はあったのだろうと思います。

次にバフェット氏がアメリカの成長は続くと考えていることです。実は最近「両大戦間経済」を改めて検証しているのですが、地球儀ベースでお金が回ったことが1920年代の好景気につながったことを指摘したいと思います。つまり、第一次大戦で多額の賠償を負ったドイツに対してアメリカが資本投下⇒ドイツから英仏への賠償支払いに伴う経済復興⇒英国からアメリカへの国債の支払いというお金の循環が世界経済回復への大きな原動力になりました。

今、地球儀ベースで経済の自転車を考えるとペダルを漕ぐ力はそれでもアメリカなのです。そこから様々な資本のチカラを通じて欧州や新興国、そしてあの中国へのインパクトも大きいのです。この自転車の回転を止めるわけにはいかないし、そのためにも世界がアメリカに足を向けられないという経済構造は当面続くのだろうと思います。もしも日本がもっと成長したいならこの地球儀自転車の漕ぐ力をもって資金を回転させるテクニックと仕組みづくりが必要なのでしょう。

3つ目に航空株をすべて売却したという判断への驚きであります。航空関係はバフェット氏のお気に入りだっただけに氏は人の動きが極端に変わると予想している向きがあります。どこまで同意できるかは別としてついこの前までのような誰でも手軽にLCCで海外旅行という話が出来過ぎだったのかもしれません。グローバル化の一つ、人の移動の自由で国内航空運賃より海外旅行の方が安いという現象を生み出したとすればバフェット氏の今回の投資判断とはバック トゥ カントリー(自国回帰主義)がしばし続くということでしょうか?これは航空だけではなく、ホテルや観光業のいばらの道が長いことを意味するのかもしれません。

4つ目の原油は掘っても採算に乗らないという話は同社がアメリカのシェールオイル関連に投資をしていて痛手を負ったことを踏まえたうえでの発言でした。3月9日付のこのブログで「アメリカはこのシェールオイルで確かに原油輸出国になったのですが、この業界に過去10年で投じられたとされる43兆円の資本はほとんど回収できていないとされています」と書かせて頂きました。バフェット氏もそれに言及しているわけです。ただ、この発言の解釈とはアメリカのシェールオイル業界への資本流入が細ることを促進させ、最終的に原油価格が安定化するシナリオ作りに貢献するとみています。

最後に積もり上がる同社の現金であります。現金と同等物の合計は14兆円を超えます。逆に大きすぎて手に負えないともいえます。同社が誰でも知っている大手への投資を続けてきたことが成功の理由の一つでありますが、これから10年、20年と言うスパンでどんな業種が安定的に成長するのかを予想し資金を投じるのが極めて難しくなったことを改めて意味しています。IT化と効率化でどんどん不要とされる業種や産業が無くなっていくのを目の当たりにして、人々の労働を通じた幸福感を再び取り戻すにはバック トゥ オールデイズなのかもしれないと思うこともしばしばです。

総会の時、バフェット氏のテーブルの上に缶入りのコカ・コーラがブランドネームをこちら側に向いて置いてあったのを見てあぁ、こんなやり方が案外、一番宣伝になるのかもしれないとも思った次第です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月4日の記事より転載させていただきました。

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