規制緩和を受け「教会」の礼拝再開へ

中国発新型コロナウイルスの感染防止に取り組んできた欧州では5月に入り、外出制限、経済活動の停止、学校の休校などの規制措置を段階的に緩和する方向に動き出す国が増えてきた。信者が集まる日曜礼拝を中止し、オンライン礼拝に切り替えてきたオーストリアのカトリック教会は今月15日から日曜礼拝や洗礼など従来の宗教行事を再開する予定だ。

オーストリアのカトリック教会の精神的支柱、シュテファン大聖堂(2014年5月5日、ウィーンで撮影)

それに先駆け、オーストリアのカトリック教会司教会議は3日、政府と教会の間でまとめた礼拝再開に向けた各種の対策を公表した。以下、バチカンニュースに基づき報告する。

先ず、教会の礼拝参加について。各参加者(信者)には10平方mの広さが確保され、他の信者との距離は少なくとも2m離れていなければならない。礼拝中はマスク着用が義務付けられる。例外は6歳以下の子供たち。教会の入口や教会内の施設は定期的に消毒され、礼拝参加者の感染防止実施状況は教会側が配置した職員や警備担当者によって常に監視されなければならない。

司教会議側の説明では、日曜礼拝での聖体拝領は規制遵守のもと実施可能という。ただし、全ての規制緩和策は新型コロナの感染状況次第。感染者が増える傾向が見られた場合、変更はあり得る。

教会側が守らなければならない点。聖水を空にし、聖水鉢を清潔に保つ、教会入口には可能な限り消毒液を準備する、マスクは礼拝中も着用するが、典礼行事中に必要な時に限り、外すことができる。礼拝後、教会内とその周辺で信者たちが集まらないように注意する、感染防止のため、集団祈祷、賛美歌・聖歌の合唱は最小限度に留める。礼拝後は教会内の空気の入れ替えを実施し、密封化しないように注意する、聖体拝領で手の接触が生じたならば、典礼行為を中止して手を洗う。

いずれにしても、礼拝担当の聖職者は通常の感染防疫処置を守らなければならない。

礼拝で最も重要な典礼行事、聖体拝領について。聖餐パンは聖体拝領まで布で掛けておく。聖餐用パンを捧げる直前、典礼行事の聖体拝領をする側はマスクを着用し、祭壇の祭器卓で手を洗うか、消毒する。聖体拝領で授与側と受取り側は可能な限り距離を保つ。手から直接受け取るが、両者の手が触れないようにしなければならない。聖体拝領の典礼行事が終われば、祈り後、礼拝は直ぐに終わらなければならない。感謝の歌や連絡事項の通達などはカット。

司教会議の説明では、小規模であるならば、洗礼式、結婚式は可能。参加者数は教会の大きさとは無関係で家族関係者10人までに制限。罪の告白は告解室の外で実施しなければならない。空気の通りが良く、聖職者と信者は2mの距離を取ること、可能ならば、両者の間に安全ガラスを立てる。教会葬儀の場合、現時点では最高30人までの参加が認められている。

以上。

今年の復活祭(4月12日)は信者たちが参加ができない中、バチカンではフランシスコ教皇がサンピエトロ大聖堂内で復活祭を祝った。世界の教会では新型コロナ時代に対応するためにオンライン礼拝が積極的に行われてきた。そして今月15日から礼拝など教会の典礼行事が再び行われるわけだ。信者たちにとっては待ちに待った朗報だろう。

ところで、オーストリア教会を含む欧州のキリスト教会では、新型コロナ感染前から日曜礼拝の参加率は低く、聖職者の未成年者への性的虐待事件の多発などで、教会への信頼性は地に落ちている。欧州教会ではクリスマス時期と復活祭シーズンを除けば、教会はいつもがら空きだ。新型コロナ対策の規制が緩和されれば、教会に信者が多数集まると期待することは非現実的だろう。

一方、新型コロナの感染拡大に直面し、外出制限や社会的コンタクトなどが実施される中、多くの人々は従来の生き方を激変せざるを得なくなった。職場を失う人々も増えた。ポスト新型コロナの近未来に不安を感じる人々が出てきている。

欧州のキリスト教会は、「第2次世界大戦後、最大の人類への挑戦」と呼ばれる新型コロナの感染に苦しむ信者たちに希望と生きる力を与えるために、新しい霊的復興運動を起こすべき時を迎えている。新型コロナは羊たち(信者たち)だけではなく、羊飼い(教会側)にも生まれかわることを強いているのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。