バロンズ:米株と経済指標の乖離は、解消されるのか

2020年05月05日 14:00

バロンズ誌、今週のカバーは米経済の回復を取り上げる。過去の景気後退期は、従来エネルギーや銀行などが発火点となり雇用が失われ個人消費を押し下げてきた。しかし今は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出禁止措置を受け個人消費が急減し、未曽有の景気後退に陥りつつある。

その個人消費は、3月に前月比7.5%減と過去最悪の数字を叩き出した。米国内の州は段階的な経済再開に進みつつあるが、新規失業保険申請件数は過去6週間に3,000万人を突破している。また米世帯の半分は危機的状況の備えとした貯蓄を有していない。今回の景気後退局面で、GDPの約7割を担う個人消費が回復を担えるか非常に微妙と言わざるを得ない。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米株市場と経済指標悪化の乖離を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

カバー写真:Mal B/Flickr

大いなる断絶、株式とそれ以外の全て―The Great Disconnect: Stocks and Just About Everything Else.

投資に最良あるいは最悪のときという表現は、控え目な表現と言えよう。米国経済はコロナ禍を受け急降下する一方で、米株相場は4月にダウやS&P500はそれぞれ11.08%高、12.68%高を遂げ1987年1月以来の高値を達成。ナスダックも15.45%高と、2000年6月以来で最高のパフォーマンスを遂げた。

その陰でば、米失業保険申請件数は過去6週間で3,030万件へ増加した。米1~3月実質GDP成長率は前期比年率4.8%減と2009年以来の落ち込みを記録し、特に個人諸費ではサービス、そのうち新型コロナ感染を警戒し緊急治療の必要がない診療が減ったためヘルスケアが押し下げ、大幅減となった。

ただし、米1~3月期実質GDP成長率は外出禁止措置が本格的に講じられる前である。むしろ4~6月期に経済活動停止の影響が現れるとみられ、一部のエコノミストは同実質GDP成長率をめぐり40%減を予測する。

一方で、米株は4月に急伸し、何よりダウなど主要3指数は3月23日の底値から30%以上も上昇した。時価総額で言えば、4月は3.6兆ドル、3月23日から7.2兆ドル拡大している。

こうした実体経済と米株相場の大いなる相違は、ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのスコット・クレモンズ首席ストラテジストにしてみれば「謎」である。米株は恐らく、一連のポジティブな材料に反応したと考えられよう。例えば、連邦政府による外出自粛の指針は4月30日で終了した。さらに、ギリアド・サイエンシズの抗ウイルス薬「レミデシビル」が年末までに新型コロナウイルス治療薬として活用されるなどのニュースも重なった。

しかし、クレモンズ氏は野心的な経済活動再開に踏み切ったジョージア州やサウスカロライナ州、テネシー州で今後数ヵ月後に何が起こるか注目すべきと注意を促す。仮に感染者数の大幅に増加すれば、再度制限を課されるだろう。逆に何も発生しなければ、外出禁止措置緩和に慎重な州の背中を押すことになりうる。

何より、米株相場の急回復を支えたのは米連邦準備制度理事会(FRB)と米議会だ。前者は3月15日にゼロ金利を再開させ、同23日に無制限の量的緩和を決定、その結果、保有資産は50%増の6兆ドルへ膨らんだ。その他、中小企業や地方政府への貸出制度を導入し、買入対象を上場投資信託やジャンク債に広げた

Fedの緊急対策は社債市場を活性化させ、4月の新規発行額は2,850億ドルと過去最大を記録した。何より、コロナ禍で大打撃を受けた発行市場に命綱を与えた。例えば、ボーイングは4月に250億ドルの社債を発行した。同様に、デルタ航空は社債発行と融資を通じ50億ドルを調達し、アメリカン航空は景気刺激対策(CARES法)に盛り込まれたプログラムから58億ドルの賃金保証の支援を獲得。クルーズ大手カーニバルは転換社債を含め62.5億ドルの社債を発行、ギャップも22.5億ドルのジャンク債を発行した。各企業の資金調達は、前例のない規模に膨らむ。

作成:My Big Apple NY

Fedや米財務省による企業への異例の介入は、懸念すべき問題事項である。しかし、こうした行動により、流動性の枯渇を通じた破産状態を生み出すことを防いだ。

問題は、米株相場がお先真っ暗な実体経済に合わせ調整するか、あるいは経済が底打ちしたのであれば、景気回復は楽観的な米株相場を正当化するのだろうか?

恐らく、投資家はいずれかの時点で経済指標の数字を無頓着となりうる。確かに米4月雇用統計・非農業部門就労者数は前月比2,200万人の減少が予想され、これまでの過去最悪の10倍以上へ膨らむ見通しだ。失業率も16%が見込まれる。

とはいえ、低金利を背景に中長期的に債券より株式が選好される状況だ。コロナ禍がいかに経済指標が悪化しようとも、株式のバリュエーションと超緩和的な金融政策を受け、株式に資産流入してもおかしくない。とりわけ、金融政策は2009年3月に突入した強気相場でS&P500が340%上昇した当時より、市場に都合が良い状態であれば、尚更だろう。


バロンズ誌の名物コラムの強気ぶりと裏腹に、「5月に売り逃げろ」の格言を彷彿とさせる展開に切り替わりつつあります。振り返れば、FAANG+M銘柄の決算は視界良好とは言えません。

マイクロソフト
・純利益⇒22%増の108億ドル
・売上高⇒15%増の350億ドル
あクラウド部門:27%増の123億ドル
あオフィス部門:15%増の117億ドル
あパーソナルコンピューティング部門:3%増の110億ドル
・売上に対するコロナ禍の影響⇒「限定的」
・決算発表直後の株価⇒上昇

アップル
・純利益⇒3%減の113億ドル
・売上高⇒0.5%増の583億ドル
あiPhone部門:7%減の290億ドル
あサービス収入:17%増の134億ドル
あ付属品事業:23%増の63億ドル
・見通し⇒約10年ぶりに提示見送り
・決算発表直後の株価⇒下落

アマゾン
・純利益⇒29%減の25億ドル
・売上高⇒26%増の755億ドル
あAWS:33%増の102億ドル
あ実店舗:8%減の46億ドル(主にスーパーのホールフーズを指す)
・見通し⇒4~6月期は赤字も、17.5万人の臨時雇用、危険手当など人件費や配送コストの負担増で
・決算発表直後の株価⇒下落

アルファベット(グーグル)
・純利益⇒22%増の68億ドル
・売上高⇒13%増の412億ドル
あ※4年半ぶりの低い増収率に
あグーグルクラウド部門:52%増の28億ドル
あユーチューブ部門:33%増の40億ドル
・決算発表前、グーグルはマーケティング費用を50%削減し、採用を凍結するとの報道あり
・決算発表直後の株価⇒上昇

ネットフリックス
・純利益⇒約2倍増の7億ドル
・売上高⇒28%増の577億ドル
あ世界有料契約者数:1,577万件増過去最大の伸び
あ国別・地域別:欧州、中東が700万件、アジアが360万件、中南米が290万件と北米以外が健闘
・決算発表直後の株価⇒上昇を経て横ばい

フェイスブック
・純利益⇒約2倍増の49億ドル
・売上高⇒17%増の18億ドル
あ月間平均利用者数:10%増の26億人
・2020年の設備投資見通し⇒140億~160億ドル、従来の170億~190億ドルからあ下方修正
・見通し⇒3月に広告収入は落ち込んだが、4月は好転の兆しと指摘、ただしCFOは慎重姿勢
・決算発表直後の株価⇒上昇

一連の内容を嫌気し、5月に調整が入ってもおかしくありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年5月4日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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