どれだけ進む企業や学校でのオンラインやIT活用

在宅、テレワーク、オンライン授業にZOOM会議。この2カ月で急速に当たり前になったこれらの世界がコロナによってもたらされたとしたら時代の変化に対して背中を押してくれたのかもしれません。が、実際には正直、どうやってよいのかわからず、会議や授業の進め方もまちまちで北米ですらまだ標準化できていない状況であります。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

先日、日本のテレビを見ていたら学校の先生がオンラインクラスをやるために時間をかけて教材を手作りしていました。まるで紙芝居を作るぐらいの勢いで、撮影も2-3人の先生が協力してやっているのです。これでは本来のITの意味合いからすると真逆なんです。IT化するというのはいかに効率的に作業を進めるかがキーでありますが、これでは普段のクラスより余計に時間がかかってしまいます。

例えばオンライン化授業をするならオンライン用の教材は文科省なりがベーシックプランを作って全国の先生に配布してしまえばよかったのです。ベーシックプランとは先生が個々に変化球をつけられるようなプログラムにしておき、そこで個性を出せればよいのです。そうすれば現場の先生の時間は大幅に短縮できるでしょう。学校の先生は「おらが生徒」、「おらが学校」というサル山的観念が強く教育に個性を打ち出すため教育のレベルアップを強く推進できないのが残念なのであります。

もう一つみたテレビ番組では在宅の間、オンライン授業に集中できず、飽きてテレビゲームをしてしまう子供でした。自宅に授業を見るパソコンとゲームをするスマホやタブレットが別にある場合、どうしてもゲームの方に引き寄せられてしまうのです。子供にパソコン画面の授業に集中しろというのがそもそもの間違いでオンライン授業がゲームより楽しいと思わせる仕組みが必要かと思います。

一方で日本の子どもたちは教育ITとの親和性が低いことは数多く指摘されています。「日本の教育現場のIT化が遅れている現状は、国際的な調査でも明らかだ。OECD(経済協力開発機構)加盟国生徒を対象に18年に実施された『学習到達度調査(PISA)』によると、学校の授業(国語、数学、理科)でデジタル機器を『利用しない』と答えた日本の生徒の割合は約80%に達し、活用度はOECD加盟国で最下位だった。」(日経ビジネス)とあります。

つまり、今まで教育現場で使っていなかったので今回急にコロナになってどうやって活用してよいか先生、生徒のみならず、大元の文科省ですらその準備ができていなかったために右往左往という結果になったのだろうと思います。今回の教訓です。

では企業では在宅勤務が本当に価値を生んでいるのか、多分、これは半年ぐらいすれば一定の結論が出ると思いますが、私は今の日本のやり方では効果は3割減だと思っています。これは4月13日の「在宅勤務と会社勤務」で書かせて頂いたので詳述はしませんが、日本企業の業務指示は小集団による協業をベースにしており、欧米のような個人へのジョブディスクリプションに基づく自己完遂型勤務体系ではないのであります。

一部では在宅勤務になると企業側はオフィスの縮小化、光熱費の削減、通勤手当に変わる在宅勤務手当の支給(私にはこの発想が全くわかりません)というメリットに対して勤務する側も通勤時間からの解放、衣服や化粧代の節約、ランチや就業後の飲み会などの支出の節約などが指摘されています。私からすればそんなのは本末転倒、抱腹絶倒であります。ビジネスはコスト削減も大事ですが、商品を創造し、売り上げてナンボが先に来るべきではなかったでしょうか?

もしも本気で節約こそが改革だと考えれば経済の循環の法則は無視され、自分だけ良ければいいということになってしまいます。私鉄各社の収入は5割以上が定期券収入を占めます。数多い事務所街の飲食店は立ち行かなくなります。デパートやエキナカ、駅前の繁華街の風景は一転し、つまらない街になるでしょう。あたかもIT活用が企業や学校で進み、変化に準備しなくてはいけないというトーンの記事もあるのですが、私はそんなことはないとみています。

理由はそもそも日本は在宅もオンライン授業にも適する環境ではないからです。自己自立型の人格形成のプロセスが乳飲み子の時から欧米と相違するからです。大体、家が狭すぎて集中できるところもありません。多分ですが、試行錯誤を重ね、10年ぐらいかけて徐々に日本の文化に適応したものが生まれ変化していくのではないかと思います。

人間がテクノロジーに駆逐されたくないなら人間にしかできない行動に価値を見出すほうがおもしろいと考えています。新型肺炎はもしかすると思ったより早く収まるかもしれません。人々は「早く元に戻りたい」と思っています。子供達はクラスメートと会いたいし、働く人たちは会社の同僚と対面業務したいと思っています。係長や課長は「チーム一丸!」なんて言うことでしょう。

私は今が特殊なのだと思っています。ただし、今回のきっかけを大事にしてITの特性をうまく利用して教育や企業活動でITと共存できる落としどころを見出すきっかけになればよいと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月6日の記事より転載させていただきました。