事業再開への準備

「世界経済が底打ちの兆し」とゴールドマンサックスとモルガンスタンレーがレポートしています。モルスタによると底打ち時期は中国が2月、ユーロ圏が4月、北米が4月下旬となっています。また、ゴールドマンは4-6月の先進国経済はマイナス32%、7-9月がプラス16%、10-12月がプラス13%でいわゆるV字回復のシナリオを描いています。

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日本の場合、緊急事態宣言の期間が5月末まで延期されたものの経団連や大阪府などの独自再開プラン提示が報じられていますが、今後、このような独自色ある計画が続出すると思われ、「おらが県」の主張で国家全体で統一感のない一種の混乱状態も考えられます。(首相は一定の方針を来週に打ち出すとは言っていますがこれも一歩出遅れています。)

今、日本を含め、世界各国で起きているのはコロナ対策と経済復興に向けたプランの綱引きであります。日本では特に新型コロナとその状況を巡り、「専門家」と称する方々が様々な意見を投稿し、ほとんど知識がない一般国民は感情や私感が混じるワイドショーなどを介し、そのたびに振り回される状態になっています。

こう言っては批判があるかもしれませんが、東日本大震災の東電の原発問題の際には時の首相をはじめ「専門家」と称する方々がその影響度についてあまりにも多くの意見を述べ、知識のない一般の人を混乱に陥れたあの教訓を全く生かしていないような気がします。

外から見ていると私はこのような日本を「市原悦子型 私は『聞いちゃった』社会」なのだろうと思います。基本的にワイドショーや名前を聞いたことがないようなメディアが発するおどろおどろしいタイトルに引き付けられやすいのです。内容は取るに足らない事実でもいかにもそれが意味ある事で重要なことだという表現になっているのです。つまり嘘ではないのですが、その重みづけのバランスが非常に悪く、それを見聞きした国民は基本的に専門的過ぎて考える知識がないので鵜呑みするという流れなのです。

この混乱を招いた一つの理由は政府の発信力の弱さだと考えています。北米では少なくとも日本で起きているような情報錯そうは少ないと思います。

その中で私が着目しているニュースは5日付の日経の朝刊の中ほどの「SARSと類似点 群馬大学教授 神谷亘氏」という小さな記事であります。遺伝子情報がSARSと配列など違うところもあるが、よく似ていて派生タイプかと思った、という記事です。SARSは突然消え、第2波が極めて弱いものだったという事実をもう一度検証してもよいかと思います。(北海道は第2波と称されていますが、個人的には第1波第2弾だったと思います。)

今後、元の生活状態に戻す綱引きは欧米などの状況をみながら少しずつ歩を進めていくことになるとみています。日本は欧米に比べはるかに緩い規制だったにもかかわらず感染者が少なかったわけですから事業再開への道のりも欧米に比べ1カ月ぐらい短縮できるかもしれません。底入れ時期が欧米に後れを取っている状態ですが、再開のスピードが速く欧米に追い付ける公算がでてきたと思います。

元の状態に徐々に戻ることに関して当地でも抵抗を示している方はいます。白人のヘイトクライムの心理も「伝染病にかかる」という強い危機意識と保守的動きの一種です。その心の扉の開け方は個人個人で大きく差異があるため、回復には時間がかかるのはやむを得ないと思います。

しかし、人はひとりでは生きていけないし、学校や会社を含めたコミュニティと共同生活を無視することは動物の歴史でも人類の歴史でも一度もなかったことあり、人間の本質は変わらないのだと考えています。もしも完全IT化し、他人との断絶社会があるなら人間を辞めろと言っているようなものです。我々は必ず強くなって元に戻るのだということは忘れてはなりません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年5月7日の記事より転載させていただきました。