与党家賃支援策:頑張っている成長企業に死ねと言うようなもの

2020年05月08日 11:31

写真AC:編集部

昨日出てきた与党の家賃支払い支援策。
呆れて、空いた口が塞がりませんでした。

上限50万円?
全国一律?
そんなショボイ給付をする為にわざわざ政府系金融機関からブリッジローン?

私は自助・共助・公助という観点から 家賃支払いの猶予(モラトリアム)という支援策を提言してきました。野党5党で共同提出された法案はそれに近しいものです。

しかし、そのスキームに固執してきたわけではありません。
目的はあくまでもテナントの生き残り。
他に良い案が有れば、支持したい。

先週あたりから聞こえてきた与党の「給付をテナントに直接行う」と言う案でいくなら:

①企業単位ではなく、事業所数単位で、
②全国一律ではなく都道府県別で、
③自粛要請を受けている業種とそうではない業種を区別するか、売上減少の線引きを詳細にする

という形ならば可能性があると訴えてきました。

ところが、昨日出てきた自民党案は
企業単位
つまり、1店舗だろうが50店舗だろうが、給付額は同じ。

全国一律、上限50万円
東京の家賃相場に合わせて決めたとのことですが、飲食店に多い中心街の1階テナント(例えば20坪)で50万円なんて聞いたことがありません。福岡市が独自に出した家賃補助でさえ50万円です。因みに、中小企業実態基本調査(中小企業庁)によると、田舎も含めた全国の飲食業の平均家賃が約46万円。
本当に小規模か、田舎や裏道にある店舗だけは助かるかもしれません。(自民党家賃支援PTは算出根拠を示すべきです)

区別なし(線引きザックリ)
休業や自粛を要請されていなくても売上が下がっているところは給付の対象でも良いと思います。しかし、ザックリ30%と50%減という設定ではなく、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%減と、少なくとも10%ずつの線引きにした方が、本当に困っているところに多く行き渡るはずです(自粛要請をされている業種は90%以上落ち込んでいるところが多いです)。

このような生煮え案がなぜ出てきたのでしょうか。スキームはさておき(こんなレベルならブリッジローンなど組まずに、持続化給付金に上乗せすれば良いのでは?)、とにかく金額が小さすぎます。
地方と、お年寄りが多い昔ながらの小規模事業者に偏重しているようにさえ見えてしまいます。(自民党支持層?)

これでは、中小企業から一歩飛び出して、なんとか成長しようと頑張っているチャレンジャー経営者たちに死ねと言っているようなものです。

ベンチャースピリットを持ち、リスクをとって出店数を増やしている人たちは都会に多く集中しています。飲食業でも、理美容業でも、小売業でも、エンタメ業でも、その他の多種多様なサービス業でも。

借金に借金を重ね、会社を大きくすること、店舗数を100店舗にすること、社員数を1000人にすること…明日を夢見て数えきれない程の壁を乗り越え、仲間を増やして頑張ってきた人たちです。

そういう努力を重ねて来た人たちがいま無為無策に潰されようとしているのです。

例えば、1店舗か2店舗を経営している中小企業であれば、持続化給付金で200万円、自治体の協力金で100万円、雇用調整助成金で休業手当の大半、今回の家賃給付案で50万円(×半年分)、たらずまいを制度融資、、、という形で確かに十分かもしれません。

(私も、タリーズが2店舗の時でしたら、社員も1人で、後はアルバイトだけでしたから「助かった。何とかやっていけそうだ」と思っていることでしょう)

緊急事態宣言で休業中の都内施設(saruking/写真AC)

しかし、中堅企業で20店舗経営しているようなところは、月に家賃だけで2、3000万円、その他の販売管理費で更に数千万円も支払う必要があるという状況です。飲食業は自粛を要請されていますので、売上が前年比95%ダウンの場合は、ざっと計算しても毎月6、7000万円の赤字になります。50万円の家賃補助が出されても焼け石に水なのです。

既に数十店舗の初期投資と、コロナ禍の資金繰りの為に十数億円の借金をしているところも多く、限度も一杯です。溶けて無くなってしまった過去の売上の為にどこでも良いから民間金融から金を引っ張ってきて凌げと誰が言えるでしょうか。上場しているような大手企業と違って、全てに社長の連帯保証もつくのです。いつまで借金を増やし続けたら良いのかも分からないのです。

私は1ヶ月間の緊急事態宣言発出に賛成でした。
接触率9割減を目指し、ロックダウンに近い状態にできれば一気に感染者数は減らせるはずだと。

しかし、その高い目標を本気で目指すなら、休業をしっかりと要請し、その分の補償を約束する必要があります。売上がゼロでも生き延びる為の固定費さえ見てもらえれば、お店だって全員が閉められたはずです(それでもロスは発生するのですが)。単純計算ですが、外食産業の1ヶ月の市場規模は約2兆円です。その家賃と人件費を全て補償したとしても約8千億円。それで全店閉店が可能だったのです。

また、総務省の数値を元に算出したサービス産業全体の中から休業要請を出された業種を足した場合の売上規模は約9兆9千億円。その家賃と人件費を補償した場合は4兆円。第二次補正予算に100兆円という話も出てきていますが、初動で思い切って出した方がズルズルいくよりは良かったと言うことです。

残念ながら、出口(解除)の数値目標も提示されないまま、日本は先の見えない緊急事態宣言の延長に突入してしまいました。

以前から何度も繰り返していますが、私は売上や経費、もしくは家賃を全額補償しろと言っている訳ではありません。元々は「キャッシュフローがままならなくなった会社が多い。ちゃんと返すので、家賃分だけでも一定期間は政府系金融機関に立替払いをお願いしたい」と主張してきただけです。

それは業種や規模に関わらず、困っているテナント企業側も、不動産オーナー側も、あまねく(自助共助の精神を失わずに)助ける事が出来る施策だと今も信じています。

(それに対して、本来は全額補償するべきだと考える有識者も多いです。国会議員時代、一緒に様々な提言をしてきた藤岡隆雄さんのブログ記事も宜しければご覧下さい)

しかし、現在の政権は何に囚われているのか、直接給付というバラマキ的な発想で、小規模な事業の救済だけを考えているようにしか見えません。

そもそも、企業の定義が時代にマッチしていないことも問題です。
コロナ禍で出てくる政府の支援策は中小の事業主が最も優遇を受けやすくなっていますが、「中小企業法基本法」の定義では小売業や飲食業は資本金が5千万円を超えただけで中小企業ではなくなってしまうのです。

因みに、この「中小企業基本法」は57年前(昭和38年)にできたものです。

私が23年前に借金70百万円でタリーズ1号店を作った時は、まだ間接金融しか考えられない時代でした。その後、法人成りしましたが、資本金は20百万円からスタートしました。

しかし、今はベンチャーキャピタルやエンジェル投資家がたくさん存在します。1号店を出すために、資本金を60百万円や80百万円集めたという話はザラにあります。

そのような会社は、1店舗しかないのに、既に中小企業ではなくなり、コロナ禍においても優遇措置が受けられないのです。少し話がそれましたが、この要件緩和もすぐに必要だと思います。

とにかく、与党には現行案の見直しか、野党案とのハイブリッド化を実現して頂きたいと思います。
こんな時に限って「スピード重視」と弁解せず、むしろ中身重視でお願いします。もう、ここまで待たされたのです。1週間も有れば練り直した改善案が出せるはずです。もっと良い案が出てくるならば、不動産オーナーも賃料の支払いをあと少しは待ってくれるはずです。

このままでは素晴らしい技術力、ブランド力、商品力、そして経営ノウハウを持ち合わせ、多くの雇用を生み出し、日本の次世代を担うところまで成長してきた企業の多くが消えてなくなることになります。

これは、今後の日本経済の少しでも早い復興のためにも、経済的苦痛を理由に命を絶ってしまう人を増やさないためにも、必要不可欠な施策なのです。


編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2020年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。

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松田 公太
タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員

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