巣ごもり生活で子どもにどう対応するか 〜専門家に聞く

2020年05月10日 06:00

新型感染症の蔓延に伴う外出自粛が長引き、特定警戒都道府県では学校の再開も先になりそうです。「巣ごもり生活」は子育てにも悪い影響を与え、騒ぐ子どもを思わず叩いてしまうというようなマルトリートメント(困った子育て)が増える恐れがあります。この問題に詳しい福井大学の友田明美教授にインタビューしました。

Hades/写真AC

Q1:専門家として現状をどのように捉えていますか。

親子で家の中で過ごす時間が増えました。健康面や経済面の心配が続き先も見えない中、子どもの学校休みも長くなり、親も子も不安が募り、気持ちが滅入ってしまうことが増えているのではないでしょうか。

私が診療をしている外来には、「親子で一緒にいる時間が長すぎて、溜まったストレスをどう解消していいかわからない」という、切実な悩みを抱えたお母さんがたくさんいらっしゃいます。親も感情を持った生き物です。さまざまなストレスを感じている時に、子どもが言うことを聞かないとなると、必要以上に怒ってしまうこともあります。

子どもも友達に会えず外にも出られずストレスを抱えていますし、自分や家族が感染するのではないかという不安も感じています。子どもは大人と違って不安やストレスの解消がうまくできませんから、親にべったりくっついて離れなかったり、必要以上にわがままになったり、頭痛や不眠などになるお子さんもいます。時には、言葉が乱暴になったり、兄弟で喧嘩をしたり、モノに当たったりなど、普段と違った姿を見せるかもしれません。

さらに、ソーシャルディスタンシング(社会的距離拡大戦略)は、家の中という「私」空間と家の外の「公」空間を隔てます。これは子育てには非常に危険な状況です。ともに不安やストレスを抱えた親子が、「公」空間から隔絶されて長時間過ごすので、さらにストレスを増幅してしまいます。今の状況では誰かに助けを求めることも躊躇してしまうでしょう。国連をはじめ、多くの専門家やNPOなどが、児童虐待やDVの増加を懸念しています。

Q2:マルトリートメントを減らすために養育者は何を心がけるべきなのでしょうか。

重要なのは、まず、養育者である親がストレスを減らすことです。親からストレスを取り除くことが、子どものストレスを軽減することにもつながります。

日本の住宅事情では簡単なことではありませんが、親も子どもも、狭くてもいいので1人になれるスペースを持つとよいでしょう。いつも同じ部屋にいると互い息が詰まります。

お子さんの学校が休みになったことで、勉強が遅れてしまうのではないかという不安も大きいと思います。いつにも増して「子どもの教育・子育ては自分が100%担わなくては」「完璧にやらなくては」と、肩ひじを張って頑張っている親御さんも多いのではないでしょうか。でも、ただでさえストレスの多い大変な時ですから、自分に対しても子どもに対しても少しのんびり構えたほうがよいと思います。

Q3:公園の閉鎖などの対応は、マルトリートメント防止の観点では行き過ぎだったのでしょうか。率直な考えを聞かせてください。

公園が閉鎖され家で過ごす時間が長いとゲームや動画などをついつい見せてしまいます。場合によっては、子ども達はスマホやゲームに依存してしまう可能性があります。

公園などで体を動かすことが出来なくなると、スマホやゲームで脳が興奮して眠れなくなる → 朝、起きられない → いざ学校が始まった時に遅刻してしまう、という悪循環に陥ることもあります。

長期的にみると、さほど混み合わない公園まで閉鎖する必要はないと思います。

Q4:マルトリートメントが児童虐待に進展しないために、養育者に守って欲しいことを一つだけ挙げるとしたら何ですか。

養育者が「完璧にやらなくては」と思うと、どうしても子どものいけないところ、できていないことばかり目につき、マルトリートメントにつながりやすくなります。まずは「私ってよくやってる!」と自分を褒めてあげることです。それから、子どももしっかり褒めることです。

もし、うっかり子どものこころを傷つけるような言動をしてしまった時は、手をつないだり、抱っこしたり、「スキンシップ」をしてあげてください。子どもは、ぬくもりに包まれて安心感を得ます。いっぽうで親も脳が活性化し、オキシトシンというホルモンが分泌され、穏やかな気持ちになれます。

とくにお父さんたちには、お子さんと一緒に体を動かしたり、お母さんができないような遊びをしてあげてほしいです。休みの日はスマホやテレビをずっと見ていないで、お子さんとの“濃度が濃い時間”を過ごしてください。それがお母さんのサポートにもつながります。

今は、一緒に過ごす時間が増えて、子どもとの距離を縮めるチャンスでもあります。ここで「ほめる子育て」に移行しておけば、コロナの後も、子どもとの関係をより良くできるはずです。

参考資料:
・国連広報センター「News in Brief:COVID-19:家庭内暴力増」(4月6日)
・国連女性機関「女性と女児に対する暴力:影のパンデミック」(4月7日)
・前田晃平「女性たちの命綱「Mask19」世界中で激増するDVとその対策、フランスの事例まとめ」(4月15日)

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

過去の記事

ページの先頭に戻る↑