緊急事態宣言下の臨床研修医の現状とオンライン採用面接

2020年05月10日 06:00

こんにちは! 東川口の歯医者 中田智之です。

新型コロナウィルスに関する緊急事態宣言が発令されている中、医療機関には一層の政府方針遵守が求められていますが、その中で難しい立場となっているのが臨床研修歯科医たちです。

(参考)歯科臨床研修制度の概要 ― 厚生労働省

photoB/写真AC

簡単に説明すると国家試験合格後に1年間、歯科医師免許をもった研修生として、病院やクリニック(協力型臨床研修施設に指定されているもの)でOn-the-Job Trainingする制度です。

1. 歯科臨床研修制度とは

臨床研修に参加しないこともできますが、その場合開設者として開業することが難しくなります。

自分は研究者として生きていくというものや、開業せず勤務医でありつづけると決意している場合は臨床研修に参加しないということもあり得ますが、人生なにが起こるかわからないので基本的にはほぼ全員が参加するものと考えていただければとおもいます。

これは広く一般に誤解されていることと思いますが、6年間の歯科大を卒業し、国家試験に合格して歯科医師免許を取得した新米歯科医師というのは、運転免許取りたての若葉マークドライバーと同じと考えてください。

若葉マークドライバーも規則を理解して公道は走ることはできても、周囲のベテランドライバーの気遣いが必要だったり、助手席に指導者に乗ってもらったりが必要です。ごく一部の猛者を除いて、いきなり首都高に乗るというのは、本人も怖いと思います。

卒業後1年目の臨床研修歯科医も、学術や規則を理解し法的には全ての歯科医療行為が認められているものの直ちに一人前の臨床判断や治療技術が身についているというものではなく、職場の院長や先輩のフォローや、先輩衛生士さんの理解と協力の下、一つずつ仕事ができるようになっていくものです。

2. 緊急事態宣言下の歯科臨床研修制度

さてこのように歯科臨床研修制度というのは(最低限の)技術継承として重要な役割を担っていますが、緊急事態宣言の下でかなり停滞している状態です。

研修の実施主体である歯科大学附属病院がそもそも急患・必須の治療のみ対応する縮小診療をしているので、その体制の中でOJTは難しいでしょう。ベテラン勢ですらあまり経験したことのない水準の感染防御をしている中で、未熟な臨床研修歯科医を現場に投入するという判断はリスクのあることと思います。よって現状、臨床研修歯科医はリモートワークとなっています。

もちろん歯科医師臨床研修の全てがOJTである必要はなく、リモートワークでも一定の成果はあることと思います。しかし歯科臨床技術の養成においてOJTが重要な要素を担っていることは確かです。

そして歯科医師臨床研修制度のOJT部分のだいご味ともいえる、院外研修施設への4~8か月の出向に関しても、例年とは違う展開になっています。

院外研修施設とは大学病院と提携しており、一定の施設基準を満たす市中のクリニックが該当し、医科と違って開業医が多い歯科にとっては臨床研修歯科医が本当の現場を体験する機会となっています。

FineGraphics/写真AC

例年であればこの時期は8月から始まる院外研修に向けて、臨床研修歯科医と受け入れ施設の間でマッチングが行われます。

私も5つくらいの施設見学に行き、研修担当の院長やベテラン歯科医と面接し、時にご馳走になり、多くの刺激をいただきました。

ある時は老歯科医師に自分の引き際と歯科医院のその後の話を聞き、ある時はバリバリ系若手院長の野望に触発されたりしました。クリニックは院長の心の在り方を反映するようで、スタッフの雰囲気、診療システム作りなど、たった数時間でも現場の空気を吸ったことは、今のクリニックづくりの参考になりました。

しかし緊急事態宣言下で各クリニックを臨床研修歯科医が見学に巡回するというのは、ただでさえリスクを指摘されている医療機関において感染拡大の一因となってしまう可能性もあり、現状見学禁止ということになっています。

3. オンライン面接の効果

そういうわけで管理型研修施設(大学病院)からは研修歯科医と受け入れ施設はメールで連絡を取り合い、質疑応答をするようアナウンスがありました。

しかしOJTである以上臨床研修歯科医には私のクリニックで実際に医療行為をするというわけなので、アルバイトの採用面接並みの情報はこちらとしても欲しいところです。

経歴自体よりも、経歴についてきちんと前向きな説明ができるか。質問に対する回答内容よりも、どのような態度やトーンで質問に応答するか。面接ではそのような部分を見ると思います。

そこで私のクリニックでは流行に乗ってZOOMによるオンライン面接をやってみました!

※画像はイメージです(photoB/写真AC)

歯科医は技術云々ありますが結局は対人スキル(インフォームドコンセントが必要十分に実行できるか)が重要になってきます。会話での目線や空気感などから、対人スキルの伸び代があるか、医院のコンセプトに合致するかなどを知るための情報は、メールや電話よりもかなり多くの得られたと実感しました。

研修歯科医の側としても、研修指導医(私など)の人柄や空気感などが自分にあったものかどうかは十分に検討してもらいたいと思っているので、それらをしっかり伝えられたという手ごたえがありました。

またZOOMで会話する中で普段の面接以上に… 具体的には一緒にランチした程度には仲良くなれた感があったので、これは不思議でした。

オンライン面接をお互いに協力して成立させるという多少の努力が、共同作業感となるのかなと分析しています。

さらにスマホのリアカメラに切り替えて医院を巡ることで、バーチャル医院見学も同時に行うことができます。これには「初めてこのような対応をしてもらった、非常に参考になった」と研修歯科医からも好評をいただき、先行者利益となったと感じております。

まとめ

オンラインでは解決しないこと… 例えばOJTなどリモートワークでは非常に難しいといった事柄は大いにあると感じています。

しかし実際にやってみると普通に面接するとよりも、オンライン面接のほうが仲良くなれた = より踏み込んだ情報をお互いに交換できた、などといった、思わぬメリットも見つかりました。

縮小営業で時間があるのならば、思いついたらなんでもチャレンジしてみることは重要と思います。

歯科医療全体としてもオンライン診療などについて議論が進み、まもなく遠隔診療の初診解禁などが実施されていきます。

アフターコロナでは今まで通りの経営戦略が通用しない可能性があり、少なくとも緊急事態宣言解除とともに速やかにV字回復となる保証もないと考えております。

時間があるうちに色々試したり、勉強してみる、というのは有意義な過ごし方ではないでしょうか。

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中田 智之
歯学博士・医療行政アナリスト

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