バロンズ:米株ラリーに忍び寄る、不吉な影

2020年05月10日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーに米住宅市場を掲げる。新型コロナウイルス感染拡大により、経済関連の指標は暗い見通しを示し経済の安定を脅かしつつある。

米4月雇用統計によれば、単月で金融危機時の2倍以上の雇用を喪失し、4月第1週には賃貸者の3分の1が家賃を支払わなかった個人消費は3月に前月比7.5%減少単月では1959年の統計開始以来で最大の落ち込みを記録した。

その割に、住宅市場は予想以上に逆風に耐性がある住宅保有者と見込み客のお蔭で、予想外に健闘する可能性がある。実際、過去の景気後退局面は住宅購入を希望する者に絶好の機会を与えてきた。

不動産情報会社ジローによれば、金融危機を除き1997年以降で景気後退のような状態を1,039回経験したが、その間に住宅価格は8割の確率で上昇、平均の住宅価格上昇率は4%となる。実際、全米の約95%が外出禁止措置に伴い経済活動が停止した今年の4月にも、住宅価格は前年比1%上昇していた。その他、住宅市場に強気となれる理由を確認するには、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米株高を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

カバー写真:RosieTulips/Flickr

米株ラリーの陰で、暗いシグナルが点灯―The Stock Market Is Rallying Now, but Dark Rumblings Signal a Downturn

先物市場は、楽観的な軌道をたどっているようだ。しかし、先物市場が発するメッセージはどちらかと言えば恐怖感を誘う米4月雇用統計と整合性をもち、米株高とは一線を画す。

WTI原油先物価格は約2週間前、貯蔵スペース不足で買い手が受け渡しに応じられず、マイナス40ドル台近くまで急落した。かつて「黒い黄金」ともてはやされた原油は、今や原油の引き取り手に金を払う必要が生じるなど「愚か者の黄金」へ変貌を遂げたと言える。

前週末、FF金利先物はマイナス金利に陥る可能性を点灯させた。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨や発言などを通じ、Fedは何度かマイナス金利導入に否定的な見解を表明しているが、日銀や欧州中央銀行(ECB)は導入済みである。FF先物市場がマイナス金利を織り込み始めた背景にテクニカル的な要因が想定される一方、米2年債利回りは0.1%を割り込んだ。

WTI原油先物とFF金利先物市場の推移は、変則で正常ではないかもしれない。その半面、米4月雇用統計など深刻な景気後退を示す経済指標とリンクする。失業率など、労働参加率が低下していなければ、もうあと5%ポイント高くなっていてもおかしくない

米株高と世界恐慌時のような雇用喪失の共存は、まるでゼロ金利政策再開や無制限の量的緩和の導入、緊急資金供給措置などFedによる矢継ぎ早の政策対応と同じくらい希少だ。5月8日時点で、Fedの保有資産は6.68兆ドルと過去8週間で56%も急増した。その陰で3月23日以降、S&P500種株価指数は31%上昇、ナスダックに至っては33%高を遂げ年初来リターンをプラスに転換させた。

チャート:Fedの保有資産とナスダック

(作成:My Big Apple NY)

市場参加者は次の展開を織り込みに掛かっており、米株の反発は景気と業績の回復にふさわしいと判断しているようだ。また、米10年債利回りが1%割れの状況で、S&P500の配当利回りが2.07%というのは、十分魅力的である。

とはいえ、もうひとつの市場に不吉な前兆を現れ始めた。

バークレイズによれば、S&P500配当指数先物は2020~21年の減配を織り込み、市場の楽観的な売上見通しと対照的だ。バークレイズはS&P500配当先物が表す悲観の方が「正当化される」と分析。市場では2020年の配当額の伸びは前年比6%増、2021年は12%増と見込まれるが、バークレイズは17.5~22%減を予想し、これは過去の景気後退時に10~20%減だった動きに近い

チャート:S&P500配当指数先物が表す配当額見通し(2020年以降)

(作成:My Big Apple NY)

S&P500配当指数先物は、経済活動の一部再開を手掛かりに強気に推移する米株相場と、相反する展開を迎えている。米2年債利回りが過去最低で推移するように、今後一段の落ち込みを示す前触れではないだろうか。


4月末までで減配や配当支払い停止を発表した主な企業は以下の通り。

●GM(自動車)→配当支払い停止
●エスティー・ローダー(化粧品)→配当支払い停止
●グッドイヤー・タイヤ(自動車部品)→配当支払い停止
●ラスベガス・サンズ(カジノ)配当支払い停止
●シュルンベルジェ(エネルギー)→75%減配、設備投資も30%削減
●インベスコ(資産運用)→50%減配、現金確保狙い資本金2億ドル引き出し
●アライアンス・データ・システムズ(テクノロジー)→67%減配、自社株買いも停止

減配や配当支払い停止以外に、自社株買いの中止に動く企業は今後も増加するのでしょう。それでも米株相場は現時点でどこ吹く風。過剰流動性というカンフル剤を得て、着々と下げ幅を巻き戻しています。このまま強気相場を駆け抜けるかのように見えますが、第1段階の合意をめぐって米中間がキナ臭くなりつつあり油断は禁物です。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年5月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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