経済のダイナミズムと安全保障 ~ 外為法改正に思う

2020年05月11日 06:00

2日続けて中国の公船が日本の領海に侵入しました。5月に入っても中国の軍事的挑発が引き続き続いています。

コロナ禍中でも繰り返される尖閣沖への中国公船侵入(2019年防衛白書=海保撮影画像より)

中国で発生した新型コロナウィルス感染症の広がりと、その結果としてヒトとモノが止まってしまっている現在の状況、欧米の先進国が非常に大変な状況になっているために輸出を中心に構造不況となりかねない今後の状況への対応など、政治が取り組むべき課題は山積していますが、以前から述べているとおり、中国や北朝鮮、ロシアといった潜在的脅威に囲まれている我が国としては安全保障環境も注視せねばならない状況が続いています。

そして、中国等が狙っているのは領土や領海だけではありません。我が国の技術や情報を入手すべく、表からも裏からも虎視眈々と狙っているということも忘れる訳にはいきません。このような経済的な安全保障の観点からも、先日8日に施行になった改正外為法はきわめて重要な一歩です。

しかしながら、この外為法に代表されるような経済安全保障はきわめて重要ですが、同時に今のグローバルな経済において、外国からのヒトやカネの流れ、またコーポレートガバナンスの要素が、生産性や競争力の観点から我が国の成長にとって欠かせないものであることも忘れてはなりません。海外からの人材や資金のフローなくしては、我が国の経済のダイナミズムも成長もあり得ません。

こうした点を踏まえれば、安全保障との名目で投資家や外部からの経営への適切なプレッシャーを弱め経営の緊張感がなくなってしまうようなことがあってはなりません。実際、これまでの多くの日本企業は、内部留保や終身雇用にみられるように、人材や資金を有効に活用できず、結果的に競争力の低下が顕著だったために、安倍政権ではコーポレートガバナンス改革を積極的に進めてきた経緯もあります。

昨年12月の日中首脳会談より(官邸サイト)

今回のコア業種のリストについては、一部でもコア業種の事業を行っていれば銘柄として対象となること、どの事業が該当するかの判断基準が明確になっていないこともあって、必要以上に対象の銘柄が広いのではないか等々、様々な議論があることも事実です。安全保障上の懸念以外の要素が少しでも入り込んで恣意的な指定がされることがないように、我々としても注視していくことが必要です。

実質的には一般的な外国投資家については、コア業種の銘柄であっても、役員を出すといったケース、もしくは安全保障上の懸念に該当する事業に関する重要な提案を行うということでなければ、従来と同様10%までは事前報告は不要となっていますので、基本的には問題はないと思われますが、一部に安全保障に乗じて外部のガバナンスを弱めたいとの動きがあったともいわれており、安全保障上の懸念が実際にあるのかどうか、予見可能な形で適切な運用が行われるようにウォッチしていく必要があります。外国投資家が投資しにくいというイメージは、我が国の経済の将来を考えれば、決して好ましいものではありません。

また逆に、実際に安全保障上の懸念がある投資は様々な迂回によって、表面上は極めて安全な投資であるかのように見えているケースが大半であって、今回の規制でそうしたものを阻むことができるかといえば、そこには疑問が残ります。本来阻止していかねばならない動きを実務的に見抜いていくことも極めて重要です。

何れにしても、今回の法改正が施行されればそれで大丈夫なわけではないので、本来、日本経済に必要な投資が行われず、逆に安全保障上の問題があるものが姿を変えて行われてしまうといった事態がないよう、今後とも実態的な運用をしっかりと見ていく必要があります。

※今回の法改正の詳細につきましては、以下の資料をご参照下さい。

「外国為替及び外国貿易法の関連政省令・告示改正案」について(外務省ホームページPDF)
(なお、パブリックコメントをふまえ下記がこの資料の後に変更となっていますのでご注意下さい。)
改正外為法関連政省令・告⽰のパブリックコメントを踏まえた変更点について(同)


編集部より:この記事は、外務副大臣、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2020年5月10日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家  鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。

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鈴木 馨祐
衆議院議員(神奈川7区)、外務副大臣

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