コスト無視のコロナ対策が日本を滅ぼす(原発事故と同じ)

八幡 和郎

福島原発事故の最大の被害は、東北で起きたことでなく、全国の原発を止めることになったことだ。経済的損失も大きいが、節電(とくに冷暖房)、電力料金値上げ、GDP減、化石燃料消費の増加は多くの人命を奪ったはずだ。

緊急事態宣言で休業中の飲食店舗(東京・六本木ヒルズ、編集部撮影)

新型コロナ対策は、それをしなければ感染が拡がるだろうから単純に比較できないが、それにしても、コストを抑えて効果を上げる工夫がなさ過ぎだ。なにしろ「コストを考える」とかいうと袋叩きに遭う。

本物の戦争でもコスパを考えないで戦争したら負けるに決まってる。まして、さして経済的に困ってもいない公務員、年金生活者、生活保護者などまで「戦争のときくらい金よこせ」というのは卑しいとしかいうしかないし、バラマキは呆れた限りだ。

国に自粛に協力したら「有り難うといえ」とか大馬鹿として言い様がない。もっとも、これは、安倍首相も、緊急事態の延長を「申し訳ない」などというのも悪い。

医療でもPCR検査を国民全員にとかいう人もいるが、それは健康保険でするのだろうか。いま、健康保険での検査料は18,000円である。

国の借金は国民の負担にはならず限度はないとかいう、MMT論者だってそんなことをいってない経済学を国民の多くが信奉し、無駄遣いは家計であろうが、財政であろうがいいことなどなにもない。

外食産業は「延命」より「廃業・業種転換」にこそ助成を

有名寿司店のオーナーが、政府が出した「特別家賃支援給付金」が業種は絞らず、1カ月の売り上げが前年同期比で50%以上、または3カ月で30%以上減った事業者に対して、「一律 月額50万円の補助をする」ことに抗議している。

ただし、これは、たしかに腹が立つだろうが、助成をすればいいというものではない。なにしろ、どっちにしても、ポスト・コロナでは、寿司屋は感染症の時代に数が減るのは間違いないわけで、チェーン店を伸ばすか零細店を残すかということに政策的にどちらに味方するかの選択なのである。

タリーズ・コーヒー創業者の松田公太氏などは「地方と、お年寄りが多い昔ながらの小規模事業者に偏重しているようにさえ見えてしまいます。(自民党支持層?)」などと、東京のチェーン店に金をジャブジャブ寄越せとより率直に言っている。

職人が一人でやっているような店とチェーン店のどっちの気持ちも分かるが、両方とも満足させるのは無理であることははっきりしている。私は寿司店に代表されるように、縮小が不可避の業種では廃業・業種転換にこそ助成すべきだと思うが。

学生はアルバイトがなくて困窮しているのか

「新型コロナウイルスの感染拡大で、アルバイト先が休業。学費を払えず、生活に「困窮」する大学生が増えている」とかいった報道があるが、これも誇張されていると思う。学費が続かないというのは、親の失業とか収入激減の場合がほとんどだろう。こちらはたしかに深刻だ。

もちろん、それは新型コロナでなくても起こることだが、今回はそういう学生が増えるだろうから、救援の枠を増やすべきだ。ただし、新型コロナウイルス以外の理由で同様の事態が起きたのと援助の必要性については性格が違うものではあるまい。

外食産業での学生バイトは苦境だが…(まぽ/写真AC)

それに対して、普通は学生が正規雇用の人のような給料をもらっているわけでないし、講義もネットなどになり、サークル活動もできないので時間には余裕があるなかで、本当にアルバイトの場所がなくなってるというのだろうか。

コンビニが典型的だが、いまのところ人手不足は継続し、募集は続けられている。具体的にどう言う地域のどのような学生がどのように働く場所がなくて困窮状態というまでになっているか全体像を議論すべきだ。

これまで夜間に飲食店でアルバイトをして賄いつきが魅力的だと割がよかった学生が、同じアルバイトができなくなったということはあろう。優秀な学生や大学院生が塾が休みになって比較的高給のバイトができなくなっているというのもあるだろうが、家庭教師はそれほど減っていないと言われるし、やはりアルバイトをするところがないという状況ではあるまい。

いずれにしても、それを困窮とはいえまいし、都庁などで仕事があればいいが、人手不足継続の中で、無理にアルバイトを雇う必要が出ているのかは疑問だ。

一方、学生については私が疑問だと思っているのは、帰省禁止だ。東京などの感染が全国にひろまるのを防ぐというのはわかるが、長期にわたるのだから、自宅に帰って2週間、外出自粛するようにというので十分だったと思う。

ただし、帰省した学生が外出したりすることを控えるように社会的監視を呼びかければいい。東京の大学に行ったはずのどこかの息子や娘が出かけているというのはすぐに分かるのだから。