「屠殺場に我々は送られている」スペイン医療関係者が政府に激怒

2020年05月14日 06:00

スペインでは、5月3日までの時点で76人の医療スタッフが感染で死亡した。

自らの生命を危険に冒して、まだ十分に分かっていないコロナウイルスの感染患者の臨床にあたっている医師と看護師は市民から英雄と称されるようになった。しかし、同僚の死にあって自らの非力をつくづく感じている彼らである。医療スタッフは保健省に安全防具の提供を繰り返し繰り返し要求して来た。裁判所からも政府に法的にそれを要求した。

にもかかわらず、最初にこのウイルスと対峙してから2か月が経過したというのに安全防具の改善は依然見られない。それでも医療スタッフは治療看護に専念し続けている。

そのような緊迫した毎日を送っている彼らが同僚の死に直面するとなおさら、政府・保健省に強い憤りを感じるようになる。

彼らを代弁してスペイン看護協議会のフロレンティーノ・ペレス会長は政府のコロナウイルス危機への取り組みのまずさを指摘。「保健衛生のプロに欠陥のある防具をつけさせ、あるいはその防具もなしで彼らの生命を危険にさらしているのだ」と述べ、策が乏しく後手後手の対応しかできない政府を激しく批判した。(参照:elindependiente.com

看護師組合は政府のまずいマネジメントと対応の遅さを訴えるだけに留まらず、「裸で戦場に送られることがなければ同僚の死は避けることができた」と強調した。保健省が、新型コロナによってもたらされた不利な状況を打ち消そうとしている姿勢に、医療スタッフの間では強い不快感が募っているという。

5月11日の時点で医療スタッフの感染者は4万8320人という結果が出ている。それは医療スタッフ全体の21%に当たる数だという。(参照:esdiario.com

非常事態宣言が3月12日に発令された2日後の14日には医療スタッフの感染者は僅か455人であった。それからひと月と少々経過した今、医療スタッフの感染者は100倍以上に増えているのである。これには2つの要因しかない。

  • 安全防護具(マスク、防護服、ゴーグル又はフェイスシールド、キャップ、シューズなど)が十分に支給されていないということ。安全防護具の大半は中国からの輸入で、輸入するのに時間がかかる上にその多くが不良品だったということ。ひどい例は10分しか有効でないマスクを使用していたという笑い話にもならない事態も発生していた。
  • 感染しているか否かの診断ができる抗体検査を最初の段階から大半の医療スタッフが受けていなかったということ。PCR法による検査は時間がかかるということで、保健省は15分から20分で結果が判明する試薬テストを中国から輸入したが、そのどれもが不良品だった。またドイツから輸入しようとしたが、ドイツは自国で必要だとしてそれを拒否した。

政府は1日の感染者と死者が減少していることを強調しているが、看護師組合では現在も安全医療具が十分に行き渡っていないことを指摘している。

医療スタッフを対象にしたアンケート調査でも以下のような回答結果となっている。

  • 74% マスクが十分に行き渡っていない。
  • 55% 防護服など防具一式の不足。

10人の内7人が十分に防護具を身に着けず臨床にあたっていると回答している。

今もマスクFFP2またはFFP3を手にしていない医療スタッフもいるという。(参照:esdiario.com

だから彼らの中にはそれを皮肉って「屠殺場に我々は送られている」と言って保健省を批判する者もいる。(参照:libremercado.com

また、スペイン政府保健省と自治政府の保健省の間の連携も悪く、中国側ではスペインからは17の州がそれぞれ個別に発注して要求を出して来ると指摘したことがある。終わりのない戦いが今も続いている。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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