Winny栄光なき天才:金子勇の悲劇を繰り返さないために(下)①

2020年05月16日 06:00

提言3:捜査当局に対する提言

京都のサイバー警察

acworks/写真AC

2009年11月18日付 日経新聞大阪地方経済版は、「京都の『サイバー警察』活躍 先を読み、捜査はリアルに 法未整備、『裏技』を駆使」の見出しで、京都府警ハイテク犯罪対策室の活躍ぶりを紹介した。

「同対策室は日本最強のサイバー警察だ」との書き出しに続いて、Winny事件以外にも「全国初」となるサイバー犯罪の摘発が続く理由を分析。

「法制などが未整備なだけに、『あらゆる法令の駆使』がカギになる。昨年、コンピューターウィルスの作成者を逮捕した際に適用したのは著作権法違反と名誉毀損。日本にはウィルスの作成、放出を処罰する法律がないため(筆者注:その後,2011年7月から施行された刑法改正でウィルス作成罪が新設された)、感染すると画面に現れるアニメ画像と個人写真の無断使用を問う『裏技』だった。」と指摘した。

国家権力が裏技を使うのもいかがなものか。法の未整備は提言4で紹介するラマッキア事件判決後の米国のように立法で対応するのが、正攻法ではないか。刑法には罪刑法定主義という大原則がある。裏技が罪刑法定主義をかいくぐるようなことになっては本末転倒である。

技術開発への萎縮効果

問題はそれにとどまらない。刑事罰による技術開発への萎縮効果の問題もある。壇氏は「委縮的効果は抜群だった」と指摘し、次のような具体例をあげている。

「P2P関連予算がつかなくなった」

「技術者が著作権のグレーゾーンにふれる技術開発をしなくなった」

また、ソフトウェアが悪用されると、その開発者が罪を負わされるおそれが出てきたため、研究者の間に不安が広がり、開発したソフトウェアは海外で発表するよう指導する教授もいた。

著作権問題に詳しい岡村久道弁護士は、「Winny事件を契機に情報処理技術の発展と社会的利益について考えるワークショップ」(情報処理学会/情報ネットワーク法学会)において次のように疑問視している。

「著作権法という枠組みで、科学技術の将来が決められてしまっていいのか?いささか乱暴ではないか」

壇氏の指摘する萎縮効果を考えると、著作権法という枠組みで科学技術の将来を決めてしまうのは確かに乱暴な話である。

次回「提言4 :裁判所に対する提言」ではWinny 事件類似の米国のラマッキア事件判決を紹介する。米国の裁判所が、日本とは対照的に著作物の市場を変えるような技術イノベーションに対しては、立法府の明確なガイダンス(法改正)なしに、著作権の保護を拡張するのに慎重な姿勢を貫いてきた伝統が読み取れる判決である。

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国際大学GLOCOM客員教授、米国弁護士(ニューヨーク州・首都ワシントン)

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