コロナ恐慌対策でバブル再現も願う政治

2020年05月16日 06:00

かっちゃん/写真AC(編集部引用)

トランプ氏が珍しく正論

トランプ米大統領が珍しく正論を吐きました。「金持ちが相場について弱気な発言をしている時は、逆の方向に賭けているものだ。他の投資家の売りを誘い、下がったところで買いを入れる」。その通りです。著名投資家がわざわざ発言するは、相場を下げに誘導するためです。

「世界恐慌以来の不況」(IMF専務理事)に入るのに、暴落した相場を半値戻しにするだけでも十分なのに、不満なのです。トランプ氏の著名投資家の手法に対する批判は正解であっても、コロナ後を迎える前から、コロナ直前までのバブルを再現したいかのような経済政策は間違いです。

著名投資家が弱気相場(下落)の予想を明らかにすれば、相場を動かす影響力が強いため、大統領選挙対策で株価回復を狙うトランプ氏は嫌がる。トランプ氏は政権の成果を計る指標として、株価を重視しています。安倍首相も同じで、株価を経済の体温計に使い、バブルを好む政治家は多い。

日経によると、この金持ちは「ジョージ・ソロスの右腕として活躍した著名投資家で億万長者のドラッケンミラー氏」(5/15日)だそうです。「米経済がV字型の回復をするシナリオは空想。株式のリスク・リターンは私の人生で最悪」と吹いたから短気のトランプ氏も頭にきたのでしょう。

ロジャース氏(Skidmore/flickr)

同じく世界的投資家のジム・ロジャーズ氏も辛らつんなことをいっています。「政府、中央銀行がなりふり構わぬ対策を打っている。それが次のバブルを生む可能性はある。大きな上げ相場がくるかもしれない。今回のコロナ騒動でさらなる量的緩和をし、大量のおカネをバラまこうとしている」と。

「人工的なバブルは再暴落する。50、60、70%の値下がりが起きる。コロナによる実体経済の破綻で、金融システムの不安が必ず引き起こされる。中央銀行が無限に債務を増加(国債、株買いでマネー供給)させることはできない。いつの日か終わりがくる。次の危機は最悪の危機となる」とも。

そこまで言うことの本音は、「政権、中央銀行が最悪の危機のお膳立てをしてくれている」でしょう。大暴落で底を打つのを見極め、巨額の買いに転じ、50年に1回あるかないかの大勝負にでたい。大底で買いあさり、バブルの頂点で売れば、巨万の富が得られる。

それまで持ちこたえられる者はさらに富み、失業、倒産で苦しむ者はさらに困窮化する。企業間格差、国家間格差もさらに広がり、世界は不安定化しまう。「世界の不安定化は望むところ、その方が商機は広がる」とまで考えていると思います。

コロナによる新型肺炎が世界中に拡散する直前に、バブルはピークを迎えていました。というのか、「いつか破綻がくる。いつ破綻してもおかしくない」と警鐘を鳴らされていたバブルがコロナウイルスが引き金になって崩壊したと考えるべきです。それにコロナ不況が上乗せになるから谷が深まる。

売り逃げマネーが狙う次の商機

私が懸念するのは、バブル崩壊で売り逃げたマネーは、次の商機を狙ってどこかで待機していることです。儲けた投資家、損した投資家を差し引きすれば、バブルが崩壊したといっても、マネーの総量は減っても消えたわけでもない。利益を生まない企業救済、失業者救済などに向かわない。バブルと共生するマネーの世界と、実体経済が必要とするマネーの世界が分断されている。

だから政府や中央銀行が巨額の財政出動、金融緩和に乗り出さざるを得ない。当面は企業救済、雇用対策などに使われても、「コロナ後」は低成長の時代が続くでしょうから、中長期でみると、過剰マネーが増幅され、次のバブルのチャンスを伺って待機する。

Gage Skidmore/flickr、官邸サイトより:編集部

投資銀行家の神谷秀樹氏(米国在住)は「米日などの中央銀行はこぞって、バブル崩壊からの回復は次のバブルの形成でという誤った金融政策を採用してきた」と月刊誌で指摘しています。「政策金利をとことん下げ、市場に資金があり余っているのに、量的緩和でさらにマネーを積み上げた」と。

トランプ氏は露骨でした。アベノミクスもデフレ脱却を途中からあきらめ、異次元金融緩和の目的を株高と円安に切り替えました。口ではそうはいっていないだけです。実体はそうとしいいようがありません。コロナのせいにして、アベノミクスの失敗も検証する動機は失せますね。

その結果「実体経済の低迷と株高・バブルの併存」という病が深まり、マネー経済に依拠する資本主義病を悪化することになりかねません。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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