花粉症の発生源対策、視察報告

2020年05月17日 06:00

前回前々回のブログでは、国の花粉症対策に欠落していた曝露対策の重要性、省庁縦割りの壁を超えるため環境省が主導して総合的な対策を推進すべきであること、そして、そられに向けた私の取り組みについてお伝えました。しかし、花粉症対策はそれだけで十分ということにはなりません。「花粉の発生源をいかに抑えるか」という視点も不可欠です。もっとも、花粉の発生源対策は、50年以上の時間がかかるため決して簡単ではありません。粘り強く継続して取り組むことが必要です。

写真)視察の様子

私は前回の参議院議員の任期(2013年~)では農林水産委員会に所属しており、花粉症の発生源対策にも取り組んできました。「花粉症対策苗(少花粉スギや無花粉スギ)の促進を加速化すべきだ」と林芳正農水大臣に質疑をしたことがきっかけで、当時10%にも満たなかった低花粉スギの割合が、現在では50%まで達したという実績もあります。

今回は、先日、改めて、花粉の発生源対策の最新研究状況を視察してきましたので、その報告をしたいと思います。

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3月6日、最初に訪問した場所は、茨城県日立市にある(国研)森林総合研究所林木育種センターです。この研究所には昨年、即位されたばかりの天皇皇后両陛下もお見えになっていますが、国会議員の視察はこれまで私だけだそうです。

ここでは、花粉を全く作らない「無花粉スギ品種」の開発を行っています。無花粉スギは、現在7品種開発されて実際に全国で採用されています。

その他にも、少花粉スギは147品種、低花粉スギ(花粉飛散量が2割程度)は16品種と前回の視察時と比較し、品種数が格段に増えていました。品種数が増加することで都道府県がニーズに合わせて選択できるようになったり、供給が安定するといったメリットがあります。

そして、今回の視察で驚いたことは、これまでの品種改良に加え、遺伝子マーカーを使用した新たな方法で交配世代を2世代から1世代に短縮し、無花粉スギの判定時間が数年から数日に短縮されたということです。前回の視察から5年、無花粉スギの品種開発は大幅な効率化が可能になっていました。

写真)育種センターのスギエリアのごく一部(日本中の樹木について研究している)

写真)少花粉スギ(見た目は同じだが振っても花粉は飛ばない)

写真)拡大した無花粉スギ(雄花の中にも花粉がない)

写真)一般的なスギ( 無花粉スギ品種の雄花の中には、花粉(写真の丸い粒)が全く見られない。)

また、林業の現場では苗木の成長が早ければ早いほど好まれます。初期成長が早ければ下刈り期間を短縮でき、育林コストを削減できるからです。各県で花粉症対策苗の採用割合に差がある理由について、林業団体にヒアリングをしたところ、「林業従事者からは『花粉症対策苗は成長が遅いのではないか。成長後になにか欠陥があるのではないか』という不安を持つ方もまだまだ多い」との話がありました。この話を聞いて、花粉症対策苗の普及にとって、苗木が早く健全に成長することが非常に重要であることを感じました。

育種センターでもそのような現場の課題を把握しており、より成長の早い無花粉スギを開発するため『エリートツリー』という、より成長に優れた系統との交配を行う研究が進められていました。下の写真は、どちらも同じ8歳で左側は通常のスギ、右側はエリートツリーです。エリートツリーの成長の早さは一目瞭然です。このような研究が加速することで、花粉症対策苗へのネガティブな意見が払拭されていくでしょう。今後の実用化及び普及に期待したいと思います。

写真)通常のスギ

写真)エリートツリー

次は、育種センターから森林総合研究所の森林微生物研究が行われている施設に移動しました。ここでは、自然界で発見された菌類をスギの雄花に付着させることで、雄花を枯死させて花粉を飛散させない研究が行われています。このような菌類を使った花粉飛散防止の研究は世界でも日本だけだそうです。

写真)雄花が枯死して黒くなっているスギ

前回訪問した時は、単木レベルでの地上散布技術の開発をしていましたが、現在はヘリコプターによる空中散布法の開発や防止剤の散布による環境への影響評価が行われていました。しかし、一言で散布といっても単に散布剤を撒いただけでは雄花から滑り落ちてしまうので、水滴状で防止剤を落下させるためのノズルの改良や付着をよくするための展着剤の検討などが現在の課題だそうです。

写真)森林総合研究所での会議の様子

写真)黒カビの散布の様子(前回2015年の視察時)

もともと自然界で発見された黒カビなので、これまでの試験では、森林生態系への影響やスギの成長への影響は確認できていないとのこと。令和4年から生物農薬として登録が開始できるよう、更なる安全性の試験に取り組んでいくという報告を受けました。「農薬登録は順調に進んでも2~3年、運用までには最低でも7~8年はかかる」とのことですが、私も実用化に向けた後押しをしていきたいと思います。

最後に、(国研)農研機構の生物機能利用研究部門を訪れました。ここでは、私がかねてから注目している花粉症緩和米の研究が行われています。花粉症緩和米とは、スギ花粉症のアレルゲンをアナフィラキシーショックを起こさないように改変してコメの中で作らせて、それを食べることで花粉症の治療や予防をしようとするものです。うるし職人がうるしをなめ続けてかぶれないのと同じように、花粉症緩和米を毎日少量ずつ食べると、スギ花粉アレルゲンを外敵ではなく食物と認識するため、アレルギー反応を起こさなくなる、という仕組みです。現在、実用化を加速化するため、公募を実施して外部の研究機関に研究試料としてスギ花粉米を提供し、ヒトでの安全性・有効性を実証中だそうです。

出典)(国研)農研機構

この花粉症緩和米は、花粉症に悩む方や予防が必要な子供など多くの方が気軽に食べられるように、食品として実用化されるべきだと思いますが、厚労省からは「食品ではなく薬として認可するしかない」と言われ立ち行かないという現状だということも聞きました。この辺りは大変センシティブですが、政治の力でこそ解決できる問題だと思いますので、党内でも引き続き議論をしていきたいと思います。

写真)農研機構での会議の様子


編集部より:この記事は参議院議員、山田太郎氏(自由民主党、全国比例)の公式ブログ 2020年5月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は参議院議員 山田太郎オフィシャルサイトをご覧ください。

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山田 太郎
参議院議員(自民党、全国比例)

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