「新型コロナで困窮している学生」報道に疑念

2020年05月18日 06:00

AC201912/写真AC

マスコミに登場する、「新型コロナで困窮している学生」の記事を読むと、とくに裏読みなどしなくても困窮なんて嘘だと分かるものばかりだ。アルバイトがなくなっただけで本当に困窮している学生などそんなにいないはずだ。もちろん、親が仕事を失ったとかいうケースは別である。

「東洋経済」の記事ではこう書かれている。

東京都内の私立大学3年生の酒井勇太さん(20歳、仮名)の言葉は切実だ。4月中旬に中野区のアパートの荷物をまとめ、滋賀県の実家に戻ってきた。東京を引き払うまでの月収入は、共働きの両親からの仕送り8万円とアルバイト代の約8万円。この中から家賃や光熱費、食費などを賄っていた。金銭的には比較的余裕があった。

状況は、コロナの感染拡大で一変した。

まず、アルバイト。大学2年生の時から通学先の大学で書類整理などをこなしていたが、感染拡大で大学構内は立ち入り禁止になり、「仕事がなくなった」と言われてしまう。契約社員として働いていた実家の母親の仕事も2日に1回となった。

さらに弟の大学進学もあった。実家の滋賀県から隣の京都府への通学とはいえ、私大の学費負担は軽くない。両親から「今後の仕送りは難しい」と言われたことで、2年間暮らしたアパートを引き払うことにしたという。

(中略)本年度前期の授業料は、両親に頼ったものの、後期の授業料は「親にはとても頼めない」と言う。

出典:大学生6割「お金困る」コロナ禍の切実な懐事情(東洋経済オンライン)

つまり、コロナで変わったのは、これまで大学の事務の手伝いのアルバイトしていたのが、さしあたってなくなったことだ。月8万円だったというが、コンビニなどでのアルバイトとより単価がそれほど違うはずもなくコンビニでもヤマトでもバイトは募集している。コンビニで週4日4時間半くらいバイトしたら同額をもらえるし、深夜なら3時間半でいいはずだ。大学のバイトも間もなく再開できるだろう。住まいも引っ越しすれば敷金・礼金・引っ越し代で30万円というのは、学生としてはかなり贅沢な暮らしだ。

母親の仕事もとりあえず半分になったといっても、クビになったわけでないから、まもなく再開される可能性が強い。それに、公的助成も受けられるはずだ。

弟の進学はコロナとなんの関係もない。つまり、この学生が学業が続けられないとすれば、この両親が子供2人を1人は東京の、もう1人を京都の、ともに私学に奨学金も申請せずに無理なく、行かせるほどの財力がなかったので、ちょっとした環境変化で苦しくなっているだけだ。

第一、滋賀県に住んで、こんな贅沢な学生生活を子供たちに送らせられるのは、そもそも、かなり裕福な家庭だけだ。地方ではかなり恵まれた職業である地方公務員などであってもかなり難しいのではないか。

この学生は、普通にえり好みせずにバイトして、奨学金を申請してください、アパートも少しランク落としたらどうかというだけで、まったく困窮学生でない。こんな馬鹿な記事を書いて記者は恥ずかしくないのかと思う。私なら、「困窮学生なんかいない!甘ったれるな大学生」とでもいう記事にしたい。

この記事には、「奨学金だけでは足りないため、バイトをしたくてもコロナ感染を考えると十分にはできません」という「気の毒な」学生も紹介されているが、たしかにこんな学生は社会へ出て生きて行けそうもないからその意味では気の毒だ。

飲食業が休業になってもコンビニは嫌という学生

コロナ禍で飲食店のアルバイトは厳しいが…(まぽ/写真AC)

もうひとつ、 学生が新型コロナの影響でアルバイトがなくなり困窮しているとか学業が続けられないとかいうのが具体的にどんなケースなのが情報を集めているが、ほとんどが飲食業でバイトをしていたが、それがなくなりコンビニとか配達だとかならあるが、それは嫌だとかペイが悪いとかいう話のようだ。

この記事を見てもそうだ。しかし、飲食業とコンビニや配達との給与差は普通はそんな大きいものでない。コンビニでも飲食業でも深夜は高いというだけではないか?それほどの給与差があるのはどんなケースなのだろうか?教えて欲しい。

長崎新聞には、こんなケースが紹介されている。

長崎市内のスーパーの精肉コーナー。県内の男子大学院生(22)はパックを手に取り、買い物かごに入れた。フロアを一周し、「今は我慢」。肉のパックを戻し、代わりに一袋20円のモヤシを購入した。ここ最近、肉や魚は満足に食べていない。モヤシやタマネギなど安価な野菜でかさ増しをし、食いつないでいる。

新型コロナの影響でアルバイトがなくなり、4月から収入はゼロになった。この先3カ月の家賃はすでに支払いを待ってもらうようお願いした。「こういう状況だから」。嫌な顔ひとつせず受け入れてくれた大家の温情に支えられている。

母子家庭で育ち、高校3年の時、母に金銭面で負担をかけずに大学に進学すると決意。だから、今の窮状も母には相談していない。貯金はもうすぐ底をつく。政府から一律給付される10万円も家賃で消える。

「この状況が続くと耐えられなくなる」

出典:退学したくない…大学生の悲痛な声 アルバイト失い学業も生活も困窮(長崎新聞)

どうしてこの学生はほかのアルバイト探さずに3か月ぼけっとしているのだろうか?母子家庭で育ったが、お母さんには相談してないという。それなら、そのお母さんには「えり好みせず、自分でアルバイトを探せ」と叱っていただきたい。飲食業など接客系のアルバイトは楽しいという学生が多い。バイト料そのものはコンビニと違いはないが、クリエイティブだし、人との出会いがあるし、賄いメシも豪華なものが食べられるとかいうことらしい。

しかし、世の中で仕事が楽しいと感じている人の割合はそんなに多くないのであって、生計を支えるためにやっているのであるから、そのくらい我慢すべきだ。

また、飲食業のアルバイトがなくなっているのかといえば、街を歩けば、けっこう募集しているところがある。しかし、いまどきの学生は、それなりのアルバイト斡旋企業が関与しているようなところでネットで応募できないと嫌だという説明もある。

親の収入源で学費がでなくなったというのは、別にコロナでなくたって多いし、そういう学生への助成制度もある。コロナ不況だから利用者が増えるだろうから拡充は絶対に必要だが、従来と違う枠組みが必要なのだろうか?

私立一貫制の学校などは、親が裕福な子供のためのものであって、親の収入が減ったので止めて公立にかわる子は昔からいたし、それがそんな悲劇だとは思わない。最初の何年か、贅沢させてもらったことを親に感謝していい思い出にすればいいことだ。

最初のケースのように、地方から東京の私立大学へ入って寮とかに入るわけでなく奨学金ももらわずにアパート暮らししていたが、途中で続けられなくなったというのも、公的に助けなければならない話なのか私は疑問に思う。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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