バロンズ:経済活動再開の陰で、米中間の対立再燃

2020年05月18日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーは新型コロナウイルス向けのワクチン及び治療薬の開発動向に焦点を当てる。一部の州で経済活動を再開させたとしても、何千万の職が失われ景気後退に陥ること必至だ。ワクチンの開発なしに、正常化はあり得ないだろう。ドイツや韓国ではウイルス感染抑制策に成功したように見えるが、再び感染が広がりつつある。ウイルスがエレベーターのボタンやドアノブ、地下鉄の手すりなどで待ち構えていると考えれば、米国で経済が完全に正常化するのは極めて困難と言えよう。一方で、世界中で100件以上のプログラムが進行しており、進展に合わせ株価が上下している。例えば4月のある日、S&P500種株価指数が2.7%高を遂げ、その裏でギリアド・サイエンシズが抗ウイルス薬「レムデシビル」が臨床試験で効果を発揮したと伝えられた。今後も、こうしたニュースが株価を動かすに違いない。ただ、勝者と敗者を見極めるには時期尚早だ。注目の銘柄を含め、詳細は本誌をご参照下さい。

(カバー写真:CDC Global/Flickr)

(カバー写真:CDC Global/Flickr)

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米中対立激化に注目する。抄訳は、以下の通り。

新型コロナウイルスの危機から脱却しつつある今、米中対立が再燃―We Were Just Starting to Emerge From the Covid-19 Crisis. Now China Tensions Are Flaring Up Again.

米経済をめぐるバッドニュースがこれ以上悪化しないというのは、グッドニュースと言えよう。

4月に全米の大部分で外出禁止措置を講じられ、米4月小売売上高は過去最大の落ち込みを記録し、米4月消費者物価指数も大幅に下振れし、米4月鉱工業生産も散々な結果となった。全ては、米4月雇用統計の結果と整合性をもつ。

ただ、経済活動の再開は遅々としたもので、ブリークリー・アドバイザリー・グループのピーター・ブックバール最高投資責任者(CIO)いわく、悪材料が存在する。例えば、ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値は現況指数を手掛かりに3ヵ月ぶりに小幅改善したが、期待指数は悪した。また、インフレ期待が2014年以来の高水準に。(タイソン・フーズが警告したように)食材不足によりスーパーマーケットでの支出増に悩まされれば、見通しが明るくなるはずがない

その他の指標を振り返ると、米5月NY連銀製造業景況指数は市場予想ほど悪化しなかった。MBA住宅ローン申請件数指数はコロナ以前の水準以下ながら、4週連続で上昇した。

米株相場は、3月23日の安値から約30%も上昇した。米経済に反し好調な理由は、米連邦準備制度理事会(FRB)が決定した一連の緊急資金供給措置と、それに伴う回復期待が挙げられる。ただ足元では力強さを失い、S&P500は過去4週間で3回下落し5月11日週は2.6%安で引けた。

チャート:S&P500、半値戻し達成後は伸び悩み

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

米2年債利回りに視点を移すと、FF先物と同じくマイナス金利を織り込み始めている。パウエルFRB議長は13日のオンライン講演で引き続き否定したが、市場は「現時点で」マイナス金利を支持しないという言葉に反応したようだ。

中央銀行のモットーは「決してないとは言わない(never say never)」ことにある。とはいうものの、日銀や欧州中央銀行(ECB)によるマイナス金利は銀行に利益をもたらしていない。米国でマイナス金利を導入すれば、4兆ドルの資産を有するマネーマーケットファンドを絶望させるだけでなく、政府機関や銀行、企業にも影響が及ぶだろう。

マイナス金利導入以外に、新たな危が頭をもたげ機つつある。米中間で対立が再燃しつつあり、米商務省は15日にファーウェイへの禁輸措置を強化した。中国共産党系メディア環球時報のHu Xijin編集長は、アップルやシスコシステムズ、ボーイングを標的に報復措置を取ると社説で警告した。

さらに、トランプ政権は米連邦退職年金基金(TSP)による中国企業への投資を無期限延期を求め、TSPを運用する米連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)はこれを受け入れた。そもそも、こうした要請はルビオ上院議員(共、フロリダ州)を始めシャヒーン上院議員(民、ニューハンプシャー州)の超党派が連名によるものだ。米大統領選を控え、共和党と民主党が反中国で一枚岩も同然で、AGFインベストメンツのグレッグ・バリエール米国首席ストラテジストは「米大統領選が迫り、共和党も民主党もどちらが反中国で鋭く切り込めるか競争と化している」と分析する。

米中間の貿易戦争激化は、絶望的をもたらす。映画でみたような展開だが、その結末は誰もが忌み嫌うバッドエンディングだったことは言うまでもない。

――米中間の対立再開が視野に入り、米株の戻りは以前に比べ鈍いペースとなってきました。S&P500が半値戻しを達成した事実も、テクニカル的に上値が重くなった背景とも考えられます。そもそも、世界恐慌時も戻りを試した場面がみられました。1929年8月に高値をつけ、同年11月に10ポイント以上も下落した後、1930年4月にほぼ半値戻しを達成。しかし、真の悲劇はその後に訪れ1932年6月に安値を更新するに至ります。今回も同じ轍を踏むのか、米経済の回復に社会的距離などの足枷が掛かるなかでは、楽観は禁物です。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年5月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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