新型コロナ:妊娠期のストレスを緩和するために

平時であっても妊娠中・出産後の女性はストレスを受けやすいものですが、新型感染症に伴う生活急変は妊娠期の女性、また、その家族の心の安定に大きな影響を与えています。妊娠期の心の問題に東京医科歯科大学の藤原武男教授にインタビューしました。

写真AC:編集部

Q1:新型感染症の罹患を心配する女性や家族が心がけることはありますか。

何と言っても感染しないよう最大の努力をすることです。手洗い、マスク、3密を避ける、そしてそれを同居家族も徹することでしょう。

新型コロナウイルスに感染した妊婦の出産例はまだあまり多くなく、どのような影響があるのかわかっていませんが、わからないからこそ不要なリスクを負うべきではないと思います。今後、新型コロナウイルスに感染した場合の薬が出てくると思いますが、妊娠中は服用できないと思われますので、その意味でもとにかく感染しないようにすべきです。

もし感染が不安であれば、抗体検査などで過去の感染状況を可視化することも検討して見てはいかがでしょうか。

Q2:生後七日のお七夜、お宮参り、初節句と赤ちゃんをお祝いする行事はたくさんあります。今の状況下で、このような行事はどうすべきでしょうか。

基本的には、きちんと手洗いとマスクをしていれば問題ないと考えます。ただ、この「きちんと」という部分が曲者で、なかなかできない場合が多いです。ましてや不特定多数の場所ではできていない方が多いと考えるべきだと思います。

また、お祝いの仕方、その必要性など、じっくり話し合ってはいかがでしょうか。そのように話し合うことで、家族や親族の絆が深まる面もあると思います。

Q3:夜泣きをする赤ちゃんが泣き止むように外気に当てるという方法があります。1か月を過ぎれば短い外出ができました。外出自粛でそれもかなわない方々にアドバイスをください。

外出自粛というのは、“人混みに行かないように”言っているのであって、外出自体が禁止されているわけではないと思います。ましてや散歩などは密集を避ければ問題ないので、あまり神経質になりすぎない方がいいと思います。それでも心配な方は、ベランダや家の前などで外気にあたるのでもいいでしょう。

Q4:在宅勤務中に泣き止まないなど、家族にストレスを与える赤ちゃんにどう対応したらよいですか。どのような対応をしてはいけませんか。

在宅勤務中に泣き止まない赤ちゃんがいる場合は、耳栓などをして聞こえないようにするといいでしょう。もちろんその場合、別に赤ちゃんを見ている人がいるという前提ですが……。

また、在宅勤務で赤ちゃんや子どもに仕事を邪魔されたなどのストレスで激しく揺さぶったり、暴力を振るったりしてはいけません。それはコロナより長期的で深刻な傷を子どもに与える可能性があります。身体的にも精神的にも、です。コロナであまり話題になりませんでしたが、この4月から体罰が禁止になりました。その意味からも、暴力で“しつけ”ようとしてはいけないのです。

Q5:藤原さんは保健所の母子保健活動に協力されています。新型感染症の蔓延以来、母子保健活動に変化は起きていますか。

普段、母子保健の現場で活動されている方もコロナの接触者追跡業務に疲れていたり、普段であれば家庭訪問でリスクの高い妊産婦の支援をするべきところができなかったりしています。また、この4月から新しく配属になった方への研修もできずにいるようです。そのような場合に、電子媒体での母子保健指導が有効である可能性があります。

東京医科歯科大学ではJSTの研究事業として、足立区と共同で電子媒体でハイリスク妊婦を支援するシステム「そだつWA」を開発していますが、このような電子媒体での支援システムが保健行政でも必要になってくる時代がきているかもしれません。