橋下徹氏を検事総長にして前近代的司法の改革を

2020年05月21日 06:01

政府・与党は、検察官の定年延長を含む国家公務員法改正案の成立を見送った。法案は継続審議になるようだ。「検察庁法改正案断念」と報じているが、これは不正確だ。

国家公務員法改正案が継続審議となり、そのあおりで、関連する「束ね法案」の1つである検察庁法の改正も先送りとなっただけだ。検察庁法改正の内容には問題がないのに、検察独立王国を死守したい一派と、難攻不落の安倍政権打倒につなげたい勢力が印象操作をしてややこしくなっている。

左から黒川弘務検事長、稲田伸夫検事総長、林真琴検事長(検察庁サイトより)

この問題は、黒川弘務東京高検検事長を稲田伸夫検事総長の後任とすることを念頭に黒川氏が定年を迎える前の勇退を大臣から稲田氏に求めたが、稲田氏が国連犯罪防止刑事司法会議(4月に京都で開催予定だったが新型コロナで延期)まで現役でいたいとか、カルロス・ゴーン事件の責任を取ったようにみえるとか、林真琴・名古屋高検検事長検事長を後任にしたいとかで勇退を渋ったことに発端があるようだ。

そこで法務省幹部(検事出身)たちが、さまざまな方法を検討し、黒川氏の定年を延長するという案を推したらしい。

検事総長に限らず、人事院総裁とか公正取引委員会委員長とかについては、人事は内閣が決めるが、職務には原則干渉しないことで民主主義の原則と職務の中立性のバランスが取られている。

だから、検事総長が勇退勧告を拒否したり、後任が誰かに固執することはおかしいのである。ただ、ほかにも黒川氏を後任にしたいならいくつも処理案はあるのに、黒川氏の定年延長という個人を特別扱いにする方法を検事たちが選んだのはセンスとして良くなかった。森雅子法相も安直だが、検事たちが自信をもっての意見だったので乗ってしまったということか。

そして、検察官の定年延長はこの問題とまったく無関係なのだが、かねてよりの懸案をついでに片付けておこうと余計なことをしたので、野党や林氏と親しいと言われる朝日新聞などに印象操作のチャンスを与えることになった。

法律が成立しなくて困るのは検事たちなのでどうでもいいのだが、法律改正が阻止されては、司法に対する民主主義的コントロールが否定される由々しき事態となる。

日本の検察はカルロス・ゴーン事件で世界中から批判されているように自白偏重の人質司法で、検察に起訴されたらほとんど無罪になるチャンスはない。しかも、長期拘留されてその間は仕事ができないので無罪になっても失ったものは取り返せない。そういう封建時代的な司法を改革する芽を封じてしまっては、与党だけでなく野党やジャーナリズムも本当にいいのか考えてもらいたいものだ。

「黒川弘務・東京高検検事長の定年延長」と、今回の法案は本来関係がない。安倍晋三内閣が無理をして成立させる動機もない。

困るのは、元検事総長らが反対の意見書を出すなどして、「検察人事の強い独立性」を要求したので、その主張が通ったと誤解されることだ。

日本の司法制度では、検察や警察が恣意的に、それまで罪に問われたことのないような容疑で著名人を逮捕し、長期間拘留して精神的に追いつめて自白を引き出してきた。起訴後もなかなか保釈しないため、有罪判決も出ていないのに、企業家や政治家の第一線から葬り去られた。しかも、裁判で無罪になることは稀だ。

これまでも、田中角栄元首相などの政治家や、佐藤優氏のような官僚、リクルートの創業者の江副浩正氏、投資家の村上世彰氏、ホリエモンこと堀江貴文氏、ウィニー開発者の金子勇氏などが検察の標的にされ、「改革者が登場する障害」にすらなってきた。また、河井案里氏の選挙違反事件の前例を無視した強引な展開について、稲田検事総長が「あっちがそうくるなら、こっちも考えがある」と漏らしているとかいう噂があるが本当でないと信じたいところだ。

しかし、カルロス・ゴーン被告の逮捕で国際的な注目を集め、世界各国の首脳までが「日本の司法制度の反近代性」を批判し、かえって「司法改革」の機運を高めた。

海外では容疑に問われても身柄の拘束は少ないし、取り調べに弁護士が同席でき、有罪判決が出るまで職にもとどまれる。

欧州中央銀行(ECB)のクリスティーヌ・ラガルド総裁など、刑事被告人のまま国際通貨基金(IMF)専務理事となり、有罪判決を受けたが「微罪だ」として地位にとどまり、さらに現在のポストに信任された。

世界の視線が厳しいときに、これまでよりも「検察人事の独立性を強める」など、おかしな主張だ。

そもそも、内閣は検事総長を自由に任命できる法制度になっている。実は、民間登用も可能なのだ。

民主党政権では、官房長官を務めた仙谷由人氏が「検事総長の民間登用」を検討していたとされる。検察庁法をみると、弁護士経験者なら問題なさそうである。

もちろん、明らかに「政権ベッタリ」の人物では国民の支持は得られないが、与野党で納得できる人物を検事総長にして、「司法改革」に取り組んではどうか。

では、誰か適任者はいるのか。

ダントツで推薦したいのは元大阪府知事・大阪市長である橋下徹氏だ。弁護士であり、「大阪府市改革」に成果を上げてきた実績もある。何しろ、突破力抜群だ。これほど、橋下氏にぴったりの仕事もないと思う。

AmebaTVの番組で検察庁改正問題を語る橋下氏

そのあと、なんなら法相に転じてもいいのではないか。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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