政府は、公衆トイレとゴミ箱に補助金を支払え

井上 晃宏

Imprave/写真AC

日本の街には公衆トイレとゴミ箱が少ない。
このことが、街歩きにおいてはストレスになっている。

誰もが無料で使える公衆トイレとゴミ箱は公共財である。
利用を受益者負担にすることができない(非排除性)。しかし、その効用には外部性がある。

公衆トイレとゴミ箱がなかったら、街は排泄物と放置ゴミで溢れてしまい、清掃を行わねばならず、トイレやゴミ箱の設置維持よりも、ずっと多くの費用がかかる。他の公共財と同様に、公衆トイレとゴミ箱の供給に関して、政府が関与しないと、供給量は不十分となる。

公衆トイレとゴミ箱は、もともと不足していたが、最近1ヶ月くらいは、さらに不足が深刻化している。
コンビニや商業施設が、「新型コロナ対策」と称して、公衆トイレとゴミ箱を閉鎖しているからである。

私は公衆トイレやゴミ箱の閉鎖が、「新型コロナ対策」なのかどうか疑っている。
トイレはよく換気されているし、便座から感染するはずもなく、手洗いもするのが普通である。ゴミ箱にどんな汚物が突っ込まれても、焼却されてしまうのだから、感染拡大にはならない。

公衆トイレとゴミ箱が急速に閉鎖された理由は、おそらく、新型コロナ対策ではない。経費削減である。
もともと、施設管理者たちは、従業員用以外のトイレもゴミ箱も、設置したくなかったのだ。公衆トイレとゴミ箱には、若干の集客効果はあるだろうが、維持管理費用の方が大きいのだろう。

公共財の供給不足が発生した場合、政府は金を出して、不足分を補わねばならない。

たとえば、公衆トイレには月1万円、ゴミ箱には月1000円程度の補助金を、政府が管理者に支払ってはいかがだろうか。
公衆トイレとゴミ箱の設置密度は増加し、下半身の欲求を我慢しながらトイレを探しまわったり、ゴミを持って右往左往したりする必要はなくなり、街や公共スペースは劇的に使いやすくなるだろう。

井上 晃宏(医師)