コロナ不況から命を守る100兆円の追加経済対策

2020年05月23日 11:30

黒川氏の定年延長問題と検察庁法改正問題でも安倍政権は迷走しているが、もっと迷走しているのが経済政策だ。

結論からいうと、このままでは戦後最大の「コロナ不況」に陥り、我が国は国際的な地位を著しく低下させるだろう。二等国への道、まっしぐらである。

緊急事態宣言で休業中のパン屋(編集部撮影)

司令塔不在の日本経済

まず、経済の司令塔がいない。

西村大臣は経済再生担当大臣であるが、特措法担当大臣(緊急時事態宣言担当大臣)でもある。日本経済を再生させる役割と、経済を麻痺させ感染症対策に万全を期す役割、言い換えればアクセルとブレーキが、同じ人格の中で矛盾を生じている。本来、同じ人が担当するべきではなかった。

1次補正予算に盛り込まれた10万円一律給付の決定過程も迷走したが、一番問題なのは、未だに多くの国民のもとに給付金が届いていないことだ。アメリカでも一人当たり1200ドル(約13万円)の給付を決定したが、「申請することもなく」口座に振り込まれている。米内国歳入庁が納税記録を見て支払手続きをしているからだ。スピードにおいて圧倒的な差がある。10万円の給付金だけなく、持続化補助金も雇用調整助成金も何もかも遅い。

そして、複雑で厳しい要件を設けているので、明らかに支援を必要としている事業者が門前払いを受けたりしている。持続化給付金の要件については、5月11日の予算委員会で総理に見直しを直訴したので、「雑所得」や「給与所得」で税務申告していたフリーランスなども認められるようになる見込みだが、それにしてもケチケチし過ぎているし、手続きが複雑でグチャグチャしているし、その結果、スピードが遅くモタモタしている。

最悪が、家賃支払い支援だ。野党が連休前の4月28日に「家賃支払い支援法案」を出してもう1ヶ月が経とうとしているのに、「法律改正より早い」とされる自民党案は未だに実現していない。その内容も融資を受けることが前提で、しかも50万円の上限付きだ。飲食店をはじめとしたテナントの多くが悲鳴をあげている。自民党は店をつぶす気なのか。

4月28日に国会提出した家賃支払い猶予法案

遅くて見通しの甘い自民党の2次補正提言

そして、自民党の岸田政調会長が安倍総理に対して第2次補正予算案の提言を昨日(5月21日)手渡したが、規模、内容の両方において全く不十分だ。雇用調整助成金の上限金額を引き上げたり、地方創生臨時交付金の額を引き上げたり、学生支援のための予算を積み増したり、いずれもかなり前から野党が言ってきたものだ。

本来なら1次補正でやるべき項目の修正・改善点が盛り込まれているだけであり、まさに「1次補正を補正する」程度の提言と言わざるを得ない。総額も10兆円前後にしかならないと思われる。1次補正とあわせても30兆円規模だ。全く足りない。しかも、30兆円程度の経済対策なら、国民民主党は3月18日から主張している。正直、2ヶ月遅い。

3月18日に記者会見して発表した国民民主党の経済対策

さらに言えば、今回自民党の提言では、2020年度の実質GDPのマイナスを30兆円程度と見積もっているが、今回のコロナによる日本経済へのインパクトを甘く見ている。2020年後半には経済成長が元の水準に戻ると想定しているが楽観的過ぎる。今、経済の根っこが折れつつあり、一度折れてしまうと再び花は咲かない。

思い出して欲しいのは、消費税増税の影響で、コロナの影響を受ける前(2019年10-12月期)の時点ですでに実質GDP成長率が年率換算マイナス7.1%に落ち込んでおり、そこにコロナショックが加わったのである。2020年1-3月期はマイナス3.4%で、プラス成長を見込んでいた2019年度もマイナス成長が確定した。

そして、この4-6月期はもっとひどいことになる。民間のエコノミストの予測平均だと、年率換算で21%を超えるマイナスとなっており、115兆円規模の有効需要が吹き飛ぶことになる。安倍政権が発足してから約7年間で40兆円強GDPは増えた。うち約30兆円は2015年12月のGDP算定方法見直しによる「かさ上げ」分だが、かさ上げ分を含めてもそれを吹き飛ばして余りあるマイナスのインパクトが日本経済を襲っているのだ。

所得を補わない限り経済回復はない

一度失われた需要は二度と戻ってこない。そしてその額はGDPの20%、100兆円を超える可能性がある。そして、需要が失われたということは国民の所得も失われている。この失われた所得もまた戻ってこないのである。

だからこそ、今、国が一番にやらなくてはならないのは、失われた国民の所得の補償である。V字回復を期待する政府関係者や識者もいるが、幻想である。所得が失われ、物を買う力も失われているので、コロナが収束しても消費は戻ってこない。よくて「L字」回復である。

そこで、国民の失われた所得を補い、感染拡大抑制に伴う消費の回復を確かなものとするため、100兆円の追加経済対策を5月11日の予算委員会で安倍総理に提案した。

日本を救うための100兆円の追加経済対策

■収束までの家計支援(26兆円)・賃金の8割確保(5兆円)

まず、一刻も早く10万円の追加給付と、消費税の10%から5%への税率引き下げをやるべきだ。あわせて、手続きに時間がかかる雇用調整助成金ではなく、一般会計からお金を入れて、全ての働く人の賃金の8割を国が保障すべきである。

■万全の減収補償(46兆円)

そして、緊急事態宣言による外出自粛等で売り上げ減少などの影響を受けた事業者に対して、万全の補償を行うことが必要だ。持続化給付金の制度が新設されたが、要件が厳しいことに加え、上限額も法人で200万円、個人事業者で100万円となっている。

米国のPPP(Paycheck Protection Program)制度は、1社最大10億円まで支援する(国会図書館による調査結果)。ケタ違いだ。必要書類を2種類PDFで添付して送れば、速やかに振り込まれる。私のハワイの友人には約4900万円がたちどころに振り込まれた。このPPPにトランプ政権は約70兆円を投じている。

これに対して、日本の持続化給付金はわずか2.3兆円である。これでは全く足りない。2次補正予算では、持続化給付金の要件を大幅に緩和するとともに、1社あたりの上限額を最大10億円に引き上げて、失われた付加価値の補償を行うべきである。予算としては現在の20倍の約50兆円が必要だ。

■地方財源、学生支援、医療支援(9兆円)

生活保障と休業補償以外にも、地方財源の充実、学生支援、経営が悪化してしている病院や歯科医院の支援も急務だ。加えて、児童手当の増額や給付期間の延長(高校卒業まで)や、介護・障害者福祉従事者や保育士さんへの手当の創設なども入れた「真水で100兆円」規模の第2次補正予算が不可欠であることを改めて強調したい。

■財政投融資による家賃支払い猶予・中小中堅企業の資本強化(15兆円)

あわせて、財政投融資も大幅に積み増し、テナント家賃の支払い猶予を速やかに行うことや、経営基盤が痛んでいる企業に対して、優先株や劣後ローン、デット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)など資本性の支援も強化していかなくてはならない。外資による買収を防止し、安全保障や医薬品・医療機器の分野におけるコア技術や資産を外国から守るという「経済安全保障」の観点からも不可欠である。

■財源は100年国債の「コロナ国債」で

財源は、現在の低金利を生かして、超長期国債(100年)の「コロナ国債」を発行して100兆円を調達すればいい。商品設計としては、様々な形が考えられるが、1,500兆円の個人金融資産が日本に存在することを考えれば、ゼロクーポン(金利ゼロ)の相続税免除の個人向け国債として売り出すか、金利1%の個人向け国債として発行すれば、即完売するだろう。もちろん、金融緩和策とのポリシーミックスで日銀に購入してもらうことも有力な案の一つだ。いずれにしても今は財政再建やプライマリーバランスを気にする時ではなく、国債を発行して大規模な財政出動を行うべき時である。

予算だけでなく、急がなくてはならない法整備もあるが、これについては別の記事で触れたい。

大規模・簡素・スピーディーな経済対策を

とにかく、現在のような安倍内閣や自民党による「ケチケチ」「ゴチャゴチャ」「モタモタ」の経済対策ではコロナ不況を防ぐことはできない。日本は新型コロナウイルスによる死者数が少ないと言われているが、これは国民の努力によるところが大きく、安倍政権による感染症対策ははっきり言って迷走してきた。

しかし、経済対策におけるこれ以上の迷走は許されない。

順調だった雇用にも暗雲が垂れ込めており、今後、失業者が約80~130万人増加する推計も出ている。過去のデータを分析すると、失業率が1%増加すると、経済的理由による自殺者が約1,800人増えるとされている。今後の経済対策を誤ると、新型コロナ感染症で亡くなった人数の何倍もの人が経済的理由で自ら命を断つことになる。それだけは政治の責任でなんとしても防がなくてはならないが、政府の経済対策にはその危機感が薄い。

感染による死者を防ぐことも大切だが、経済的な理由による大量の自殺者を出さないためにも、「大規模」「簡素」「スピーディー」な100兆円規模の大型経済対策を強く求める。

もしできないなら、国民の命と生活を守るために政権から降りていただくしかない。(以上)

新型コロナ100兆円の追加経済対策(案)

【収束までの家計支援】
◯1人10万円の追加給付

一次補正と同額→13兆円 

◯消費税減税(10%→5%)

消費税減税(1年間の時限措置)13兆円

【万全の減収補償】
◯持続化給付金の大幅拡充による粗利補償・資金繰り対策

米国PPPを参考に一社あたり最大10億円まで補償

一次補正の20倍→46兆円

【賃金の8割確保】
◯雇用調整助成金と失業給付金の日額上限引き上げなど

全ての働く人の平均賃金の8割を国が一般会計で肩代わり(上限1000万円)

一次補正の5倍→5兆円

【地方の権限と財源を大幅拡大】
◯地方創生臨時交付金の増額

一次補正の5倍→5兆円

【学生の生活支援と学業継続】
◯学費半額と20万円の一時給付金+卒業生の奨学金支払い減免

一次補正の2000倍→1.4兆円+新規7000億円=2兆円 ※法案提出済み

【検査体制の拡充と医療崩壊の防止】
◯緊急包括支援交付金(全国の病院、歯科医院の経営支援を含む)

一次補正の10倍→2兆円

【その他の項目】
・ひとり親家庭への児童扶養手当倍増

・児童手当増額と支給期間延長(高校卒業まで)

・介護・障害者福祉従事者への危険手当

・保育士への危険手当

・「どこでもWi-Fi」(オンライン教育における格差是正の基盤整備)

・オンライン教育に対応する学習指導員の増員

・文化、芸術、エンターテイメント支援

・検査・追跡・隔離体制の大幅拡充

・ワクチン・新薬開発支援

・農業・酪農・水産業など一次産業支援

<財政投融資の追加>
●家賃支払い猶予(家賃支払猶予法に対応)5兆円

●中小・中堅企業への資本強化(優先株、劣後ローン等)10兆円

●「新」産業再生機構の設立による基幹産業の再生・再編 10兆円


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2020年5月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。

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玉木 雄一郎
衆議院議員(香川2区、国民民主党代表)

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