リスカする人に出会った時:高知東生さんの忘れられない対応

2020年05月24日 21:00

昨日、女子プロレスラーの木村花さんが急死されたとのニュースが飛び込み、死因は、ネットの誹謗中傷を苦にしての自殺と言われています。そこで現在は、「誹謗中傷をやめよう」という呼びかけが、芸能人を中心に盛んに行われています。

木村さんは亡くなる前に、リストカットでご自身を傷つけ血だらけになった腕の写真をTwitterにUPしていて、異変に気付いた人が、通報したり、お母様のTwitterに知らせたり、中には日本の関係者に連絡をとったりしていたそうなのですが、どうやら間にあわなかったようなのです。

気づいていた方々はどれだけ悔やまれていることでしょうか。
私も何度も仲間の自死にあっているので、その喪失感、自責の念は痛いほど良く分かります。

リスカは、「気をひきたいため」「かまってもらいたいから」と、誤解している人が多いですが、決してそうではありません。トラウマや過去の辛い感情が隠されていて、その気持ちを見ないで済むように、新しい傷をつけているのです。
最初は小さな傷で済むのですが、やがて耐性ができ、数多く切り、深く切り、そして本当に死に至るケースもあります。

つまりリスカもギャンブルやゲーム依存のような、行動依存と同じ経過をたどるのです。

その心理については、この記事に詳しいので是非ご一読下さい。

木村花さんは、それまでにもリスカを繰り返していたらしく、気がついておられた方もいらしたのかもしれません。
でも、依存症の対応が難しいように、リスカも一筋縄ではいきません。

傷に動揺して「やめなさい!」「命を大切にして!」などと、叱咤激励したのでは逆効果なのです。
リスカすることも含めて受け入れ、なんとなく繋がりを作る、こんな感じで信頼関係を築き上げていくことが大切だと思います。

高知東生さんツイッター

私には忘れられない光景があります。
それは俳優の高知東生さんがまだ自助グループに繋がったばかりの頃、ご自身の回復プログラムの一環として、薬物の回復施設にメッセージに行ったんですね。

すぐに仲間たちと打ち解け、親しくなった高知さんと、みんな目をキラキラさせて話しをしていたのですが、ある人が「僕、薬は止まったんだけど、リスカが止まらなくて」と言って傷だらけの腕を見せてくれたんですね。

高知さん、多分初めてそういう場面に出くわしたと思うんですね、私は横で「うっ!どうしよう」と一瞬焦ったのですが、高知さん実になんでもない感じで、間髪いれず「お前、なかなかやるな~」って笑ったんですよね。そしたら彼も笑顔で「えへへ」みたいな感じになったんです。

すると隣にいた施設のスタッフをやっている仲間が「良かったね~、『やめろよ!』なんて言われたら、今晩また切っちゃうところだよね~」って笑ったんですよね。するとそのご本人も「ホント、ホント~!」って笑って、実にほっこりとしたユーモアたっぷりの空気になったんです。

この一連の流れが私にとっても衝撃的だったんですよね。
普通の人は、なかなかこんな風にできないと思いますが、やはり心に大きな傷があって、その傷を癒す過程での、もがきや苦しみ、それでも少しずつ良くなっていることを受け入れ、決して焦ることなく、ありのままを受け止めていく。それってやはり気持ちがわかる人にしかできない、癒しの対応じゃないかなと思ったんです。

私も高知さんもリスカの経験はありませんが、心の傷が癒えていくまでの過程は良く分かります。
それは一筋縄ではないし、価値観がひっくりかえったり混乱したり、時に七転八倒の苦しみを産みます。
そしてそこを乗り越えることは決して一人ではできないし、良き伴走者が必要です。

私は、今回の件では「誹謗中傷」に対する対処だけでなく、やはり日本の自殺対策の脆弱さも見直して欲しいと思います。
特に依存症やリスカなども含む行動嗜癖は、自殺率も高いのに対策が不十分です。
依存症者への誹謗中傷を含め、啓発が全く届いていません。

自殺対策にはもっとメンタルヘルスの観点を取り入れるべきだと思います。

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田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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