バロンズ:アメリカ版ミセスワタナベ、米株市場を席捲!

2020年05月25日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーはコロナ禍での中小企業の存続に注目する。イリノイ州で歯科医院を経営するマイク・ブリッジ氏は、州政府が緊急事態を除く歯科治療の閉鎖を決定してから9人のスタッフを3月後半に一時帰休とした。5月初めに規制は解除されたが、新たな安全基準を導入するため未だ多くの歯科医院は開いていない。また、ブリッジ氏自身の収入も4月に95%減となった後、5月も低迷が続く。同氏は「同時多発テロや金融危機を乗り越えてきたのだから、今回もやっていけると信じているが、今回が一番厳しい」と嘆く。景気刺激策に盛り込まれた賃金保証プログラム(PPP)は5月18日に承認されたが、従業員を呼び戻すほどビジネスは回復していない。

(カバー写真:Claude/Flickr)

Claude/Flickr)

中小企業は雇用とGDPの半分を占め、企業収益の40%を担うだけに、彼らの回復は米景気のカギを握ると言っても過言ではない。しかし、中小小型株指数のラッセル2000が年初来で18.8%安である一方、S&P500種株価指数は8%安と対照的で、中小企業が直面する困難を物語る。中小企業の現状と展望については、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米国で増加するデイトレーダーの状況を伝える。抄訳は、以下の通り。

スポーツ・ギャンブルに代わるデイトレード、永遠に株式市場を支えられず―Day Trading Has Replaced Sports Betting as America’s Pastime. It Can’t Support the Stock Market Forever.

コロナ禍でTV漬けになったりお菓子作りに励む人々が増えているが、足元でデイトレーダーが急増中だ。コロナ禍を背景とした3月の急落に加え、Fedによるゼロ金利再開や無制限の量的緩和の導入緊急資金供給措置など一連の政策が好感されたほか、ネット証券会社が手数料の無料化に動いたことが奏功した。2019年10月のチャールズ・シュワブを皮切りにフィデリティ・インベストメンツやE*トレード・フィナンシャル、インタラクティブ・ブローカーが追随し、ミレニアル世代やジェネレーションZを株式投資に導いたものだ。

さらに、個人投資家向け売買アプリ、ロビンフッドが切り拓いた分割所有への道に、チャールズ・シュワブやフィデリティが続く。ロビンフッドの広告が「今日はテスラ株を0.3株取得した。少しずつだよ(Got .3 shares of tesla stock today. Little by little)」と謳うように、少額で大型株を購入できる点が魅力となっている。

個人投資家の間でデイトレード熱が高まっているのは、コロナ禍で在宅勤務を強いられているからだけではない。景気刺激策が得た1,200ドル相当の小切手も、彼らの投資資金として歓迎された。金融関連ソフトウェア会社エンベストネット・ヨルディによれば、普段は現金と貯金しか行わない年収3.5万~7.5万ドルの世帯で銀行から証券会社への送金が過去3番目の高水準を記録したという。年収10万ドル~15万ドルでも、同様の動きがみられた。

チャート:S&P500は二番底懸念を払しょく、200日移動平均超えを狙う

(出所:Stockcharts)

(出所:Stockcharts)

上昇トレンドで益出しを急いだ過去と違い、足元では「TINA(There Is No Alternative、選択肢なし)と「FOMO(Fear Of Missing Out、取り残されるフアン)」に駆られた人々が株式投資に集っている。特に、Fedがゼロ金利に踏み切った結果TINAの状況が色濃くなり、中銀が何兆ドルもの資金を注入すれば、株式市場がFOMOを燃料に勢いづくとは想像がつく。

デイトレーダーは楽観的なのか、大化けして大幅高を迎えることに賭け、最も売り込まれた最も手ごろな株式に飛びついてきた。例えば、連邦政府の支援を仰いだ航空会社が対象となり、皮肉なことにベテラン投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが全保有株を売却したことは記憶に新しい。その他、ロビンフッドの顧客のポジションで上位はフォード・モーター、ジェネラル・エレクトリックなど、株価は1桁台で低迷が続く。新型コロナウイルス関連でいえば、コロナ治療薬やワクチンの開発で話題のソレント・セラピューティックスやモデルナも、人気銘柄だ。

デイトレーダーの間では、オプション取引の熱も高まりつつ、そこでも個人投資家の楽観度が伺える。10コントラクト以下の小口のオプション取引はコールの買いやプットの売りなど、強気なものが多い。

こうした楽観的な取引の拡大をにらみ、チャールズ・シュワブのリズ・アン・ソンダーズ首席投資ストラテジストは「かつてのスポーツ賭博のようだ」と指摘し、過剰な投機活動が生まれていると警鐘を鳴らす。E*トレードも経験不足な投資家からの迸る資金流入を受け、広告で注意を促し始めた。

ビアンコ・リサーチのジム・ビアンコ氏は、「個人投資家の熱狂的な買い」が米株相場の約30%に及ぶ戻りを促したと分析。その上で「弱気相場のラリーであって、新たな強気相場の始まりではない」とまとめる。

スポーツに話を戻せば、NBAやメジャーリーグはシーズン開幕に向かって準備し始めた。NFLも9月のシーズンスタートに向け、動き始めている。開幕した暁に、米株の戻りを演出した個人投資家は米株相場に張り付いているだろうか?それが問題だ。

――米株相場の戻りには目を見張るものがありますが、ミセス・ワタナベならぬ、「ジョン・Q・パブリック=一般的なアメリカ人」相場と位置付けられるかもしれません。確かに「根拠なき熱狂」を連想させる状況ながら、資産効果が与える恩恵も見捨てておけず、金融当局は対応するにしても極めて慎重な姿勢が求められることでしょう。しかも、ジャンク債やハイイールド債で組成したETFを買い入れる状況では、尚更です。個人投資家をディスる前に、考えるべき事情があるような気がしますよね。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年5月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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