米中対立の行方と見通し〜 トランプ政権は軍事行動に出るのか?

2020年05月26日 06:01

※画像はイメージです(米太平洋艦隊公式flickr

最近、アメリカは史上最大級の戦力をインド太平洋に展開している。PowerProjection(戦力投射)の主役である空母6隻(大型3隻と中型3隻)が東アジア地域に集中している。中型空母は垂直離着陸用のF-35戦闘機と海兵隊の艦岸移動を主任務とする上陸作戦専用の空母である。

1個空母戦団は核潜水艦2隻、イージス駆逐艦2隻、防空・対潜駆逐艦4〜5隻、燃料補給艦1隻で編成している。米海軍の大洋機動艦隊は7艦隊(インド太平洋)、3艦隊(東太平洋)、2艦隊(大西洋)、6艦隊(地中海)、5艦隊(中東・インド洋西側)の5個艦隊が5大洋6大州を管轄している。

一方で、アメリカは地球圏打撃司令部(Global Strike Command)所属B-1B戦略爆撃機4機を5月1日、グアム基地に再配備した。B-1B戦略爆撃機は1機辺り武装が最大61㌧(内部37㌧、外部24㌧)であり1㌧軽トラック61台分の誘導武器と爆弾を搭載する。

中国が仕掛けた新冷戦に正面から立ち向かうアメリカ

戦争の種類は、通常戦、サイバー戦、テロ戦、化生放戦(化学・生物・放射能)、宇宙戦、情報戦に分類出来る。現代戦争の特徴はテロ戦、サイバー攻撃(ハッキング、情報心理戦)など非対称戦が割と多い。全面戦争こそ減っているものの、通常戦争の危険性が皆無になったとは考え難い。アメリカが史上最大の戦力を東アジア地域に展開する目的は対中軍事圧力と対北警告である。最悪の場合、米軍の戦力が実際の軍事行動に踏み切る可能性も視野に入れているように見られる。

DragonOne/写真AC

米中の覇権争いは貿易戦争から始まり、昨年、中国武漢を発源地とする新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに米中の緊張がエスカレートしている。VOA報道(5月22日、23日)によれば、米国政府は米議会に対中新冷戦宣言に等しい対中外交、安保、経済政策方向報告書を出した。

主な内容は米国が1991年、旧ソ連を崩壊させた先例に従って今度は中国を分離独立、解体させるための実行計画が盛り込んでいると考えられる。米ランド研究所のブルス・ベネット主任研究員は「中国が十数年前から仕掛けた新冷戦状況を、アメリカが正面から受け止めた」と評価している。

元より米国は旧ソ連を牽制するため、貧しい中国を世界の工場に育てた。しかし、今日の中国は米国のお陰で貧乏を卒業したにも関わらず恩恵を裏切るように米国の覇権に挑戦している。

アメリカは、中国の一帯一路政策を経済的に弱い国々に付け込んで収奪するものと見ており、貿易、観光を武器にして覇権を拡大する中国に本格的にブレーキを掛けようとしている。アメリカとしては今後、中国の海洋進出に歯止めを掛けようとしていくだろう。

コロナの責任、沸騰する米国内の反中世論

5月23日現在、アメリカはコロナウィルス感染者が160万名を超えており、死亡者は10万人近くに達した。米国は真珠湾攻撃で2,335人が死亡しており、9.11同時多発テロ攻撃で2,996人が死亡した。だが、中国発の新型コロナウィルスが、想像出来ないほど多数の死亡者が発生したことに問題の深刻さがある。アメリカを始め、国際社会の中にはテロ行為に匹敵するほどの怒りを抱く向きもある。

アメリカ各州は50ヶ国を合わせた面積だから当然、感染率や死亡者が多いと言われる。しかし、新型コロナウィルスの発源地が中国の武漢であるにも関わらず最初の2か月間、ウイルスの発生を隠蔽して感染が世界に拡散される結果を招いた中国に怒りを隠せないようだ。

さらにペンス米副大統領は「中国がアメリカの企業、大学、シンクタンク、学会、言論、地方・連邦政府に資金を提供する見返りに、事実を歪曲し、米国世論を誘導する心理戦に集中している」と警告した。

新華社通信より引用

ちなみに、中国は、WHOのテドロス事務局長を“操縦”して、中国の新型コロナ問題の責任を免れようと画策した。前回のWHO事務局長だったマーガレット・チャンも中国人である。彼女はWHOに13年間在任し、中国共産党政権の意向を汲むかのように、「疫病に地名を付けるな」と、中国の責任免れの発言を繰り返している。

しかし、SARSや鳥類インフルエンザを始め、今回の新型コロナウイルスの発源地が中国であることは間違いない。中国が極力否定しても隠せない事実であり、アメリカは証拠を全て握っている。無論、アメリカ国内では、中国の責任への怒りは収まっていない。

国際社会は中国とのDecoupling(切り離し)が続く中、アメリカの世論は「100兆㌦の損害賠償責任を問うべきであり、米国が抱える中国債権1.1兆㌦の償還を拒否すべきだ」(5月1日、WSJ報道)などと沸騰している。

中国は存亡の危機に陥るのか?

ちなみにアメリカの民主党も対中包囲網圧力を支持しており、国内世論の67%がトランプ政権の対中強硬路線を賛成している。英国のシンクタンクHJS(ヘンリー・ジャクソン協会)も中国は4兆㌦を英国に損害賠償すべきと指摘しており、フランス、ドイツも損害賠償を求めている。コロナショックは1929年の世界恐慌と2011年リーマン金融危機をはるかに上回る。

国際社会では不況による倒産が相次ぐ中、貧困層が溢れつつある。特に、中国など開発途上国はこれから不況を抜け出す道が不透明である。中国は米国に次ぐ“G2国家”だと威張って来たが、殆どが信頼と信用を欠いた途上国に過ぎない側面が垣間見えてくる。言わば、ハッタリや見せ掛けの側面が多い国柄なのだ。

アメリカは食料と石油資源が自給自足出来るが、中国は、食料と資源をほとんど輸入に依存しており、経済崩壊を迎えざるを得ない状況が続いている。特に、中国に現地生産拠点を置いた米アップル社を始め、日本、韓国など西側諸国が中国から生産工場をインド、ベトナムなどへの移転を始めたり、検討したりしている。

さらに、中国共産党傘下の国営企業ファーウェイへアメリカ、韓国、台湾が半導体核心部品供給を停止する段取りである。アメリカは電子産業のメーカーであり、半導体核心部品とソフトに約30%以上のシェアを持つ。これがストップすれば、中国の電子産業は致命的な打撃を受けるはずである。

flickr(Global Panorama、Gage Skidmore)

国際社会の圧力に耐えられないほど、厳しい状況に直面している中国が前向きで譲歩しない限り、国が存亡の危機に陥る危険性を抱えている。レーガン大統領が軍備競争を通して旧ソ連を崩壊させたように、トランプ大統領は中国の分離独立、解体を目指してはいまいか。あくまで最悪のシナリオだが、アメリカが対中軍事行動に踏み切る可能性も否定はできまい。

とはいえ、一般的に考えられる軍事行動より、いわゆる限定戦争、あるいは局地戦で致命的な対中打撃を与える蓋然性が伺えられる。アメリカのお国柄として、外国から攻撃されたら必ず報復する前例は多い。

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高 永喆
拓殖大学客員研究員、韓国統一振興院専任教授、元韓国国防省専門委員

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