守旧官僚の“守護神”石破茂氏がアビガンでは急進派

2020年05月26日 14:00

「新型コロナウイルス感染症の治療薬候補アビガンを巡り、安倍晋三首相が目指すとした「5月中の承認」を政府が断念した」と伝えられている。厚生労働省の薬務官僚の猛抵抗が続いているようで、彼らは薬効が立証できてないと譲らないようだ。

もうさんざん議論しているが、実際に服用して効くという人が多く、副作用も妊婦などには問題だが、高齢者の患者には関係ない話だから、使用を認めるべきであろう。

ちょっと似たのが丸山ワクチンで、「1981年8月に厚生省が不承認とした。ただし、『引き続き研究継続をする』とし、異例の有償治験薬として患者に供給することを認め、現在に至る。2015年12月末までに、39万9787人のがん患者が丸山ワクチンを使用している」(Wikipedia)という状況であるが、アビガンは安い薬だから自己負担でも大丈夫だろう。

これまで、安倍内閣が守旧派の官僚機構と衝突したときに、いつもは、守旧派官僚の守護神として登場するのが石破茂氏である。検事総長問題、9月入学、入試改革、集団的安全保障など常にそうだった。

画像は防衛省ツイッター、Wikipedia

ところが、アビガンの認可については、安倍首相より急進派らしく、安倍首相のやり方が手ぬるいという立場で、「治療薬候補のアビガンについては、安倍総理が柔軟に使えるように指示を出し、病院の倫理委員会の承認があれば使えるのだが、石破氏は倫理委員会を経ずに使えるようにしたら、などと、ややわけのわからない提案」ということを「新型コロナ:姿勢論だけ繰り返す石破茂氏に幻滅」でも紹介した通りだ。

アゴラでも掲載されているが、最近でも自身のブログで、「医療行政や関連法令に通暁していない者がこのような主張をすることは適当ではないのかもしれませんが、リスクを負うことができるのは国民から選挙で選ばれる政治家の立場であり、これがリスクを負いえない官僚や学者と決定的に異なる点です。政治主導の本質はまさしくここにある」と安倍首相の弱腰を批判するような勇ましい議論を展開している。

「新型コロナの治療薬として期待できるレムデシベルの特例承認が認められました。アビガンについても5月中に特例承認が認められる見通し、との報道もあり、事実であれば望ましいことです。リスクを最小化したいのは誰でも同じですが、政治家は最小化するための努力を最大限に行った上でもなお存在するリスクを負うために存在しているのであり、これは官僚にも、学者にもできることではありません。」(5月15日

「新型コロナウイルスの治療薬として、「レムデシビル」が本日承認にこぎつけました。続いて「アビガン」も5月中の承認に向け作業を加速するとのことです。先週も申し上げた通り、これは一日も早く行うべきです。すでに政府は「観察研究」の枠を拡大すべく通知していますが、病院の倫理委員会の許可などの手続きをさらに簡素化・迅速化するとともに、承認自体の手続きもさらに急ぐ方策を探るべきと考えます。「レムデシビル」の特例承認がこれだけ早いのであれば、海外の治験・承認を端緒として、同様の特例承認とすることもありうるのではないでしょうか」(5月8日

「『新型コロナウイルスの罹患者で軽症の方々には、新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の使用を直ちに認めるべきです。現在、新型インフルエンザの治療薬として200万人分(新型コロナウイルスに対しては投薬量が異なるため人数はさらに少ないか)の国家備蓄が行われていますが、新型コロナに対しては、①ご本人の希望、②病院の倫理委員会の了承、③治験ではなく観察研究の形式を採る、という形でなければ使えないとするのが政府の立場です(安倍総理答弁)。

②でいう「病院」とは20床以上の病床を必要とし、一般の開業医や診療所は該当しません。「倫理委員会」は現在全国で98委員会ありますが、主に大学病院にしか設置されておらず、設置のためには医学・自然科学・法律学・人文社会科学の有識者、専門家や、患者など一般の立場から意見を述べられる者が女性を含めて5人以上いなければなりませんし、投与対象者一人一人に対して審査がなされ、全会一致が原則とのことです。要件はそれなりにとても理にかなったものですが、そのような委員会がたくさん設置できるとは思われませんし、長大な時間と膨大な手間を擁することになるでしょう。

③でいう「観察研究」とは、新薬が使えるようになる過程としての臨床試験(治験)ではなく、あくまでその前の段階である「研究」を指すものではないかと思われます。

以上から考えるに、いまの政府の立場からすれば、事実上、アビガンを一般に広く使っていただくことは困難になってしまうのではないでしょうか」

薬機法(医薬品、医療機器等の品質・有効性及び安全性の確保に関する法律)第14条第3項は、「特例承認」として、

「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延その他の健康被害の拡大を防止するため緊急に使用されることが必要な医薬品または医療機器であり、かつ、当該医薬品または医療機器の使用以外に適当な方法がない」場合には、厚生労働大臣は製造販売の承認を与えることができる、と定めます。

「これ以外に適当な方法がない、とは直ちに言えない」として慎重な姿勢を崩さないことも考えられますが、この特例が使えないのなら、新たに立法する他はないように思います。

医療行政や関連法令に通暁していない者がこのような主張をすることは適当ではないのかもしれませんが、リスクを負うことができるのは国民から選挙で選ばれる政治家の立場であり、これがリスクを負いえない官僚や学者と決定的に異なる点です。政治主導の本質はまさしくここにあるのであり、昭和35年に「すべての責任は私にある」と述べて、当時未承認であったポリオワクチンを1343万人分、ソ連から緊急輸入して、小児麻痺から日本の子供たち(その中には私も含まれます)を救った古井喜実厚生大臣の決断に学ぶことは多いと考えます。」(5月1日

これまでの石破氏の守旧派官僚擁護の軌跡

前川喜平(Wikipedia、次官時代の2016年撮影)

安倍内閣になってからも、大きな改革をしようとすると、各省庁と関係業界、族議員の猛抵抗になっている。加計学園問題など、前川喜平元次官を中心に守旧派が岩盤規制を守ることを正義のように言い立てただけだ。

教育についても、入試改革で会話など「四技能重視」にしようということすら守旧派の教育関係者に潰され、9月入学もそうである。

安保法制も内閣法制局長官を交代させるなどしたのちに、やっと道が開けたわけだ。

検事総長人事も、検察人事に政府がささやかな選択肢を持つことが不公正という印象操作がされているが、具体的な事件については口出ししないが、検事総長など主要人事は政治が決めて民主主義統制を守るという原則を否定するのは許しがたい。

そうしたときに、常に守旧派官僚の側に立って安倍政権たたきをしてきたのが、石破茂氏だ。

文部科学省との関係については、加計学園問題で獣医学部を増やさない側の肩を持ったが、入試改革問題でも、最近のインタビューで、

英語の入試改革について大混乱をきたし、大臣の判断で見直しとなったばかりです。このような大きな制度設計については、なによりもまず教育の現場、当事者の方々、そして学生さんたちの意見も丁寧に聴くべきではないでしょうか。9月からとなると、学年分断が起こらないようにするにはどうするのかという話もありますし、熟議を経ずに今年9月からというのはあまりにも乱暴です。私は9月入学自体に反対というわけではありませんが、現場が「この制度はこうすればできるね」と得心できるような制度設計を積み重ねた上でやらないと、取り返しがつかないことが起きるのではなはないでしょうか。

と守旧派の意向にそっくりそのまま沿った意見を表面している(参照:石破茂元幹事長が語るアフターコロナの国のかたち コロナとの闘いは?国際秩序は?憲法改正は?:FNNプライムオンライン

稲田検事総長の辞任を首相官邸が求めている、とも報ぜられていますが、検事総長の定年は65歳であり、退官を強制することは出来ないはずで、誰がどのような思惑でそう言っているのか全く分かりません。

(「制度的担保として、検察の独走や暴走を抑止する仕組みを考えておくことも必要だと思います」といっているが、検事総長に勇退を求めることすら否定しておいてなんだということだ)。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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