コロナ下で官僚の採用がはじまる

千正 康裕

国家公務員にもたくさん種類があって、それぞれ試験が違いますが、いわゆるキャリア官僚と呼ばれるのは、総合職試験に合格して入省する人たちです。

今年も採用の季節がやってきましたが、コロナの影響で例年と随分違うやり方になっています。

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1.2度の国家公務員試験の延期

コロナの影響は、公務員試験にも及んでおり、
4月26日(日)に予定されていた1次試験は2度延期され、
7月5日(日)となりました。

試験日がなかなか決まらなかったので、やきもきする学生も多かったようです。勉強期間が延びたので、少し勉強が遅れていた学生も追いこみで合格ラインに届く機会が出てきたという面はあるかもしれません。

後述するように、みっちり試験勉強できるのは実質あと2週間あまりなので、悔いのないようにがんばってほしいと思います。

2.採用面接の前倒し

一般にあまり知られていないかもしれませんが、試験に合格したからといって官僚として働けるわけではありません。

試験は、あくまで採用面接の切符みたいなもので、試験に合格した後、民間企業の就職活動と同じように、入りたい省庁の面接を受けに行って内定をもらって初めて入省できます。

国家試験合格に合格しても民間企業に就職する人もたくさんいるのです。

この面接は、各省の自由競争なのですが、人事院という国家公務員の採用を担当する役所がルールを作っていて、一定のルールの元でいっせいに面接がはじまって、各省同じ日に内々定が出ます。

この面接のことを「官庁訪問」といいます。

例年、国家公務員試験の2次試験が終わって最終合格発表の後に、この「官庁訪問」という面接はやっています。

学生は、試験勉強に専念できますし、省庁側も入省の条件である試験合格した学生だけを面接するので効率的だと思います。

この官庁訪問の時期もコロナの影響を受けました。

国家公務員志望の学生は「官庁訪問はいつなんだ?」と、やきもきしていたと思いますが、ようやく昨日発表されました。

こちらをごらんください(↓)。

総合職事前面談会ガイド2020

総合職事務系 2020年度事前面談会の情報を掲載しました。

2020年度事前面談会(総合職)のご案内

人事院のHPには何も掲載されていませんが、各省の採用ページにいっせいに同じスケジュールがアップされています。事前登録開始が6/1(月)なので、アップされていない省庁も6/1(月)にアップするでしょう。

6月1日(月)~6月16日(火)事前登録期間
6月19日(金)~7月3日(金)事前面談会(!)
7月5日(日) 1次試験

3.事前面談会ってなんなんだ

今年も最終合格後に「官庁訪問」という名のプロセスがあるので、この「事前面談会」は官庁訪問とは違うのか?と思う方もいるようです。

端的にいいます。

学生の皆さんは
事前面談会=例年の官庁訪問
だと思って臨むことを強くお勧めします。

こちらの去年の「官庁訪問」ガイドを見て下さい。

総合職官庁訪問ガイド2019

一昨日、各省が公開した事前面談会と同じです。

違うのは、例年の官庁訪問ガイドは人事院のクレジットがついていて、今年の事前面談会ガイドは人事院のクレジットがついていないということです。

今年の事前面談会のガイドを見ても、
面談の結果によっては次のクールに進めないことになっています。

今年の事前面談会ガイドの以下の部分が重要です。

【以下、今年の事前面談会ガイドの引用】
Q 今回の事前面談会と、これまでの各府省等での 業務説明会との違いは何ですか。
A 今回の事前面談会は、皆さんと各府省等とをマッチングする役割も担っています。そのため、各府省等の職員からも志望動機等について質問をする等、皆さんの状況を正確に把握し、各府省等での勤務における適性等についてもアドバイス します。

「マッチング」とか「アドバイス」とか「皆さんの状況を正確に把握」とか奥歯にものが挟まったような、あるいは霞が関文学的な言い方をしていますが、日本語では(霞が関用語では?)意味をぼかす時に英語を使いますが、要は採用選考以外のなにものでもありません。

4.オンライン面談

例年と大きく違うのは、少なくとも第1タームがオンライン面談になることです。

昨年秋まで20年近く霞が関にいて、10数年海外勤務の期間を除いて毎年面接官をやってきた僕の感覚からすると、これは大きな変化です。

おそらく、学生の皆さんにとっては、あまり違和感はないかもしれません。

むしろ、面接する官僚にとっては大きな違和感です。

霞が関の官僚は、今年の新型コロナウィルスの流行まで、ほとんどの人がテレビ会議を経験していないのでそれほど慣れていません。

また、テレビ会議は取引先や社内など相手との関係ができている状況で普通に仕事の話をするには、ほとんど不都合なくむしろ便利だと思いますが、よく知らない人の「人となり」を感じるには、リアルよりも相当情報量が減ります。要は、人の人間的魅力などを感じにくいのです。

リアルな面接で緊張して来る人は毎年います。それでも、話しているうちに徐々に緊張がほどけていって、素の自分が出てきたりします。この瞬間の柔らかい笑顔などが強く印象に残りますし、そこからが面接の本当の始まりみたいなものです。

オンラインでは、リアル以上に
「明るく、笑顔で、ハキハキと」
を意識してもらえればと思います。

学生の皆さんにとって色々と影響はあると思いますが、プロセスが決まったので、この状況から何がベストかを考えて、前向きに悔いの残らないように臨んでもらえれば幸いです。

千正と政策について色んなお話をしてみたい方はこちらをのぞいていただけますと幸いです(↓)。

千正道場

政策のプロである千正が、みんなと一緒に政策や身の回りの困りごとの解決法などを考えていくサークルです。 千正親方は、毎日20-30分くらいはここに登場します。 普段会わない色んな立場の人が、安心して話し合ったり、交流できる場所にしていきます。


編集部より:この記事は元厚生労働省、千正康裕氏(株式会社千正組代表取締役)のnote 2020年5月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。