【独自】維新、都知事選初参戦か。侮れない小野氏、都議会自民は?

新田 哲史

熊本県副知事の小野泰輔氏(46)が2日、東京都知事選(6月18日告示、7月5日投開票)に立候補する意向を明らかにした。

小野泰輔氏(熊本県YouTubeより)

小野氏は、政治学者でもある蒲島郁夫・熊本県知事の東大教授時代に師事。卒業後は、外資系コンサルタント会社などを経て、2008年、知事に就任した蒲島氏の招きで県政策調整参与に就任。12年からは副知事を務めてきた。

小野氏は東京都目黒区の出身。メディアの取材に「現状は現職の無風状態だが、今後の東京をどうするのか論戦したい」と抱負を語ったという(参照:東京新聞)。しかし、全国的には無名の小野氏が、小池氏の圧倒的優勢が予期される都知事選で、後ろ盾もいない中で出馬を表明することに疑問視する向きが多かった。

だが、小野氏を侮るのは早計かもしれない。

政界関係者によると、小野氏は、アゴラでおなじみの柳ヶ瀬裕文参議院議員(維新、比例)と海城高校の同窓生だという。柳ヶ瀬氏が小野氏に都知事選への出馬を働きかけていたのかは不明だが、複数の政界関係者によると、日本維新の会が小野氏を支援することができるか前向きに検討しているとの情報が浮上した。

仮に小野氏を支援することになれば、維新にとっては2010年に大阪維新の会が結党して以来、都知事選への本格的な参戦は初めてとなる。維新は2017年衆院選で、小池氏が率いた希望の党と協力関係を締結。衆院選で希望の党が敗れた後も、松井代表と小池氏の関係は良好とみられていた。今回の都知事選に際しても維新は当初、小池氏を支援する可能性に含みを残していた。

維新、政策次第で小池氏支援も(時事通信 2月19日)

ここにきて風向きが変わったのは、都知事選と同時に行われる都議補選の動向が要因のひとつとみられる。4つの選挙区で実施される補選のうち、維新は、柳ヶ瀬氏の地元・大田区と、音喜多駿参議院議員の地元・北区にそれぞれ候補者の擁立を決定している。

これに対し、小池氏が顧問を務める都民ファーストの会は2017年の都議選で大勝していたこともあり、補選に候補者を出さないとの見方もあった。

ところが、ここにきて都ファは宝塚歌劇団出身の小池氏の元秘書を擁立すると発表。北区の補選は、先に出馬を表明している自民、立憲民主、維新・あたらしい党の3陣営のいずれも女性で、全国的にも珍しい女性候補者同士による「4つ巴」の激戦になるものとして注目度が急上昇している。

作成:@STcdp0511

維新は4月の目黒区長選で、23区長選で初の公認候補を立てて参戦するなど、次期衆院選や来年の都議選をにらんだ党勢拡大に力を入れており、都知事選では、小池氏との協調路線を取るか、独自路線に舵を切るのか注目されている。

都議会自民党も小野氏支援が選択肢か?

他方、自民党は、党本部が小池氏支援の方針を決めたのに対し、東京都連の都議会議員の間で独自候補擁立を模索する動きは続いている。アゴラでもおなじみ、川松真一朗都議の擁立論もある一方で、この日名乗りを上げた小野氏を支援することも選択肢として浮上しているという。

柳ヶ瀬氏(維新HP)、川松氏(公式HP)

ただ、東京都政を巡っては、維新は柳ヶ瀬氏が都議時代に自民党が与党会派だったときの歴代知事を厳しく批判した経緯がある。維新と自民党とは行財政改革を巡る考え方の相違も大きく、仮に都知事選で同じ候補者を支援する呉越同舟が実現するのは簡単にはいかないとみられる。

しかし、JX通信社が1日に発表した世論調査の結果で、小池氏の都民支持率が前月比で20%も急上昇するという前代未聞の事態に。付随して低迷気味だった都ファの支持率も回復傾向にあるといい、小池氏のプレゼンスが大きくなりすぎることは、都議会自民党の危機感を煽るばかりでなく、維新にも変化を促しつつあるのは確かだ。

また、永田町では、コロナ禍の長期化に対処すべく、次の衆院選後に自民党が公明に加えて維新との連立政権構想も一部で浮上している。野党側も、共同通信が2日深夜、立憲民主党がさきごろ都知事選に名乗りを上げた宇都宮健児氏を支援する方針を固めたと報じた。

コロナ禍を機に国政で加速する再編の動きが、都政でも連動していくようなら、これまでにない現象が出てくるかもしれない。