罵詈雑言はアウト!

一昨日6月1日から、パワハラ防止法が施行されました。「そんな法律できたの?」と思うかもしれませんが、正式名称は労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(略称:労働施策総合推進法)で、パワハラだけではありません。日本でも近年はパワハラという言葉が出来たからなのか、実際そういう事象が増えたからなのか、いずれにしてもパワハラが問題になっていました。

世界的にも、国際労働機関(ILO)が仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約(ILO駐日事務所仮訳)を2019年6月に採択していおり、我が国としてもこれに対応する法律の制定ということでもあります。一昔前だったら、もうそこらじゅうにパワハラがありましたね、「バカ」「やめてしまえ」「能無し」などなど様々な言葉を飛び交ってたと思います。もちろんそれらを肯定はしませんけれども、中にはある種の親心だったり、成長してもらいたいという愛のムチだったりというのもあったとは思います。

近年では社会的地位や権力などを利用したいじめや嫌がらせをするパワハラという言葉は誰もが知る言葉になったわけですが、法律にはパワハラに関することが何ら明記されていませんでしたので、今回それが法律に盛り込まれたということでパワハラ防止法と呼ばれているわけです。

そもそもパワハラとは何か、下記の3条件を満たすものです。
①有意的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
ありきたりな言葉で言えば上司が職務上必要な常識を超えてその人を追い込むというような感じですね。

概念だけではわからないので、例えばこの六つが典型です。

だいたい見ればわかりますけれども、例えば3番の「1人でポツンと別室に入れておく」とか、あるいは6番の「個人の生活にまで言及する」とかですね。

法律の全体的な趣旨としては、パワハラに対して企業に取り組みを求める内容になっています。要するに、企業の「職場におけるパワハラに関する方針」を明確化し、労働者への周知、啓発を行うこと、そしてパワハラに対して適切な対応するために、労働者からの苦情を含む相談に応じ、適切な対策を講じるために必要な体制を整備することなど、そして、仮にパワハラが発生した場合には、事実関係の迅速かつ正確な確認と適正な対処を行うことです。懲役とか罰金というような罰則は設けられていませんが厚生労働大臣による助言・指導および勧告の対象となり、勧告にしたがわない企業名の公表もありえます。

平成30年の全国の労働局へのパワハラの相談件数は8万2797件と過去最高になっています。その意味では、本当にこういう取り組みが必要になるということです。
され、今回の施行では対象がまず大企業から始まり、中小企業の場合は2022年3月31日までの努力義務期間を設けたうえで、2022年4月1日からパワハラ防止法が施行されます。

パワハラとは別で議論する必要があるということをちゃんと前置きをしておきますけれども、現在の労働法制というのは、従業員労働者に有利になっているとも言えます。すなわち、一旦雇用するとその従業員の態度が悪くても、仕事の成果がなくてもやめさせることができないわけです。ですから、職務内容をより明確にしてそれに即した能力や働きがあって雇用が維持される労働法制にすることも必要だと思います。パワハラの中には一部ですが、やはりやめさせるために行われているものもあるのが現実だと思いますね。どうやっても雇用は続けなきゃいけないというのはこれ経営には厳しいですね。だからといってパワハラが許されるということではもちろんないわけで、ますます企業内のコミュニケーション大事になりますね。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年6月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。