トランプ氏は敬虔なキリスト者か?

2020年06月05日 11:30

当方は4年前の米大統領選前にこのコラム欄で「トランプ氏はキリスト教徒か」(2016年2月20日)を書いた。4年後の今日、再び「トランプ氏はキリスト教徒か」を問わざるを得なくなった。

▲親の代からの聖書の上に手を置き宣誓式に臨むトランプ新大統領(2017年1月20日、CNN放送の中継から)

▲親の代からの聖書の上に手を置き宣誓式に臨むトランプ新大統領(2017年1月20日、CNN放送の中継から)

米ミネソタ州のミネアポリス近郊でアフリカ系米人、ジョージ・フロイドさん(46)が白人警察官に暴行された末、窒息死させられたシーンがテレビに放映されると、米全土で警察官の蛮行に抗議するデモが起きた。州外からアンチファシズムのプロ活動家(アンティファ)が動員され、抗議デモを扇動し、暴動を駆り立てているとして、トランプ大統領は軍に出動を命じ、取り締まりを強化してきた。

人種差別に抗議するデモは米国内だけではなく、欧州にも波及し、英国のロンドン、オランダのアムステルダム、ドイツのベルリン、フランスのパリなどで米国大使館前や路上で人種差別抗議デモが行われている。

トランプ氏は1日、人種差別抗議デモに対抗するため軍に出動を命じた後、ホワイトハウス近郊のセント・ジョーンズ教会を訪問、カメラマンたちの前で聖書を掲げて平和をアピールしたが、米宗教界から「軍を使って人種差別の抗議デモ参加者を弾圧する一方、聖書を掲げて平和をアピールするパフォーマンスは聖書の教えに反する」として批判にさらされている。

米カトリック教会ワシントン大司教区のウィルトン・グレゴリー大司教は2日、大統領夫妻の聖ヨハネ・パウロ2世ナショナルシュライン(国立神社)訪問 に対し、「教会の施設を政治の道具に利用することは許されない」という公式声明を出しているほどだ。

ちなみに、フランシスコ教皇は3日、「人種差別や如何なる差別に対して、黙認はできない」と強く反対する一方、「暴力では何も得られない。多くを失うだけだ」と暴動するデモ抗議者を批判、米国民に平和と和解を求めている。米カトリック教会司教会議も人種差別の抗議デモには理解を示す一方、抗議デモ参加者の暴動には明確に一線を引いている。

4年前、「トランプ氏はキリスト教徒か」という問いについて、当方は明確には答えられなかった。4年後、「トランプ氏はキリスト信者か」という問いが再び持ち上がってきたのを感じている。

フランシスコ教皇は4年前に、「架け橋ではなく、壁を作る者はキリスト教徒ではない」と指摘、「移民ストップやイスラム教徒の入国禁止などを主張するトランプ氏はキリスト教徒ではない」とバッサリと切り捨てたが、トランプ氏が伝統的な敬虔なキリスト者のカテゴリーに入らないことは、ほぼ間違いないだろう。

トランプ氏は一応、キリスト教福音派に所属する、れっきとしたキリスト教徒だ。福音派教会はトランプ氏の最大の支持基盤だ。2017年の大統領宣誓式には親代々の聖書を持参して臨んだトランプ氏は、本を読むことはあまり好きではないが、聖書は例外だという。

そのトランプ氏は、移民拒否・外国人排斥を政策の中心に置き、世界の平和貢献より、米国ファーストを掲げてきた。同氏が発信するツイッターは世界に平和ではなく、混乱を起こさせ、側近は大統領と衝突して頻繁に入れ替わり、国際機関からは次から次へと脱退した。第45代米大統領は、自身は敬虔なキリスト教徒というが、それを裏付ける話はあまり聞かない(トランプ氏は歴代大統領の中で最も厳格な中絶反対支持者)。

ところで、米国の歴史は短いが、その建国精神はキリスト教を土台としたものだ。米国民はそれを誇りとしてきた。欧州から最初に米国に渡ってきた清教徒たちは自分の家を建てる前に教会を、そして学校を建てた。それが米国の伝統だった。代々の大統領は神の前に宣誓してきた。トランプ氏はそのような米国歴史の中で選ばれてきた大統領の一人だ。

もちろん、「前回の米大統領選の結果は神の意思ではなく、大統領選に秘かに関与したロシアの選挙工作の成果だ」と辛らつな論調もあるし、トランプ氏が聖書の愛読者だといえば、多くの人々は首を傾げざるを得ないだろう。

ここまでは理解できる。しかし、神は常に立派な人間を指導者に選んできたわけではないのだ。能力のない人間を選び、指導者に担ぎ出したことも度々あった。口下手なモーセにはアロンを遣わし、ソロモン王の堕落も父のダビデ王の功績ゆえに神は目をつぶった、といった話が聖書には記述されている。

「神への信仰」は非常に内面世界のことだから、外部から「あの人は信仰者だ」「彼は信仰などない」とはいえない。医師が遠距離診察で診断を下すようなもので、誤診も出てくるだろう。

以下は当方の一方的な深読みだ。

神が米国の大統領にトランプ氏を選んだとすれば、誤解を恐れずに言うと、トランプ氏はこれまでの世界の秩序を破壊できる人間だからではないだろうか。聖書の最後の書、「ヨハネの黙示録」21章には、「新しい天」、「新しい地」が誕生するためには、「古い天」、「古い地」が先ず破壊されなければならないとある。誰がその嫌われ役を担って登場してくるだろうか。ひょっとしたら、トランプ氏はその目的のために第45代米大統領に選ばれたのではないか。彼が優秀で敬虔なキリスト者だから選ばれたのではなく、新しい世界を生み出すために古い世界を潰すデストロイヤーとして選ばれたのかもしれない。

興味深い点は、破壊者トランプ氏が大統領在任中に「中国発武漢ウイルス」が世界を震撼させ、短期間で世界の政治、経済を根底から停止させたことだ。「中国発武漢ウイルス」は別の意味で新しい世界を作り出すための役割を果たしている。実際、欧州の政治家はポストコロナ時代について「新しい生き方」を国民にアピールしているほどだ。

まとめる。21世紀の今日、トランプ氏と中国ウイルス=中国共産党政権が覇権争いを展開させている。両破壊者は最終的には勝敗の決着をつけるため衝突せざるを得ない運命にある…。そういう聖書の「黙示録の世界」が浮かび上がってくるのだ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年6月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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