ブラジル大統領の権威は実質的に喪失。罷免は時間の問題

2020年06月06日 06:00

カルドソ元大統領(Wikipedia0

ブラジルで20年余り軍部が政権を左右したあと1985年から民主政権が誕生した。それから10年後の1995年に大統領に就任して2期政権を務めたフェルナンド・エンリケ・カルドソにジャーナリストのタレス・ファリアが4月にインタビューした内容が隣国アルゼンチンの電子紙『La Pólitica on line』にて掲載されたが、迷走するボルソナロ大統領の今後の行方を知る上で参考になるので以下に紹介しよう。(参照:notiar.com.ar

コロナウイルス感染が拡大して行くブラジルにあって、ボルソナロ大統領の言動にメディアを始め市民の間でも彼は精神的疾患があると言われるまでになっている。彼の政権運営に批判が強まっているのだ。一部議員や市民は彼の罷免を要求するまでになっている。

そのような事情下でファリアがカルドソ元大統領にインタビューして彼の私見を披露してもらった。ちなみに,カルドソとルラの二人の15年続いた大統領政権下でブラジルは高度成長を果たしたのである。

カルドソ「もう2回も罷免があった。それがもたらす影響は非常に複雑だ」

2回の罷免というのは1992年のフェルナンド・コロール・デ・メロと2016年のジルマ・ルセフ両大統領ことを指している。

カルドソ「政治構造が弱まっている。選ばれた大統領を解任させるのは非常に注意せねばならない」「今のところ(罷免させる)明白な動機は存在しない。憲法違反を犯したといった理由を探さねばならない」

カルドソ「個人的にはボルソナロを知らないが、彼が人の助言を聞く用意があるのか否かということだ。私は政治制度を尊重したい。しかも彼は大統領だ。ブラジルにとって良いのは大統領が自らの役目を理解して少し冷静になってもらうことだ。彼の粗雑な振る舞いは国家機能を停止させてしまうことになる」

カルドソ「ボルソナロが政権を担う条件を失うことになれば、副大統領がそれを担うことになる。私はハミルトン・モウラン副大統領には親近感をもっている。冷静な人物だ」「(米国での)会議期間中に彼を知る機会を得た。しかし、交代する時期が来たのかどうかまだ分からない」

この会議期間中というのは米国ハーバード大学でモウラン将軍と親交を得たという意味で、その詳細は不明だ。

ファリア:「大統領を罷免させる時期ではないというお考えか?」

カルドソ:「それにはまだ種々複雑な問題がある」「政権を担うための条件をなくした時はそれを放棄する。まだそのような場合になってはいないし、(罷免を)推進して行く方向にもない」「私は現実主義者だ。しかし、その時は来るはずだ」「他に選択肢がない場合は、憲法に則ることだ」「しかし、陰謀的な調整に私は参加したくない」「大統領を解任させようとすれば、まとまるのではなく分裂を生むようになる」

ファリア:「モウラン(副大統領)は良い大統領になるだろうか?」

カルドソ:「彼は賢く良識ある人物で、しかも経験も積んでいる。英語もかなり話す」

「いずれにせよ、彼が大統領に成るとは思わない。そうであるなら、それを考察する必要がある。大統領に成ることは容易でないからだ」

カルドソ:「議会が彼(ボルソナロ)を批判し、メディアも批判し、市民が抗議活動を行えば、もうそれをやるしかなくなる」

カルドソ:「ブラジルは軍人ではなく政治家のリーダーシップを望んでいる。政治家によるリーダーシップが欠如している場合はどうすればよいのか。その場合はボルソナロに代わる正当な後継者は(副大統領の)モウランだ」

このインタビューが掲載された翌日の4日には同紙は、コロナウイルス感染拡大が続く限りブラジルの最高作戦指揮は大統領府官房庁長官ブラガ・ネト将軍が担うことが国防相、陸・海・空の最高指揮者の間で合意されたことを報じたのである。ネト将軍はまだ2月に入閣したばかりであるが、影響力のある人物だ。現在22人の閣僚の中で軍人が9人もいるというのは異常だ。

ボルソナロ大統領(Wikipedia)

この最高作戦指揮は本来はボルソナロ大統領が行うはずである。ところが、ボルソナロは封鎖に反対し、またそれを行動で示している。例えば、ドーナツを食べると言ってマスクもせず外出しパン屋の店員と一緒に写真を取ったりしたのが大々的に報じられた時があった。封鎖し相手とも一定の距離を保つといった世界保健機構の助言を彼は全く無視しているのである。(参照:clarin.com

同様にボルソナロは上院と下院での信頼も失っている。上員と下院の議長がそれぞれボルソナロと会談をもつことを拒否してマンデタが保健相だった時に彼の封鎖プランに協力したことがあった。(参照:lavanguardia.com)。

これが示すものはボルソナロは大統領としての信頼を完全に失っているということである。彼が罷免されるのは時間の問題であろう。何れにせよ、2022年の任期満了まで彼が大統領として存在し続けることは殆ど不可能であろう。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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