いまさら大根仁監督作品 福山雅治主演『SCOOP』を観て考えたこと

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空前の大根仁マイブームで。まだ見ていなかった『SCOOP!』をアマゾンプライムで観る。うん、大根仁作品最高の出来というわけではないし、たぶん、『バクマン。』や『モテキ』ほど売れたわけでも、話題になったわけでもないと思うけど、私は好き。

なんせ、主演が福山雅治で。アサヒスーパードライを飲む様子にニヤリとしたり。この作品での彼は、速水健朗さんに見た目がそっくりで。言動も少し似ており。渋谷直角→大根仁作品での、速水健朗モチーフ説がまた浮上したり(案野丈ね。もっとも、速水さんご本人からそうではないというお返事を頂いたが)。

福山といえば日本を代表する俳優、歌手である一方、下ネタ好きでも知られ。この作品では、昔のラジオの彼そのまんまの言動で。新型コロナウイルスショックで、以前ではむしろ普通だった「三密」な光景を見てハラハラするようになったのと同様、「でも、これ、いいのかな」と思うセリフ、シーンが多々あったり。

まあ、映画というクローズドな世界だから、アリなのか。昔のプロレスファンにしか(いや、彼らにも)通じないネタだが、前田日明風にいうと「福山雅治なら、何をやってもいいのか」と言いたくなったりもする。

まさにスクープ誌の現場を描いたものなのだけど。『WORST』のセリフじゃないけど「最低だけど最高」な世界がそこにはあり。芸能人というか著名人の恋愛にはまったく興味がわかないし、もっというと昔から周りの友人や、職場の恋愛にもあまり興味がない人なのだけど(そういえば、今の勤務先も、仕事上で密接な接点がある教員と職員に同じ名字の人がいて、夫婦だと気づくのに5年かかり、その件で周りが呆れるの巻、とかね)。とはいえ、情報をゲットするのに、熱い人という姿勢に、いちいち感動したり。

そういえば、『噂の眞相』の熱心な読者だったことを思い出し。いまだに、最終号やムックは手元にあり。様々なトラブルを巻き起こしてきた雑誌だけど、いくつか時代を動かすスクープを連発したのもまた事実であり。それは『朝日新聞』よりも『週刊文春』が政治家の首をはねている現状にも言えることであり。

事実に対するこだわりという点で、スキャンダリズム、センセーショナリズムを追求する媒体は決して馬鹿にできないなと思った次第。そして、そこには想像を絶する努力がある。

何度もジャーナリズムには失望してきたけれど、その原体験といえば、2002年から2004年にかけてトヨタとリクルートの合弁会社の広報を担当し。両社に対する注目が集まっていた時期でもあり、数々の記者やジャーナリストと接点があったが。その際に、「最低な人」と何度もあったことが原体験としてあり。「○○さんに載った記事とまったく同じ内容を、僕に話してくださいよ」と「コスパ良すぎだろ」「プライドないのかよ」という取材をする全国紙記者とかね。

一方、骨太な記者、ジャーナリストと向き合ったことは原体験ではあり。日経一面にポジティブな内容で載ったことがあるのだけど、それは顧客経由でフィジビリティの情報が漏れた件で。こちらも脇が甘いのだけど、取材力に感動されたり。あと、広報としてこちらとしての公式の見解を伝えたところ「そんあわけがないだろう!」と大御所ビジネス誌編集長に一喝されたり。

典型的な「昔はよかった」「俺は若い頃頑張っていた」話になっていたけれど。世の中を動かす事実へのこだわりをメディアが忘れたら終わり。そんなことを考えた。


編集部より:この記事は千葉商科大学准教授、常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2020年6月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。