ネット誹謗中傷を扇動した権力者の責任をどう問うか

2020年06月08日 20:00

政策工房は髙橋洋一氏が代表取締役会長、私(原英史)が代表取締役を務める会社だ。これをツイッター上で誹謗中傷した匿名アカウントがあった。6月8日、東京地裁に仮処分申立てを行い、発信者情報開示請求の手続きに入った。

このアカウントでは5月27日、持続化給付金の業務委託問題と絡め、「何か#政策工房みたいですねー。経産省案件ですし」と述べた。文面上も引用記事の文脈(持続化給付金に関して、経産省と業務受託した協議会の不適切な癒着関係を追及する内容)からも、政策工房が不正や経産省との癒着により不当な利益を得ているとしか読めない。

また、同じアカウントの6月2日のツイートでは、私や高橋氏の名前・写真、会社の住所などを記載した図を掲載した。この図は、国家戦略特区を巡り、私、高橋氏、政策工房などの関わる壮大な利権構造があると示そうとするものらしい。ツイート文面では「一民間人の分際で国の切り売り/国民窮乏化政策にせっせと加担して利益を稼ぐような人間が政策決定に携わっている」とも記載している。

これ以外にも、ツイートないしリツイートで、(私などの顔写真の掲載された同じ図を示して)「レントシーカー達」、(不正な利益誘導がなされているとの文脈で)「政策工房スキーム」、「政策工房の利益誘導うぜえ」、「政策工房をぶっ壊す!」などと誹謗中傷が繰り返されている。

事実無根の誹謗中傷を行ってはいけない。発信者情報が開示された後、この匿名アカウント主には法的責任をとってもらう。

ただ、このアカウントが無用に攻撃されて炎上するようなことは本意ではない。事実無根の誹謗中傷はダメだが、批判を含む言論活動は今後も大いにされたらいい。このため、アカウント名は敢えて明らかにせず、黒塗りした。

匿名アカウントの誹謗中傷は問題だ。だが、もっと重大な問題は別にある。

ネット上の誹謗中傷がなぜ起きたかというと、これを扇動した人がいるからだ。私が不正行為を行っているとの虚偽情報をばらまき、実質的に誹謗中傷を扇ってきたのは、森ゆうこ参議院議員毎日新聞だ。

森議員は、昨年10月の参議院予算委員会で、私の顔写真を掲載したパネルを掲げ、私が不正を行ったかのように繰り返し、挙句に「国家公務員だったら、あっせん利得、収賄で刑罰を受ける」と発言した。事実無根だと繰り返し指摘したが、森議員は訂正も謝罪もしていない。森議員の懲罰を求め国会に請願も行ったが、請願は握りつぶされ、森議員の発言は国会議事録に残されたままだ。

また、匿名アカウント主が6月2日に掲載した図は、森議員が以前リツイートして拡散したものだ。森議員は、拡散だけでなく、図の作成者と思しきアカウント(上記の匿名アカウント主とは異なる)に向け、私に関する記載を追加するよう示唆まで行っている。より直接的なネット誹謗中傷の扇動といってよい。

(注)以上のツイートは現時点でも公開されているが、その中に記載されている他のアカウント名は、前述したのと同じ考慮で黒塗りした。また、図の中に記載される当社の住所は一般に公開しておらず、こうして拡散されるのは迷惑なので黒塗りした。

さらに遡ると、根源は毎日新聞だ。同紙は昨年6月、私が国家戦略特区ワーキンググループ委員の立場を利用し、提案者から会食接待を受け、金銭を受け取ったとの記事を掲載した。事実無根なので、私は精緻に反論し、さらに訴訟も提起して係争中だ。訴訟過程で毎日新聞は、記事に過ちがあったともうわかっているはずだが、いまだに訂正していない。これが、その後の一連の誹謗中傷をもたらした。

国家戦略特区 政府ワーキンググループ委員関連会社 提案者から指導料200万円、会食も(毎日新聞2019年6月11日)

このように誹謗中傷を実質的に扇動した者には、単に誤報を信じて煽られただけの者より、重い責任が問われるべきだ。ところが、現実はそうなっていない。国会議員やマスコミなどの権力者たちの扇動行為は、免責ないしそれに近い状態だ。

国会議員の場合、憲法上、国会内での発言には免責特権がある。民事でも刑事でも責任を問われることがない。森議員に関しては、ネットで私の自宅住所をさらすなど、国会外での不法行為があったため、私はこれを捉えて訴訟提起している。しかし、本丸の国会内の発言は対象にはできない。

また、マスコミの場合、制度的な免責特権こそないが、今の名誉毀損訴訟の仕組みは、実質的には“免責”同然だ。名誉毀損で認められる賠償額は一般にごく低水準だ(西口元ほか編著『名誉毀損の慰謝料算定』によれば、2003~2014年に新聞・テレビに認められた慰謝料は50~300万円)。大マスコミにとっては、負けても痛くもかゆくもない。

しかも、判決確定には時間がかかる。明らかな誤報でも、しばらく頬っかむりしていればその間に被害者は社会的に葬り去られる。おそらくそう思って高をくくっているので、私のケースでも毎日新聞は決して訂正しようとしない。

これが、今の日本の仕組みだ。国会議員やマスコミは、安全地帯の内側で悠々と誹謗中傷を扇動できる。被害者が反撃しても、痛い目にあうのは彼らではない。扇動に乗せられネット誹謗中傷を行った無名の個人だけだ。

この仕組みを糺さなければ、ネット誹謗中傷の問題は解決できない。私がすでに公開した論考で、「免責特権の見直し」、「名誉毀損訴訟の改良」、「新聞協会でのADR創設」などを提言しているのは、このためだ。

ネット誹謗中傷:不幸を繰り返さないため検討すべきこと

木村花さんの不幸な事案も、構造は同じだ。

ネット誹謗中傷はたしかに問題だった。しかし、それ以上に責任を負うべきは、番組を制作したテレビ局のはずだ。リアリティショーと称しつつ、炎上しそうな“事件”を演出し、放送でもネット上でも過剰に強調し、実質的にネット誹謗中傷を煽り、それで視聴率を上げてビジネスにしていたのはフジテレビだろう。

ところが、テレビ局の責任を問う声は小さい。国会議員や評論家たちはネット誹謗中傷にばかり目を向ける。結局、国会議員も評論家たちも、テレビ局を敵に回したくはないからだ。ここでも、本当に責任を負うべきテレビ局は“免責”だ。

煽られた人たちを叩くだけでは、問題は解決しない。免責の壁に守られネット誹謗中傷を煽ってきた権力者たちの責任をどう問うか。本当の難題はこちらだ。

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原 英史
政策工房 代表取締役社長

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