年金は「貯金」ではなく、長生きに備えた「保険」です

年金改革法が5月29日に成立しました。
年金については今受給している人も、そして毎月の給与からも年金保険料を引かれて払っている人にとっても、いずれも関心が高い話ですね。

今回の改変では、パートなど短時間労働者の加入要件を段階的に緩和し厚生年金への加入が拡大されたり、公的年金に加えて入れる企業型確定拠出年金(DC)や個人型のイデコの加入条件がそれぞれ5歳引き上げります。ニュースを聞いていると、「国民の老後を安定させるために」、すなわち「国民のために」と言わんばかりに聞こえますけれども、今言ったように加入対象の拡大は、はっきり言って年金財政が厳しいからということもあり、年金保険料を納める人を増やそう、年金受給年齢を遅らせようという変更です。

よく若い人と話してると、決まり文句のように「どうせ俺たちは年金もらえないでしょ」と言うような話を聞くんですけれどもそれはありません。必ず貰えます。ただ問題は、それで生活ができるかということと、受給時の物価に照らした時にどれくらいの水準にあるかということです。法律で年金は入らなければいけませんし、入っていた方がいいと思います。さて、問題はいつから受給を開始するかということです。

会社の定年も55歳だったり、平均寿命も短かった一昔前は、年金を60歳から堂々ともらえました。今も60歳から貰えますが、60歳から70歳まで開始年齢を自分で選ぶこともできます。しかし、今回の改変で受給開始年齢を75歳まで繰り下げることが出来るようになりました。

貰えるものは早く貰った方がいいと思うかもしれませんが、60歳から64歳までの5年間は貰えますけど受給額が減額されます。65歳から1カ月繰り上げるごとに0.4%減額され、60歳から受給開始をすると24%減額されてしまいます。それは「まだ働けるでしょ?」という意味ですね。今、企業の定年を70歳へと移行しているわけですけれども、先ほどとは逆に受給開始を1カ月繰り下げるごとに0.7%増額されます。例えば65歳からもらうということに比べて、70歳からは42%増し、75歳から84%増しの年金受給額になります。仕組み上は65歳から貰うのがスタンダードで、それより早くもらえれば減額、なるべく遅らせれば増額ということです。

また、働き続けながら年金をもらうこともできます。ただし、両方合わせて一定額以上になった場合は年金が減額されます。
例えば、今までは65歳未満(60~64歳)の人は、給与と年金を合算して月28万円以上になると年金が減り、65歳以上は月47万円以上になると年金が減ります。今後は
「もっと働けるでしょ」なのか、「もっと働け」ということなのかわかりませんけれども、全年齢で月47万円以上の基準に統一されます。

さて、我々は俗に「年金」と呼んでいますけれども、これ実は年金保険なんです。ですから年金保険料を納めると言います。同じ保険は保険でも、生命保険は働きたくても働けなくなった時の万が一に備えて入っておく保険です。一方、年金保険は働けなくなったけれど、生きている、まだ長生きすると、こういう万が一のために入っている保険です。

すなわち、いつでも保険も働けるうちは働いて、貰わないで済むなら貰わないでいいかと考えておくことなんです。実は貯金じゃなくて、あくまで保険なんです。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年6月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。