スペインで食料配給の列に並ぶ人が急増

2020年06月10日 06:00

コロナウイルスのパンデミックはスペインで経済の後退を誘い、貧困層が急増している。休業補償を受けている被雇用者を失業者(政府は休業補償の受給者は失業者ではないとしている)として加えると、スペインの失業率はおよそ35%。それに含まれない地下経済で働いていた200万人を加えると、スペインの現在の労働事情は1939年まで4年間続いた内戦以来の最悪の状態にあるという。

外出が制限される中、自宅から医療関係者に拍手を送るマドリードの人々(Ivan Castillo Otero/Flickr)

これまで経済が後退した時の逃げ場は地下経済で働くことであった。ところが、今回のパンデミックでは地下経済も同様に多大の被害を受けているということで、地下経済で働いていた者も多くが職を失っている。

スペインは元々EU加盟国の中でギリシアに次いで失業率が高い国だ。2013年には失業率は25%を超えた月もあった。それを更に10%上回ったのが現在の労働事情である。

例えば、マドリード市内のプエンテ・デ・バジェカ地区は23万人が住んでいるが、低所得者層が集まったこの地区ではパンデミックの前に既2万人が失業していた。非常事態の発令以後は職場を失った者が多くいる。一部の住民はお金がなく3月からスーパーに買い出しに行っていない人もいる。

ベネズエラから移民で来たマヌエル・カスティーリョは、夫婦で食べないこともあるそうだ。子供は何とか食べ物を口にしていると言っている。彼は月に800-900ユーロ(94000円―106000円)を稼いでいたが、封鎖で3月は収入はゼロだという。彼らの場合は借家の家賃などを支払うとゆとりある生活は全くできない。しかも、それに加えて収入がゼロになるというのはきつい。(参照:elpais.com

この問題を取り上げたテレビ局ラ・セクスタはマドリードで最も貧困層の多い地区の一つアルーチェ地区で食料の配給を待つ市民の長蛇の列を報じた。その長蛇の列が日に日に長くなっているそうだ。そこではボランティア市民が組織して418日から土曜と日曜に食料を配給している。食料の中身はマカロニ・パスタ、野菜、リンゴ、インゲン豆、スイカ、ジャガイモ、ミルク、小麦粉、ベーコン、食用オイル、鶏肉などである。食料品取扱業者、卸市場などからの寄付によるものだという。それに市民からの寄付が10-15ユーロから始まって1000ユーロとか集まった寄付で業者から更に食料を購入しているという。1週間に9000ユーロ(100万円)が寄付で集まる時もあるそうだ。

彼らが強調しているのは市役所など関係当局からは一切支援を受けていないということだ。(参照:elmundo.esこれは公的機関が彼らの慈善活動を無視しているというのではなく、例えば、市役所も別な形で貧困層の救済を行っている。

パンデミックによる封鎖もあって列に並ぶのは各世帯を代表した一人だが、当初並んだのは263人であったという。それが口コミで次第に広がり、その翌週には416人、520人、700人という具合に毎週並ぶ人が増えて行ったそだ。現在1050世帯を登録している

主催者側では6月になってこの配給の継続が難しくなっている。というのは毎週列に並ぶ人が増えるが、資金がそれについて行けないからだ配給する場所の電気代や水道代も払わねばならない。

アルーチェ地区でのボランティア活動と同じように、小さな聖ラモン・ノナト教会でも食料を配給している。こちらは毎日の支給で、パンデミックの前までは600人が駆けつけていたが、今では2倍の1300人まで増えているそうだ。

管理者のアルベルト・ベラの控え帳によると、7割はラテンアメリカ人で3割がスペイン人だということだ。(参照:elpais.com

マドリードのフードバンクでも3月は15万人、封鎖以後は19万人に食料を支給しているという。ストックとして3カ月分を用意していたそうであるが、食料を求める人たちの急増でストックも近く底をつくようになると懸念している。

マドリード市内同じくウバ・デ・バジェカの聖ファン・デ・ディオス教会で食料を支給している神父ゴンサロ・ルイペレスの場合は以前は1600世帯に食料を支給していたのが、現在は2400世帯まで増えているそうだ。ルイペレス神父は携帯電話を2つ持っている。彼に助けを求めて頻繁に電話をかけて来るからである。教会7万キロの食料を用意していたが、3月は3万キロを支給したという。

「誰か盗みで入られたことがありますか?」と取材で尋ねられた時に、神父は「一度もない。ある人が一度『神父、ご心配なく。我々家族全員がどろぼうですが、ここにいます』素性を明かして協力する姿勢を示したそうだ。彼らも神父の活動に味方していることを伝えたかったようだ。

神父はだれかれ見境なく寄付を頼むそうだ。それも自分の為ではなく、貧困者を助けるためだから遠慮する必要はないという考えだ。それで先日もある人は6000リットルのミルクまた別の人は600個の玉ねぎをそれぞれ提供してくれたそうだ。(参照:elpais.com

貧困者層を救う活動はマドリードだけではなく、スペイン全国どこでも見かける活動だ。これからスペイン経済がますます厳しくなることは確かで、貧困層を助ける活動は更に必要になって来る。

ある人が言っていたが、閣僚彼らの歳費をひと月とか、ふた月とか寄贈して貧困層を助ける資金に使えるようにするというのも必要だと。いつも口先だけで立派なことをいう政治家も協力しているというお手本を見せるべきであろう。

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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