都知事選「山本太郎、出馬検討」はブラフかリアルか?

2020年06月11日 11:30

れいわ新選組Facebookより

れいわ新選組の山本太郎代表(前参議院議員)が出馬を検討していると毎日新聞が10日夕、報じた。複数の関係者をソースとしている。

山本太郎氏が都知事選へ出馬検討 れいわ新選組代表(毎日新聞)

執筆時点で朝刊各紙(紙の新聞)すべてを見たわけではないが、一夜明けて、毎日以外でこの動きを封じたのは大手メディアではスポーツ紙だけというあたり、実際に出るのかまだ微妙なところなのかもしれない。

というのも、山本太郎氏の「広報ライター」でおなじみ、田中龍作氏のブログがいつもの提灯持ち一辺倒の論調とずいぶん違うからだ。毎日新聞の初報が「自分の後追い」だったと豪語している割に、その「スクープ」は、山本氏の支援者周辺からも、左派陣営で先に名乗りを上げている宇都宮健児氏との票割れを懸念している声を率直に伝えている。物好きな人だけ読めばよいが、タイトルもずばりだ。

【都知事選】コアな支持者がこぞって反対する「山本太郎出馬」

宇都宮健児氏ツイッターより

宇都宮氏は2012、2014年でともに90万票超を獲得して次点。いまのところ、小池知事以外の有力候補としては、得票「実績」では安定したものがある。前回2016年選挙で、鳥越俊太郎氏を推して、宇都宮氏に出馬を断念させた共産党や社民党が、そして、野党第一党なのに独自候補擁立できなかった立憲民主党が「どの面を下げて」か支援を決めており、今回も出馬をすればそれなりの得票は見込めていたはずだった。

ただ、小池氏が「日本のサンダース」と持ち上げた宇都宮氏も齢73。旬を過ぎた感は否めず、強すぎる左派色もあって、前回並みに躍進なるかは微妙なところだった。そこへ昨年の参院選で立憲から若者層の支持を横取りした、れいわ新選組の参戦となれば、しかも元俳優で著名人の党首自らが出馬するとあっては、無党派層への浸透ぶりは宇都宮氏の比ではない。情勢調査をするまでもなく、票割れの可能性は高い。

昨年の参院選都内の比例票で、主要な左派勢力はトータルで約220万票(立憲102万、共産65万、れいわ45万、社民10万)。小池氏が史上最高得票(433万)超えを窺う情勢ともされる中、これらの支持票が2人のどちらかに全てを入れても小池氏の得票の半分に達するかどうかだ。仮に山本氏が出るとすれば、当然のことながら秋に衆院選があった場合をにらんだ党勢拡大が狙いであることは自明の理だろう。

とはいえ、選挙は単純な数字の足し引きだけでは決まらない。人の感情で動く要素は小さくない。山本氏が出馬してしまうと、前回、出馬断念に追い込まれた宇都宮氏の支持層から恨みを買うのは必定だ。

政界関係者によると、立憲民主党などは焦ってすでにれいわ側に対し、宇都宮氏への一本化に向けて交渉に入っている模様だ。そうした情報を聞くにつれ、衆院選に向けて、左派勢力間で微妙な断層があることが改めて浮き彫りになる。

もし今回の報道が山本氏サイドのリークによる「観測気球」だとすると、今後の政局で有利に事を運びたい駆け引きの一環なのかもしれない。音喜多君が書いているように衆院選の選挙区調整での取引材料にはなりえよう。

また、これは誰も指摘しないが、れいわは政党要件を満たしているとはいえ、軍資金は(既存政党に比べて)決して潤沢ではない。党本部は赤坂見附の立派なところにあるものの、都知事選でそれなりの得票を狙ってキャンペーンをするとなれば、参院選並みのリソースを投下せざるを得ない。

東京・赤坂のれいわ新選組党本部(編集部撮影)

衆院選で各地に候補者を擁立し、供託金くらいはそれぞれ用立ててやるとしても、小選挙区と比例の重複立候補なら1人だけでも900万円かかる。10人規模の当選をめざして30人擁立なら2億7千万円。れいわの政党交付金は昨夏と年明けの支給分を合わせても約2億2千万円だから「赤字」だ。

これに参院選に際して山本氏が集めた4億超とされる個人献金があって、半分程度を残しているとしても、選挙は供託金以外にその数倍の経費(事務所家賃、人件費など)がかかる。そういう台所事情なので、都知事選参戦は「広告宣伝費」と位置付けたときの投資対効果をどう判断するのだろうか。

出馬情報は果たしてブラフかリアルか。左派政局の動きは、都民の生活にはほとんど無意味なコップの中の嵐に過ぎまい。

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新田 哲史
アゴラ編集長、報道アナリスト

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