習近平主席の狙いは「宗教の中国化」

2020年06月12日 11:30

中国共産党政権下で宗教の弾圧が進行中だ。米国務省は10日、「信教の自由に関する年次報告書」(2019年)を発表し、習近平国家主席は宗教弾圧を組織的に実施してきていると警告している。

▲法輪功メンバーたちのデモ行進(2015年9月19日、ウィーン市内で撮影)

▲法輪功メンバーたちのデモ行進(2015年9月19日、ウィーン市内で撮影)

現地から流れてくる情報によると、キリスト教会の建物はブルドーザーで崩壊され、新疆ウイグル自治区ではイスラム教徒に中国共産党の理論、文化の同化が強要され、共産党の方針に従わないキリスト信者やイスラム教徒は拘束される一方、「神」とか「イエス」といった宗教用語を学校教科書から追放するなど、弾圧は徹底している(中国共産党政権が宗教弾圧する理由」2019年7月9日参考)。

同時に、法輪功メンバーへの拷問、臓器強制摘出など非人道的な弾圧は今も続けられている。法輪功情報サイト「明慧網」が今月4日伝えたところによると、中国で今年1~5月末にかけ、法輪功メンバー27人が拷問などで死亡し、107人が不当判決を受けたという。

海外中国メディア「大紀元」独語版は10日、「大紀元」中国版が入手した内部情報に基づき、法輪功メンバーを弾圧するために1999年に創設された「610公室」の実態を詳細に報じている。

「610公室」については、このコラム欄でも数回紹介した。中国国内で1990年代、気功集団「法輪功」が急増。1999年の段階で1億人を超えていた。法輪功の増加を恐れた江沢民国家主席(当時)は法輪功を壊滅する目的で「610公室」を創設した。

「610」という数字は同公室が1999年6月10日に設立された日付から由来する。旧ソ連時代のKGB(国家保安委員会)のような組織だ。法輪功メンバーの取締りを目的とした専門機関だ(「中国の610公室」2006年12月19日参考)。

法輪功は宗教ではない。心と体のバランスを維持する上で役立つ修練法といわれる。貧しい国民だけではない。共産党幹部たちも法輪功に惹かれ、トレーニングする者も出てきた。李洪志氏が中国伝統修練法の法輪功を世界に広げ、現在、世界100カ国以上にメンバーを有している。

米政府系放送局のラジオ・自由アジア(RFA)が昨年5月16日、平壌在住の消息筋の情報として、北朝鮮の平壌でも「法輪功」が急速に拡大し、北当局はその対応に乗り出しているというほどだ(「平壌で『法輪功』が急速に拡大」2019年5月22日参考)。

「610公室」は現存の法体制に縛られない超法的権限を有し、「610公室」のメンバーは国内だけではなく、海外の中国大使館にも派遣され、西側に亡命した法輪功メンバーの監視に当たっている。

当方は2005年11月3日、 シドニー中国総領事館の元領事でオーストラリアに政治亡命した中国外交官の陳用林氏(当時、37歳)と会見したことがある。同氏は「610公室」のメンバーだった。

陳用林氏は、「自分の任務はオーストラリアに居住する中国人を監視し、反政府活動する中国人の言動を北京に報告することだった。私は気功集団『法輪功』信者の監視を担当した。私のシドニー駐在中、約3万人の法輪功信者が当時、中国で収容所に入れられていると聞いたことがある」と証言した。(「江沢民前国家主席と『610公室』」2011年7月13日参考)。

法輪功メンバーへの弾圧は非人道的だ。法輪功メンバーの臓器を生きたまま取り出し、共産党老幹部に移植したり、一部の富豪者に高額で売っている。2000年から08年の間で法輪功メンバー約6万人が臓器を摘出された後、放り出されて死去したというデータがある。

中国の不法臓器摘出の実態を報告したカナダ元国会議員のデビッド・キルガ―氏は、「臓器摘出は中国で大きなビジネスだ。政府関係者はそれに関与している」と述べ、法輪功メンバーの家族が遺体を引き取った際、遺体には腎臓などの臓器が欠けていたという。

2012年に権力の座に就いた習近平主席は一時期、大きな影響力を持ってきた「610公室」の弱体化を図ったことがある。同主席はここにきて「宗教の中国化推進5カ年計画」(2018年から2022年)を実施してきた。

「宗教の中国化」とは、宗教を完全に撲滅することは難しいと判断し、宗教を中国共産党の指導の下、中国化すること(同化政策)が狙いだ。その実例は新疆ウイグル自治区(イスラム教)で実行されている。100万人以上のイスラム教徒が強制収容所に送られ、そこで同化教育を受けている。キリスト教会に対しては官製聖職者組織「愛国協会」を通じて、キリスト教会の中国化を進めている、といった具合だ。

習近平主席は、「共産党員は不屈のマルクス主義無神論者でなければならない。外部からの影響を退けなければならない」と強調する一方、「宗教者は共産党政権の指令に忠実であるべきだ」と警告している。具体的には、キリスト教、イスラム教など世界宗教に所属する信者たちには「同化政策による中国化」を進める一方、法輪功のように中国発の伝統的な心身向上・倫理運動に対しては身体的な迫害、拷問を駆使して団体・運動の解体を進めるなど、硬軟織り交ぜた政策を実施している。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年6月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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