世界に広がる「反中包囲網」

2020年06月14日 11:30

中国湖北省武漢市で昨年末、新型コロナウイルスが発生し、半年以上が経過した。世界で11日現在、750万人以上が感染し、42万人余りの死者が出る世界的大流行(パンデミック)となったが、中国共産党政権は新型コロナの初期感染の事実を隠蔽してきたことが明らかになった。それを受け、世界的に中国の責任を追及する声が高まってきた。

それに対し、中国側は新型コロナは米軍が中国に持ち込んだものだといった偽情報を世界に拡散し、中国批判をかわすため積極的な外交を展開してきた。

中国の外交攻勢に対し、欧米を中心とした「反中包囲網」を構築する動きが出てきた。日本を含む8カ国の国会議員と欧州議会議員は今月4日、中国共産党に対抗するため、超国家組織「対中政策に関する列国議会連盟(Inter-Parliamentary Alliance on China、IPAC) 」を立ち上げたばかりだ。

IPACの各国議員。日本からは中谷元氏、山尾しおり氏が参加(公式サイト

それだけではない。デンマークの首都コペンハーゲンで今月18日から2日間の日程でラスムセン元デンマーク元首相が組織した「自由同盟」主催の「コペンハーゲン民主サミット」が開催される。そこではポンぺオ米国務長官が「中国の西側への挑戦」と題した基調演説をするほか、台湾の蔡英文総統や香港の民主運動の指導者・黄之鋒氏、ジョン・ケリー氏やオルブライド女史など歴代米国務長官らの参加が予定されている(会議は主にビデオ会議形式で行われる)。

IPACにはオーストラリア、カナダ、ドイツ、日本、ノルウェー、スウェーデン、英国、米国と欧州議会の議員らが参加している。IPAC広報担当者サム・アームストロング氏は、「民主主義国および自由な世界に対する最大の脅威は共産党主導の中国である」、「連盟は各国国会議員が、より強固な対応が必要であると自国政府に明確に伝えるために存在している」と、組織の目的を明確に述べている。

具体的には、①国際的なルールに基づく秩序の保護、②人権の擁護、③貿易の公平性の促進、④安全保障の強化、⑤各国国家の主権保護の5分野だという(「海外中国メディア「大紀元」6月10日)。

新型コロナの影響で開催が9月に延期された7カ国主要首脳会談(ホスト国米国)では中国を批判する「共同声明」が採択される運びだ。中国共産党政権は先月28日、北京で開催された第13期全国人民代表大会(全人代)第3回会議で、反体制活動を厳しく取り締まる「国家安全法」を香港にも適応する方針を決めた。

それに対し欧米諸国はすばやくこれを批判する「声明」を出したばかりだ。ちなみに、日本は加わらなかったが、G7サミット会議で採択予定の共同声明には参加する方針といわれ、欧米と日本の主要国が「反中国」で足並みをそろえることになる(習近平国家主席の訪日問題にも影響を及ぼすことは必至)。

中国共産党政権は習近平主席の新シルクロード「一帯一路」を通じてアジアから欧州、アフリカまでを網羅した中国主導の大経済圏の構築に全力を投入してきた。欧州ではイタリア、ハンガリーが中国に急傾斜し、バルカンではセルビアが中国との関係を深めるなど、中国の「欧州の分断」工作は既に成果をもたらしてきた。

ジグマ―ル・ガブリエル氏(当時独外相)は習近平主席が推進する「一帯一路」構想に対し、「民主主義、自由の精神とは一致しない。中国はグローバルなリーダーシップを発揮し、民族主義、保護主義の復活を刺激し、世界の秩序に大きな影響力を行使し、欧米の価値体系、社会モデルと対抗する包括的システムを構築してきている」と主張し、「現代で中国だけが世界的、地政学的戦略を有している」と警告を発している。すなわち、中国が世界支配のビジョンに基づき様々な統一戦線を実施している唯一の国だという事実だ(「『中国共産党』と『中国』は全く別だ!」2018年9月9日参考)。

中国共産党政権は欧州では動物園へパンダを贈る一方、「孔子学院」の拡大を主要な戦略としてきた。「孔子学院」は2004年、海外の大学や教育機関と提携し、中国語や中国文化の普及、中国との友好関係醸成を目的とした公的機関だが、実際は一種の情報機関だ。

一方、通信関連大手ファーウェイ(華為技術)で5G(第5世代移動通信システム)網を拡大し、「一帯一路」で経済・軍事分野での中国の影響を拡大してきている(「『孔子学院』は中国対外宣伝機関」2013年9月26日参考、「ファーウェイはどれだけ危険か?」2019年1月31日参考)。

中国の著名な反体制派活動家(米国亡命)魏京生氏がIPACの人権担当メンバーに(2005年6月、ウィーンで撮影)

なお、共産党政権の長年の反体制派活動家だった中国の魏京生氏がIPACの人権担当としてメンバー入りしていると聞いて嬉しく思った。当方は2005年6月、ウィーンを訪問した魏京生氏と会見し、当時エスカレートしていた反日暴動デモの背景、天安門事件16周年目を迎えた同国の民主化問題などについてインタビューしたことがある。

同氏は「人権や民主化が欠如する中国に対して抗議すべきだ。それは、中国国民の利益になることだ。国際社会が中国共産党政権と良好な関係を模索すれば、中国国民は引き続き弾圧されることを意味する」と強調した。あれから15年が経過したが、同氏の発言は今でも通用する内容がある。

同氏は1950年、北京生まれ。78年に民主化運動に参加。翌年に逮捕され、政治犯として強制収容所に。93年に仮釈放、955年に再逮捕、97年に仮釈放後、米国に亡命。通算18年間の収容所生活を体験した。サハロフ平和賞受賞者だ(「魏京生さんの思い出」2007年6月13日参考)。

世界第2位の経済大国となった中国共産党政権を敵に回すことは一国家、政府や党では難しい。そこでIPACなどの国際組織を創設し、国境および党派を越えた視点で戦略を立てる必要があるわけだ。

IPAC、「民主サミット」、そしてG7で反中包囲網が広がろうとしている。もちろん、中国側は欧米諸国の反中包囲網を静観していることはないだろう。必ず包囲網突破のために戦略を練っているはずだ。欧米日らと中国共産党政権との戦いはいよいよ本番を迎えようとしている。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年6月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

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