ドイツ通の松田学氏と『英仏独三国志』を語る(後編)

2020年06月16日 06:00

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イギリスはどうして形成されたか

松田:英仏独と三つ巴になっていますが、大陸ヨーロッパとアングロサクソン英国は少し違う位置づけのような気がしますが。

八幡:イギリスはヨーロッパの外延部ということなのでしょうね。感覚的に言うと仏独が日本でいう本土だとすると、沖縄くらいに英国が位置付けれるイメージですね。日本の本土とは違う歴史があるけども、他の国に比べると遥かに近い文化だよね、というあたりでしょう。

松田:そうですね。例えば、官僚が強い大陸ヨーロッパ系とアングロサクソン系は官僚は無能など国家の統治は根本的に違う感じがしますね。

八幡:そういう意味では英国人はどういう風に出来上がったかと言いますと根っこはケルト人なわけです。ケルト人の影響は大きく自然の庭園でイングリッシュガーデンなど自然が活かされていますね。それから、民謡や音楽ですね。

アイルランド人はなにかというと歌っている民族です。ビートルズで言えば、リンゴスター以外はリバプールのアイルランド系移民の子孫です。音楽だけでなく文学者もアイルランド系が多いですね。

八幡:その次にやってきたのがローマ人です。ロンドンなど都市を造ったりしたのが彼等ですね。例えば、マイルの語源はミーレというラテン語です。

そして次に来たのがアングロサクソン系の英国人ですね。英国人は男女間で奥手だと言われる。なのであまりフワフワした感じがしないでしょう。これはアングロサクソンの文化ですよ。或いは勇敢です。ハリーポッターなどでもそのあたりはよく出ていると思います。

あと、英国人の身体的特徴のイメージってどうですか?。」

松田:身体的特徴はスラっと背が高いイメージです。

八幡」手が長いです。野球で言うとピッチャーに向いています。ホームランバッターはドイツ人です。

松田:英国発祥のゴルフも手が長い方がいいですもんね。

八幡:そうそう。これがアングロサクソンです。

八幡:その次に来たのがノルマン人とかですね。この人たちは商業的な才能や、組織をつくる才能があって専門官僚としても向いている。だから、英国の場合は専門的官僚が多いです。政治かと一緒になったのではなく純粋に事務が得意です。これがノルマン人の特徴です。

そのノルマン人はフランスのノルマンディーで何世代か過ごしてから英国へやってきた。ノルマン系フランス人ですね。なので、英単語の6~7割がラテン語などからフランス語経由です。

フランスとドイツはなぜ欧州統一に向かう

松田:英国はそのように作られた国なのですね。

大陸では、昔はローマ帝国があり、クローヴィス1世が建国し、シャルルマーニュ(カール大帝)の後、3つに分裂して独仏伊ができて神聖ローマ帝国ができて。その後にはハプスブルク家のような汎ヨーロッパ的な王家もありました。そうした汎ヨーロッパ的な見方から何が見えるのか?

八幡:3つの国の関係では英国はさておき、シャルルマーニュ以前にフランク王国というゲルマン人の国がローマ法王様と話合ってカトリックになったので、公的に認めてあげましょうとなったのがヨーロッパの始まりです。

ただ、これが分裂していくんです。最初はヴェルダン条約で分割されて独仏伊ではなく東西と中フランク王国ができる。今でいうイタリアにスイス、プロヴァンス、仏独国境地帯でベルギーやオランダです。

これが早期に瓦解してしまう。その領土の仏独による取り合いがドイツ30年戦争、ナポレオン戦争、普仏戦争や二回の世界大戦であったわけです。その中で大雑把な図式では、西フランク王国というのがフランスになり、東フランク王国がドイツです。

東フランク王国のドイツの方が強くて中フランク王国の大半を併合してしてイタリアまで支配した。そして神聖ローマ帝国をつくりそこの皇帝となった。しかし、ドイツ諸侯に公選されたドイツの王はイタリアを抑える必要性がある。イタリアを抑えるにはドイツの諸侯の協力を得る必要性がある。イタリアを治めるためにドイツ諸侯に頭が上がらないことになった。

一方、西フランク王国は勢力は小さいが王様が強くて支配体制が確立している。これがヨーロッパの基本構造です。そして、ちいさいけれども強いフランス王国が台頭してウェストファリア条約、ルイ14世、ナポレオンの戦争を経て拡大して現在の国境ができあがる。

しかし、普仏戦争では分裂していたドイツをビスマルクが統一してプロシアがフランスに戦争を仕掛けてドイツを統一し、アルザス・ロレーヌ地方も奪ってしまった。それに反発してフランスがこれを取り戻したのが第一次世界大戦です。再度、ドイツが取り戻そうとしたのが第二次世界大戦です。ただ、流石に100年間のうちに3回もがちんこの大戦をすれば、これはいやだ馬鹿馬鹿しいとなりローベル・シューマンなどが元々の一つの国に戻った方がいいと考えて欧州連合模索に繋がった。」

松田:ヨーロッパの歴史はドイツとフランスの軸で展開していく。結局は双方が争いながらも二度と戦争をしない関係でEUを構築していく。所謂、戦後秩序で石炭鉄鋼共同体から始まるECなどを通じて戦後欧州の歴史が始まるわけですね。

ブレクジットを歴史から考察する

八幡:一方、英国はドイツとそこまで関係性は深くなく、フランスのノルマンディ公というのは、日本の感覚でいうと帰化人が九州で大名になったようなものです。例えば、戦国時代の大内氏は百済だし、長宗我部や島津氏は秦氏です。大内氏や島津氏が朝鮮半島に侵攻してのっとったらというイメージなのがいまの英国ですよ。

松田:なるほど、そういうことですね。

八幡:それで英国の王様はフランスの王様になりたいと言ったが、フランス側はそれは駄目だと。百年戦争です。しかし、そのうちに諦めて独自に発展した。エリザベス女王のあたりでフランス王になることを放棄して、英国王として仏独への対抗を目指す。そして大英帝国になる。その後、第一及び第二次世界大戦を通じてドイツが強くなりすぎるの抑えた。

ただ、今度は仏独が一緒になったので英国はズルいと感じた。とはいえ、EUに参加表明をしたが、主導権は仏独にあり、悔しくて離脱したのがブレグジット(英国欧州離脱)です。

松田:国家間でそのように育まれてきた感情があるねすね。

八幡:もう一つは英国でヨーロッパの外から来た人が増えた。例えば、ダイアナ妃にはインド人の血が入っている。英国王室にはムハンマドの血が入っている可能性がある。ボリス・ジョンソン氏は曽祖父がオスマン・トルコの大蔵大臣(内務大臣)の子孫でケマル姓で、英国人女性と婚姻した。そして、祖父がお母さんの名前をとってジョンソン氏となった。

松田:大英帝国になった時に世界中と交流していたんですね」

八幡:そこで英国はヨーロッパ的な国でなくなった。」

松田:今回ブレグジットで英国がEUを離脱しましたが、最近の話題で恐縮ですが、どのように捉えていますか?

八幡:私はプラスだと言っている。英国の反対で進まない話があったので仏独でEUを仕切って。英国を近くのお友達として扱った方が、結果的に良いのではないだろうか。元々はドイツ語とフランス語で十分であったので英語も必要になってしまったし。

松田:私もドイツにいましたので、それはわかります。」

八幡:おまけで言うとドイツは東西ドイツの台頭で言葉について考え方を変更してしまった。それは単語で言うとドイツ語はゲルマン語とラテン語が入り混じっている。つまり、ゲルマン語は日本でいう大和言葉、ラテン語は漢字言葉です。基本的に漢字を公式の場で使用していた。しかし、東西ドイツ統一後にゲルマン起源の言葉を使うようにお達しが出た。

EUの事務局でドイツ人が、日本でいう大和言葉で文章を書くので、要するに外国語に訳せない。法律などは基本ラテン語ですよね。これであれば英語でもフランス語でも変換可能だが、大和言葉であれば変換は容易ではない。そういう意味でもドイツも独自性を主張し始めている。」

松田:ユーロがどうなっていくのか?そもそも金融政策と財政政策がバラバラで果たして本当にうまく行くのか?

八幡:おそらく制度が破綻しそうになると纏まる。ギリシャ通貨危機のような状態に瀕すれば話しはまとまる。今回では、ユーロ債ではないが、EUとして借金をすることが数日前にマクロンとメルケル会談で決定した。これは全会一致の必要性はあってオーストリアが反対しているが、通るだろう。

1993年のマーストリヒト条約締結以降、20数年が経過してなんとかもっている。英国もユーロに参加していれば離脱は不可能であった。ユーロ圏は簡単には崩れない。

アメリカはドル使用者に規制をかける。その状態を続けるとユーロに移行する人々は増えるのではないだろうか。ドルを使う限りファーウェイ(華為)と取引禁止といわれれば従わざるを得ないが、損なことを繰り返していくとユーロに流れていくだろう。

松田:EUはそうした意味ではグローバル秩序の方向を向いている。地球的な価値などを重んじている。

八幡:私は日本はEUと組むべきだと主張している。極端な話ではEUに加盟しても良いのではないかと思うくらい。

財政規律を取り戻すためにもEUに加入するしかないかもしれない。日本とヨーロッパが組んでそこにプラスでカナダ・オーストラリア・インドなどが組むとアメリカや中国を凌ぐ。これで米中が気まぐれを起こせないように牽制して締め上げていけばいい。

経済だけでなく軍事ないし安全保障でも、ここ数年は日本・英国・フランス・インド・オーストラリアによる軍事同盟はそれなりに完成している。フランスの軍艦だって来ている。アメリカが気まぐれを起こしてもEUと組んで対処できる。こういう牽制は中国に極めて有効であろう。

松田:私も兼ねてより感じていました。日英EPAの交渉だけでなく日英FTAなどの話もあります。そこを強化しながらもEUとの連帯を日本が深めることは、日本にとって国益になる。

八幡:そうです。カナダ、オーストラリア、インドですよね。薬などでインドはビックプレイヤーですからね

松田:海洋国家日本は英国と近いものがあり、英国とうまくやっているときの日本は幸せだった時代もあった。そこから大陸欧州を見ていくのが良いのでしょうね。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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