金融機関の質問は質問にならない

2020年06月16日 06:00

少しまとまった預金があるとして、銀行員から使途の有無を聞かれて、まともに答える人はいない。決まった使途がないといえば、どうせ、外貨預金だの、投資信託だの、保険だのと売りつけられるに決まっているからである。金融の営業では、顧客本位の名のもとに、顧客の意向の確認が重視されるのだが、下手に問うことは、問う動機を暴露して警戒させるだけなのである。

nanairo125/写真AC:編集部

金融機関のなかでも、銀行や信用金庫等の預金取扱金融機関の地位は、極めて特異なものといわざるを得ない。預金という特権的商品を扱うことで、顧客の懐具合、また、懐の中身の出入りまで知ってしまうだけでなく、融資を通じて、債務者である顧客に対して債権者としての自然な優越性をもつからである。

従って、銀行等は、顧客との関係で、対等であることはできないので、顧客に質問すれば、そこに必ず忖度が働くと考えられる。故に、例えば、なぜ預金においておくのかと聞かれれば、顧客は投資信託を買えという意味に解するわけである。

金融庁のいう顧客本位のもとでは、例えば、投資信託の販売に関して、金融機関は顧客の「資産状況、取引経験、知識及び取引目的・ニーズ」を把握していることが前提だとされるが、まさか、そのまま質問して、正しい答えが得られるとは、到底考えられない。特に、資産状況を金融機関に明かす人がいるはずもない。そもそも、顧客の資産状況を聞くこと自体が商業の常識に反している。

ところが、金融機関の常識、世の非常識だから、おそらくは、少なからざる金融機関において、大真面目に質問票が作成され、何の疑問もなく顧客に記入を強制するのである。こうして、顧客本位の杓子定規な形式的履行によって、実質的に著しく顧客本位に反したことがなされても、それが異常なことだと思われないところに、金融機関の重篤な病があるのである。

金融機関は、顧客との特異な関係について、全く自覚できていないわけである。

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
HC公式ウェブサイト:fromHC
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