イージス・アショア中止は英断:河野防衛大臣記者会見(令和2年6月16日)

2020年06月18日 06:00

防衛省サイトより:編集部

令和2年6月16日の河野防衛大臣記者会見におけるぼくの質問です(防衛省サイト)。

Q:これアショアだけでなく、オスプレイもそうですし、グローバルホークもそうですし、防衛省の中で必要ないと声が大きいのにかかわらず、官邸の方から押し付けられたという話を取材すると聞くのですが、これは非常に民主主義として、危うい部分もあるのではないでしょうか。結局、ナチス・ドイツで、総統府が国防軍に装備を無茶ぶりするような話に似ているような気もするのですが、大臣はそういうふうにお考えならないでしょうか。

※あれ、これ和泉首相補佐官と質問中にあったはずが、何故か消えている。何で(笑
なにか都合の悪いことでもあるのでしょうか?

Q:先日もブルーインパルスが展示飛行を東京で行ったかと思いますが、使っている機体のT-4に関していうと、かなり可動率が落ちているという、この落ちている理由は何かということと、T-4はかなり採用されてから年数が経っていまして、後継機種に関して何かお考えはございますでしょうか。

A:可動率の件については、後ほど調べてお答えしたいと思います。T-4の後継について、まだ議論、確たる方向性はないと認識しています。

Q:現在、世界中でもそうですが、F-35もそうですが、複座の戦闘機を開発せずに、練習機とシミュレータで入ってくる、初等練習機でかなり高度なシステムを積んでということもあり得るので、そうなると空自の初等練習機のT-7の更新にも関わってくるかと思いますが、そういう御認識はございますでしょうか。

A:後継について、よく承知しておりません。

Q:防衛省の定期会見の中で、防衛装備庁長官の会見がないのですが、これは例えば防衛装備庁長官の会見を定例的に行うといった考えはございませんでしょうか。

A:ありません。

Q:戦車の定数に関してお伺いします。現在の大綱ですと、陸自の戦車の定数が300両かと思うのですけれども、これ全部1-式で置き換えるというお考えでよろしいでしょうか。

A:後程、お答えさせます。

Q:通常の国であれば、例えば10式戦車を何両、いつまでに買うということを、まず初めに議会に納税者に対して提示して、それで揉んでからそれに了承されるということなのですが、わが国の場合は、これ何両買うか分かりません、いくら買うか分かりませんで、国会を通してしまうのは、ちょっと問題ではないかと思うのですけれども、大臣はその辺いかがでしょう。

A:防衛予算の制約がございますから、なかなか先々の見通しができないというのは現実としてあるのだろうと思いますが、小銃から戦車、戦闘機まで、やはりどのタイミングで、どれくらいのコストのものを入れていくのか、というものを何らか提示しないと、この受注している企業もですね、生産ラインを効率的に動かすということは難しいのではないか。

今のように、単年度で発注する数が上下に激しくぶれるとですね、それは受注する側も、なかなか最適な人員をそれに割り当てたり、ラインを組んだりということが難しくなるのだろうと思います。そういう意味で、財務省とも、しっかり御相談をしながら装備品の受注については、なるべくきっちりとした見通しを提示しながら、装備を更新する際には、なるべく更新が短期間で終わるようにやはりしていくのがベストだと思いますが、日本の財政状況に鑑みて、これ以上なかなか防衛予算を増やすというわけにはいきませんので、防衛予算の中で必要なものを優先順位をしっかりつけた上で、そうした調達についても可能な限り合理的に行っていくというのが望ましいと思っております。

Q:戦車だけが新しく更新されているわけなんですけれども、それに随伴する、いわゆる歩兵戦闘車、日本の場合ですと89式装甲車があるのですけれども、これの更新とかですね、あと87式自走高射機関砲の更新とかですね、本来パッケージとして考える機甲戦力の近代化が全く示されていない。戦車だけ新しくすればいいんだというような、いびつな方向性になっているかと思うのですが、こういうことをちゃんと本来は装甲車のパッケージを考えて決めることだと思うのですけれども、それがなされていないと思うのですけれども、大臣はいかがお考えでしょうか。

A:申し上げましたように、なかなか財政の制約がございますから、一括で何かというが難しいという状況にはございますが、やはり、少し中長期的に調達を見た上で、合理的な調達をしていくということが必要だというふうに認識しております。

この質問に関して報道室から回答がきました。

Q:イージス・アショアのランチャーは、1787億円の予算に入っているのでしょうか。

A:イージス・アショア関連事業のこれまでの契約額である約1787億円にイージス・アショアを構成する垂直発射装置(VLS)の取得経費は含まれておりません。

ハワイのイージス・アショア・サイトでの発射訓練(防衛省サイトより)

河野大臣のイージスアショア中止は英断だと思います。一度走り出した計画、しかも「官邸の最高レベル」から降ってきたような話ですから、相応の覚悟と根回しがないと無理でしょう。

キチンとアセスメントや問題点を洗い出すこともせずに、いきなり候補地を決め打ちして予算つけるという話は非常に胡乱であり。経緯を明らかにする必要があります。

そこまで行えば河野大臣は歴史に名を残す名防衛大臣として記憶されるのではないでしょうか。
すでに大臣は米国側、官邸とも調整済で、落とし所は決めているのではないかと思います。

理由をブースターにしていることはオカシイと皆さん薄々感じているでしょう。そもそも
海自のイージス艦が50海里外洋に出てからイージスレーダーに火をいているというのは法令に則ってのことです。近隣に住宅地があってそれができるわけがない。

同様にアショア防御のためには、通常の普通科の警備だけではなく対ドローン、巡航ミサイル、ロケット弾、迫撃砲などの対する防御システムが費用です。その流れ弾が飛んでくるのは最低でも半径10キロ、実際は20キロ以上になるでしょう。それらを大臣が会見で答えられないわけですから、詰んだ話です。

更に申せばイージスレーダーでも水平線見越しての探知は出来ません。イージス艦ならば前進して探知が可能であり、ハワイでの実写訓練もできますが、アショアは無理です。その上に海自のイージス艦と違うロッキード・マーティンの、しかも完成もしていないレーダーを採用しているわけですから、コストのオーバーラン、コスパの悪さは最悪です。

またこれを陸自が運用することによる陸自の予算や人員への圧迫も極めて大きなものになります。

代案としては、イージスシステムを前提ならば前から申し上げているにイージス艦の増勢です。その代わり旧式艦の早期の除籍、FFM、警備艦の調達削減が必要です。洋上哨戒はUAVを活用すればいい。いっそのことグローバルホークを海上用のトライトンに改修して使用するべきです。それとプレデターなどのMALEのUAVを導入すればいい。

イージスアショアは必要ない

いっそのこと、グローバルホークやオスプレイ、辺野古の基地も見直すべきです。

さて、戦車に関して河野大臣は含みをもたせました。もしかすると10式の調達が近く終了する可能性もあるでしょう。
文民統制の根幹はまずは納税者に対する情報開示です。これが防衛省自衛隊は極端に悪く、共産国、独裁国家並みです。そして政治による防衛省の予算のチェックと人事です。
これまたお粗末です。

10式戦車にしても何両をどのような目的でいつまでに調達して、総予算はどの程度だということも示されずに、場渡り的に開発が決定し、その後はこれまた調達数、予算が明らかにされないまま調達が決定されています。国会の機能が全く不全です。

装備調達含めて予算に関してはリードタイムをとってキチンと議論すべきです。政党は政党助成金を餅代としてばらまくのではなく、政策のための専門家を雇う原資に使うべきです。

また毎度申し上げますが記者クラブによる取材機会の独占による、他の媒体やフリーランス、特に専門記者の排除をやめるべきです。これでは民主国家とは言えません。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

European Security & Defence に以下の記事を寄稿しました。
Hitachi wins Japanese bulldozer contract

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年6月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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