プロ野球開幕:今後のベストシナリオとワーストシナリオ

2020年06月19日 06:00

写真AC:編集部

ファンが待ちに待ったプロ野球が、6月19日にいよいよ開幕する。横浜ファン歴30数年、年間数十試合観戦している筆者にとっても大変嬉しい話しなのだが、ファンとして欣喜雀躍するという状況では全くない。

開幕といっても当面無観客試合が続くからだ。そして無観客試合は最低でも7月9日まで続き、7月10から7月末までは観客は5000人まで、8月1日以降に収容人数の制限撤廃となる。これは政府方針(参照:NHK)を受けてのものだが、これに従って野球が実施された場合に起こりうるシナリオを考えてみた。

ちなみにこの方針に強制力はないが、現在の新型コロナの風評からしても従わないことなどまずできないし、実際 NPB(日本野球機構)はこれに従うという声明を出している。

無観客試合が及ぼすもの

無観客がどういうものかは、先般行われた大相撲の無観客開催を観た人ならわかると思うが、静まりかえった土俵でぶつかり合う力士を見ても迫力は伝わってこなかったし、臨場感も全くなかった。

また、プロ野球のオープン戦に当たる無観客練習試合もテレビで見たが、その味気なさと言えば大相撲の比ではなかった。それもそのはずで、一番小さい横浜スタジアムでも3万人、甲子園や東京ドームだと4万5千人以上も入る。国技館よりもはるかに大きい球場で観客が1人もいない映像をみると、野球を観ようという高揚感よりもむしろ「寂しさ」を感じた。

さらに選手はヒットやホームランを打っても、他の選手のハグはもちろんタッチすることもできず、タッチしているような動作、エアタッチとでもいうような動作をしている。例えば、さよならホームランを打った時、全選手がグランドに駆け出してきて打った選手に接触することなどもちろんできず、一旦興奮状態から覚めてからエアハグのようなことをするのだろうと思うと興ざめした。

正直なところ、映画で言えば無声映画を観ている感じ、料理で言えば「無味無臭」の料理を食べているような感じだ。料理なら腹を満たすために仕方なく食べるが、そうしなくとも済むプロ野球を積極的に観る気持ちは起きてこなかった。

こういう事態を憂いてか、横浜DeNAベイスターズは開幕から3日間「おうちで交流」と称してオンライン上での試合放映に加え、球団OBによる解説やトークショー、複数の視聴者の応援する様子をスタジアムメインビジョンに投影する試みを実施するとしている。

また、NPB以外の国内団体球技のリーグで構成する日本トップリーグ連携機構は6月15日、無観客試合に代わる新名称を「リモートマッチ」にし、リモートで応援する人を「リモーター」とすると発表して、スポーツ業界全体の盛り上がりを促す施策を打ち出した(参照:中日スポーツ)。しかし、これで盛り上がるかは正直疑問で、当面の苦肉の策のように思える。

無観客試合が終わったあと7 月10日から7月末まで最大5千人の観客を入れることができるのだが、狭い球場でも6分の5が空席ならば見た目は無観客と同じ感じではないかと思う。この無観客試合の何が怖いかと言えば、もともと昨年までネットで試合を見ていた人が野球をつまらないものだと感じ「見なくてもいいのでは」と考えてしまい、プロ野球人気が衰えていくことだ。

実際ネットの視聴料は例えばスカパーで4,054円/月、DAZNで1,750円/月と決して安い料金ではなく、味気ない試合に観る人が減っていく事は十分考えられる。

球団の経営事情

先般プロ野球のオーナー会議が開かれた後、議長を務める横浜DeNAの南場オーナーは、「プロ野球はかつてない危機的ともいえる状況。球団にとって非常に大きな問題で、減収のインパクトは大きい」とコメントした(参照:デイリースポーツ)

実際プロ野球の多くの球団にとって収入の5-6割が入場料であり、無観客試合が続くと経営は圧迫される。その損失は1試合につき1億円とも言われている(参照:朝日新聞)。横浜DeNAの2019年12月期決算での最終利益は約15億円。15試合で利益が吹き飛ぶ勘定となり、今年度の赤字の懸念どころか南場オーナーの「危機的状況」という言葉も大袈裟では全くない。

クラスター発生や第2波によるワーストシナリオ

ベストなシナリオはもちろん無観客試合、5千人の観客、全面解禁を通して何事もなくシーズンが終わることだ。しかしことがそのとおりに進むかも全く予断を許さない。政府の指針によれば感染の拡大傾向がみられる場合には、自粛や休業要請をするとしている。

怖いのはこの根拠のない曖昧な政府判断である。そもそも7月10日から7月末までは5千人ならば良いという判断もなぜ5千人かの理由は示していないし、8月1日に全面解禁もなぜ8月1日なら大丈夫なのかの根拠もない。単に3週間ごとに様子を見るという事だけだ。

もし、観客を入れたある球場で感染者またはクラスターが発生したとしたら、政府は「感染の拡大傾向がみられる場合」に該当すると判断し、自粛や休業要請をするだろうし球団も当然それに従うだろう。そうなると他の球団もこれに追随しプロ野球自体が無観客に戻ることも想定される。

そうなると資金力が乏しい球団の経営はいよいよ立ちいかなくなり、最悪身売りの話まで出てくる可能性も否定できない。実際プロ野球の球団はこれまで経営者は何度も変わっている。発足から経営者が変わっていないのは読売、阪神、広島だけで残りの9球団は全て経営者が変わっている。

2004年のプロ野球再編問題は記憶にまだ新しく、当時の一部のオーナーは8から10球団に球団数を削減しようとし、12球団の維持を求める選手会と激しくぶつかって2日間のストライキにまで突入した。今回も最悪のケースをたどれば、この時と同じ議論が生まれることもあり得る。

厚生労働省が公表した新しい生活様式によると、「スポーツの応援は距離をとるかオンラインで」と直接の観戦を支持してはいない。社会の雰囲気からしても、いまだコロナは「絶対悪」との認識のままである。

この空気を変え、プロ野球だけでなく全てのスポーツ、観劇、コンサートが普通に行われるためには、国民の意識が変わるのを待つしかない。コロナは悪であっても、これと共存しようという意識に早くなることを祈るしかない。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

過去の記事

ページの先頭に戻る↑