だから新聞はネットメディアに追いつけない

2020年06月19日 06:00

写真AC:編集部

紙とネットの連動に工夫を

コロナ対策に追われた通常国会が終わり、河井前法相・案里議員(自民)の逮捕で政局が波乱含みになり、小池氏の圧勝と思われる都知事選が始まります。節目の週を迎えた新聞メディアをみると、コロナ対策の三密自粛で、思うように取材ができないせいか、各紙とも似たような紙面です。

発行部数トップを強調する読売、「リーディング・ペーパー(主導的新聞)」を自称する朝日はほとんど同じ素材で記事を作っています。独占的な経済紙の日経は広告が集まらないのでしょう、一般の読者は読みそうもない自社主催の経営会議、シンポジウムを乱発し、広告代わりに参加企業から資金を集めているのだと思います。

情報源への密着が難しくなったせいもあり、取材力の衰えが著しいようです。スクープや独自材が減り、健康・医療、食品、教育、年金、家計、生活といった雑誌系の特集ページが目立ちます。高齢者以外は関心を持ちそうにない。若い世代ならネットで見つけられる情報ばかりです。

ざっと10分か20分、目を通せば読み終わる。その後、ネットでめぼしい情報、主張を探すことになります。若い世代が社会の主流になればなるほど、新聞は存在感を失っていきます。

紙の新聞とネット社会をつなぐ試みが乏しい。新聞が余力を失う前に試してほしいのは、世論調査の抜本的見直し、投書欄の拡充とネットへの公開です。それと記事連動に連動したコメントを簡潔にたくさん載せるようにして、読者の理解を助ける。コメントはネットでも募集する。

世論調査から言いますと、新聞各社は世論調査の長い歴史、ノウハウを持ち、専門部署も置いてあり、信頼度も高い。残念なことに、政権支持率、投票行動、重要政策(憲法、安全保障、財政政策など)への賛否などが中心的なテーマになっています。もっと柔軟にテーマを広げ、社会の動向調査ツールとして使う。どうでしょか。

今国会で、安倍政権は検察庁法の改正(検事総長、高検長の定年延長)法案を強行採決しようとしました。政権擁護派の黒川東京高検長の例外的な定年延長に連動した案件です。ツイッターでは600万もの抗議の声が上がりました。

官邸は「連続投票プログラムで押し上げられているだけ」と軽視していたところ、新聞・テレビの世論調査で政権支持率が急落して仰天し、廃案にした事件です。もう少し、ネットと世論調査を連動させ、情報社会の動向を探れるシステムを考案したらいいのにと思います。

ネット社会を最も嫌っていた読売新聞が「9月入学で賛否揺れた学生/ツイッターを本社とNTTデータが分析」(18日)という大きな解説記事を掲載しました。やっとネット社会の影響力の強さを認識したのでしょう。単なる解説記事にとどめず、もっとビジネス化したらいいのにと思います。

次が投書欄の活用です。朝日は「声」(オピニオン欄)、読売は「気流」という名のコーナーです。朝日は大きなスペースを割き、政治、社会問題など10本程度の投書を載せています。読売は身辺雑記的な投書が多く、充実しているとはとてもいえません。

知人の弁護士が何度か投書したのに、いつも採用されないと嘆いていました。どうも社論からはみ出た投書が排除されているうちに、無難な声ばかりになってしまった。お茶の間型の緊張感のないコーナーです。欧米の新聞のオピニオン欄は政権への鋭い論評をどしどし載せています。

一方、専門家が回答する「人生案内」(人生相談)というコーナーは長寿企画です。人生案内もネットで受け付けるようにし、それへの回答もネットで紹介する。専門家ではない一般の人の回答にも、面白いものがあれば新聞社側が選択して掲載する。どうでしょうか。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年6月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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