アビガンがまだ未認可の闇とワクチン接種妨害憂慮

2020年06月19日 21:00

日本人がコロナ戦争の勝者となる条件 』(ワニブックス)が発売になった。その内容の多くはアゴラで書いてきた原稿を現時点で微修正したものだが、内容的に大きく修正したところは少ない。

もともと、断定すべきでないことを断定などしてないから、その後判明したことで少々はかえているが、その程度である。

医薬品医療機器総合機構サイトより

そんななかで、けっこう評判がいいのが医療問題や薬の問題を論じた部分で、日本の医療を厳しく批判している私としても嬉しいことだ。

今回の経緯を通じて、日本の医療界の人々が非良心的だったとは云わないが、決して誉められたものではなかったと思う。そのあたりを状況も少し落ち着いてきたので論じていきたいと思うが、アビガンなど薬をめぐる問題もことは深刻であるし、今後のことも心配だ。

アビガンについては、すでに「守旧官僚の“守護神”石破茂氏がアビガンでは急進派」というかたちで論じたことがある。

「医療行政や関連法令に通暁していない者がこのような主張をすることは適当ではないのかもしれませんが、リスクを負うことができるのは国民から選挙で選ばれる政治家の立場であり、これがリスクを負いえない官僚や学者と決定的に異なる点です。政治主導の本質はまさしくここにある」として、「すでに政府は「観察研究」の枠を拡大すべく通知していますが、病院の倫理委員会の許可などの手続きをさらに簡素化・迅速化するとともに、承認自体の手続きもさらに急ぐ方策を探るべきと考えます」としている。

つまり、安倍首相の正式認可を急ぐべきだとした「圧力」を是とするとともに、それ以前でも超法規的に使用拡大をするように大胆な主張をしているわけだ。

また、ワイドショーでの安倍批判の急先鋒である玉川徹氏などもアビガン導入の急先鋒であったのが、面白いところだった。

エボラ熱用のデムレシベルという薬はアメリカで認められているというので日本でも使えるようになった。かつては、海外で認可されているのに日本では一から治験が必要ですが、それが緩和された成果だ。

一方、インフルエンザ用で日本で開発されたアビガンの使用は、どうも初期のうちに投与すると効果がありそうで、デムレシベルほど価格は高くないし備蓄もあるのだが、厚生労働省はとことん慎重でまだ認可されていない。

どうも、薬害エイズ事件で当時の課長が刑事罰に問われたことがあり、それがトラウマとなって、副作用も大きいといわれる薬の認可には慎重というか、誰も将来において処罰される可能性を排除してくれないのだから簡単に認可などできるものかという事情もあるようだ。

しかし、アビガンについては、世論の強い後押しもあったので、安倍首相の強い指示で厚生労働省も異例の早さで認可するかというような動きをしていたのだが、うやむやになりそうでもある。

妊婦が服用すると奇形児が生まれる催奇性があり慎重なのだが、現実に症状が緩和され、患者の苦しみを和らげているという報告があれだけあるなかで、なんとかしてほしかったことは忘れられるべきでない。

保険を適用するとかについては別の問題もあろうが、それも超高額のPCR検査だって効用に疑問があっても適用することにしたのと比べてもどうかとも思う。

薬事行政にあたっている技官やそのバックにいるそれぞれのシマの住人(ある種のマフィア)は、それなりに自分たちの良心に従って行動しているのだが、超法規的に政治が介入することも場合によっては必要だと思う。むしろ、それに対する歯止めのルール(期間限定とか)を決めたらいい話だ。

ワクチン接種への妨害を排除すべし

それから、私が心配なのは、これから開発されるワクチンの接種である。ワクチンの開発が新型コロナの再流行を抑える決め手だと言われるが、それならワクチンができるたらいいのかというと、そうではない。なにしろ、ワクチンの副作用を心配していやがる人が世界には多くいる。アフリカなどでは霊媒師などがワクチンへの疑問を言いふらして妨害することが問題になっている。

Pixabay

そして、日本では、たとえば、子宮頸がんワクチンの接種が反対派の妨害にあい、厚生労働省は接種の推奨を面倒がってやめてしまったままである。このことによって、日本の子宮頸がんになって手術を受ける人は高い比率のままで、WHOなどからも強く批判されているのですが状況は改まらない。

新型コロナウイルスの問題でよくテレビに登場する村中璃子さんという女医さんがいるが、日本の現状を告発したところ、公共の利益に関わる問題について健全な科学とエビデンスを広めるために、障害や敵意にさらされながらも貢献した個人に与えられる「ジョン・マドックス賞」を国際的な権威ある団体から表彰されたが、日本ではほとんど報道すらされなかった。それどころか逆に雑誌記事について名誉毀損で訴えられ敗訴している。どうも反ワクチン派の執拗な批判が怖くてマスコミはびびっているようなのは、関西生コン問題なみだ。

これでは、日本では新型コロナウイルスが開発されても、反ワクチン派の妨害にあってその普及率を上げることが難しいことが容易に予想される。

嫌な人は受けなければいいという人もいるだろうが、ワクチンは接種率が問題なので自分は嫌だという我が儘を認めては社会全体に迷惑がかかるのである。いまから、厚生労働省も政治も、反ワクチン派の妨害への対策を急ぐべきだろう。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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