バロンズ:個人投資家、黒人系企業の銘柄に殺到

2020年06月22日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは米国における格差拡大を取り上げる。新型コロナウイルスの大流行と景気後退のワンツーパンチを受け、格差拡大に拍車が掛かりつつある。パウエルFRB議長も6月16日、米上院銀行住宅都市委員会での公聴会にて足元の経済的苦境に対し「平等に降りかかるわけではない」と発言していた。格差拡大は投資家にとって他人事ではなく、600億ドルの運用資産を抱えるGMOのジェームズ・モンティアー氏は「下位90%の支出を抑制する」と懸念を表明、金利や株価のバリュエーション、長期的リターンに影響を及ぼすと指摘する。また。政治的な分断リスクも見過ごせない。コロナ後の格差拡大がどのような問題を引き起こすのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は全米で展開する黒人の命は大切(ブラック・ライブズ・マター)に絡んだ株式市場の動きを取り上げる。抄訳は以下の通り。

カバー写真:Geoff Livingston/Flickr

黒人経営者による企業の株価、デイトレーダーの買い集中―Shares of Some Black-Owned Companies Are Being Frantically Bid Up by Day Traders.

株式市場は、そこに住む人々の考えを反映する場所であり、企業の株式を売買することで大衆の知恵を抽出する場所だ。著名な経済学者であるジョン・メイナード・ケインズ氏はかつて、株式市場は最も魅力的な人物を選ぶというより大衆の好みで勝者が選ばれる美人コンテストと評した。同様に、株式市場も短期的にどこの企業の株式が人々の幻想を満たすかによって、人気銘柄決まる。

大抵、大衆はテクノロジーや暗号資産など新たな潮流に飛びつくか、社会トレンドに沿った投資先を選びがちだ。足元では、アフリカ系アメリカ人が経営する超小型銘柄が後者にあたる。AGFインベストメンツのグレッグ・バリエール首席ストラジテストは、人種問題に対する世論が大きく変化していると指摘。その上で、共和党寄りの世論調査専門家のフランク・ランツ氏の言葉「35年間にわたり世論調査を実施してきたが、こんなに急速かつ深い変化は経験したことがない。我々はたった30日前と全く違う国になった」を引用していた。

足元のトレンドを受け、米国企業は「ジェマイマおばさんのパンケーキ」や「ベンおじさんのお米」といったブランドを撤廃する一方で、黒人経営の企業や黒人を顧客に持つ企業の株価が急激に上昇中だ。

画像:クエーカー・オーツが1889年に売り出したホットケーキミックス、1957年にディズニーとコラボした広告。ブランド名となったジェマイマさんの一族は、ブランド撤廃に反対。

出所:Roadsidepictures/Flickr

例えば、黒人のリスナーが多いメディア企業アーバン・ワンのA株の株価は前週20倍も急騰し、36.30ドルをつけた。出来高も5,700万株と、1ヵ月前の1万株から桁違いの急増を遂げている。D株に至ってはさらに出来高が急増、株価も前週の88セントから4.15ドルへ舞い上がった。共に、原動力は個人投資家でスマートフォン投資アプリのロビンフッドでの人気銘柄上位に挙がっていた。

チャート:アーバン・ワンD株の推移

出所:Stockcharts

事実、ロビンフッドの個人投資家データとして注目されるロビントラックは、ヘッジファンドの間でも熱い視線が注がれている。アーバン・ワン以外での注目銘柄は黒人が経営しロサンゼルスに拠点を置く貯蓄貸付組合のブロードウェイ・フィナンシャルで、株価は前週比95%高、週ベースの出来高も前週の1万株前後から1.7億株に至った。

こうした変化は、アフリカ系アメリカ人に影響を与えてきた経済格差を懸念したものなのか、あるいは投機的な動きなのか。前者であればよいが、実際は後者である可能性が高い。

ロビンフッドの投資家が与える株式市場の影響について議論の余地がある一方、人気銘柄への影響は明白だ。例えば5月22日にチャプター11を申請した破綻銘柄ハーツは、証券取引委員会が問題点を指摘したため撤回したが、個人投資家の買い意欲に乗じて増資する予定だった。KDPインベストメント・アドバイザーズのアナリストは「破綻からの復活を狙った誠実な対応策というより、個人投資家の財布に乗じたに過ぎない」と切り捨てる。

また、20歳の学生は6月12日に株式取引で被った73万ドルの負債を苦に自ら命を絶ってしまった。理解せずに複雑なオプション取引に手を出し、大損してしまったのだろいう。

個別銘柄でみられる急激な変動は、普段はスポーツ賭博に講じる個人投資家による取引によって発生しているのだろう。とはいえ、主要株価指数は新型コロナウイルスの第2波が懸念されるなか、過去5週間で4回目の上昇を遂げた。最近の大衆の知恵というものは、筆者を神経質にさせる。


ロビンフッドについては、日本でも頻繁に取り上げられるようになりましたね。筆者は、隔週で出演する「北野誠のトコトン投資やりまっせ。」でフィーチャー致しました。ミセス・ワタナベならぬジョン・Q・パブリックとして存在感を見せる米国人個人投資家は①2019年のネット証券の手数料無料化、②コロナ禍での個人投資家の台頭、③景気刺激策での小切手1,200ドル支給、④外出禁止措置に絡むプロスポーツ試合の停止とスポーツ賭博の中止――が影響したことでしょう。この辺りについては、また詳しくお伝えします。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年6月21日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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