小池知事の4年間とコロナ対策の通信簿

2020年06月22日 14:00

東京都知事選挙が戦われているが、4年前に私は小池氏を支持した。政策より政治に終始し、また、国政進出を中途半端に試みるなど残念な状況だが、小池氏だけが悪いわけでない。

あの選挙からさほど時間がたっていないころ、自民党の幹部に、小池氏が再選を狙う場合に、それを阻止するのは不可能にちかいから、小池再選を前提に戦略を練るべきだといった。

そもそも、日本では現職知事が再出馬したときの当選率は約90%であって、こんなのは民主主義でなく制度的な欠陥である。現職の再選率を減らすことが不可欠だ。

現職知事、とくに2期目は強いし、五輪の年に再選の選挙が予定されていた。しかも、これまで女性現職知事が、落選したことは一度もないのである。これでは。小池氏が再選を希望したらかてるはずないのだから、8年は仕方ないと諦めて与党として注文をつけたほうがいいと思った。

ところが自民党もそれを嫌がったし、小池氏もあわよくば政権などと考えて、都政が前向きに展開しなかったことの責任は両方にあると思う。両者がほどほどに協力すればさまざまな改革が可能になっただろう。

小池氏もこれまで一匹狼でやってきたのが、都庁という大シンクタンクを手に入れたのだから、いくらでも政策を練れるのに、それを生かせたとは言いがたい。政権を狙うなら都知事として実績を積んでからにすべきだった。

しかし、そうした一般的問題は、選挙が終わってからまた書きたいと思う。

ところで、その小池知事のコロナ対策だが、これも、『日本人がコロナ戦争の勝者となる条件』(ワニブックス)のなかの主要テーマの一つとして書いたのでそのエッセンスを紹介しておく。

ひとことでいえば、コロナ対策への国民の関心と協力を得るためには功績は大きい一方、東京との身勝手は全国に悪影響を及ぼすという自覚が不足していた。

いま現在のコロナ対策は過剰だと私も思うが、3月の段階では予断を許さなかった。

なにしろ、欧州からやってくるウイルスがどんなものなのか誰も分からなかった。また、さらに状況が悪化したときに、強制措置なしでどう乗り切れるのか不安もあった。

4月に非常事態を宣言するときには、賛成が多くなっていたし、自主的にそれを受け入れる国民も多くなっていたが、3月下旬にはまだ疑わしかった。

そんななかで、政府が大胆なコロナ対策を建てるにあたって、小池氏というジャンヌ・ダルクがいたことは良かったと思う。

さすが、テレビキャスター出身だけあって、言語明瞭、要点にしぼっての発表能力は、ややまわりくどい印象があった安倍首相よりも説得力があった。

だが、医療現場の統率という場面では、東京都の対応は混乱を極めて、各種の数字も統一性のないものが多く、日本全体の状況をつかむうえで支障になった。

このあたり、前知事の舛添要一氏だったら、現場に乗り込んで専門的な説明も聞いて理解し、適切な専門家の助力も得ながらいい仕事ができただろう。

広汎な厳しい休業要請をする一方、財政調整基金というへそくり6500億円を使って、気前よく出し、コロナと戦うイメージを出すとともに、業者からも喜ばれて選挙対策にしたかったのだろう。しかし、バラマキの度が過ぎて他の道府県は追随できず全国的混乱を招いた。そもそも、休業した業種と実際の被害は一致せず不公平だった。

さらに、この基金は、首都直下地震などのときの備えとして大事なものなのに使ってしまったともいえ、いざというときどうするつもりなのだろう。コロナで地震の可能性が減ったわけでないのだ。

普通なら、国から「そんな東京は余裕があるんなら東京五輪の追加費用とか仰っても一銭も出しませんからね」といわれるから極端なことはしない。他府県より手厚い人気取り政策を大規模にする自治体が、別の案件で国の財政支援を頼んでも、それを受けるのは論理的でない。

しかし、7月の都知事選挙を乗り越えることだけ頭にある小池氏はその先のことは無視して突っ走った。

この結果、ほかの知事さんたちは恐慌を来した。吉村洋文大阪府知事らが、「補償なき休業はない」とかいいだし、過度の休業と天文学的補償金へ傾いていった。

そもそも、新型コロナウイルス対策、ことに休業対策は、社会的にも財政的にも負担が少ない割に感染防止効果が高い政策を選ぶコスパ意識を無視しすぎた。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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