スペイン政府、今秋に資金難に陥る可能性

2020年06月23日 06:00

2000年代後半にスペインの失業率は20%以上になると予測した経済学教授サンティアゴ・ニーニョ・ベッセラはスペインは今年9月か10月にEUから支援金を要請せねばならなくなるという予測を立てた

失業率が20%を超えるというのは「まさかそのようなことはありえない」と当時経済専門家の間でも口にしなかった数字であった。それをニーニョ教授は見事的中させたのであった。それ以来、彼はスペインの経済界では注目されている経済学者のひとりである。その彼が今月、スペイン政府資金難でEUに救援金を仰ぐようになると指摘した。

実際、スペイン政府が現在資金難にあることは休業補償者の内の90万人が約束されている補償金をまだ受け取っていないということが証明している。(参照:eleconomista.es

スペインのサンチェス首相(本人ツイッターより)

休業補償というのは、コロナウイルスの感染拡大を警戒して政府が実行した封鎖に伴って営業停止となった企業について、雇用者に代わって政府が社員の給与の7割を負担するとしたもの。休業補償の対象者は凡そ200万人。その内の90万人が3月から一銭も受け取っていないということなのである。政府が彼らの銀行口座にこの補償金を入金ていないということ。理由は政府が資金不足に陥っているからである。

にもかかわらず、先月25日にはサンチェス首相自らが生活困窮家庭を対象に最低限の所得補償の支給を6月末までに85万世帯を対象に実行すると発表、政府の資金難で休業補償もまだ受け取っていない社員がいるというのに、6月末までには貧困家庭を対象に所得補償の実施をするとしたのであるどこからその為の資金を拠出しようとするのであろうか? 筆者が推測するに、6月末までに約束した一部の貧困家庭にだけこの生活支援金を提供して、残りは待ってもらうということになると思う。少なくとも、政府の貧困者を助けるプランは実行に移したという選挙アピールが目的だ、と思う

前述したように、休業補償をまだ受け取っていない社員はもう2か月半もその支給を受けていないのである。しかも、企業の回復が遅く、休業補償の延長を今年末まで実施する必要があると言われている。政府もそれに反対していないが、それを9月末までなら合意するとしている12月末までだとさらに資金が必要になって来る。

今年のスペイン経済の見通しは良くない。財政赤字は9.2%、負債はGDP115.5%、失業率19%という予測が政府のそれである。ところが、独立財政機関(AIReF)は財政赤字は13.8%、負債もGDP122%まで予測している。(参照:elindependiene.com

また、政府は今年の必要資金は2970億円(356000億円)と見ているが、その内の最低でも1300億円を国債を欧州中央銀行で買い取ってもらう。EUの時短補助支援(SURE)も利用する意向だ。更に、欧州安定メカニズム(EMS)からの資金を仰ぐことも必要であろう。

特に、問題は今年下半期の動向で、良い見通しはない。今年の政府の歳入は257億ユーロ3840億円)の減収になると見ているが、AIReFは減収は政府の予測を上回る510億ユーロ61200億円)までになると見ている。減収の中でも目立つのは法人税の8.7%、消費税5.2%、所得税2.4%の落ち込みを政府は予測している。それに対して、AIReFはそれぞれ減収率は16.8%、10.8%、6.6%と政府の予測を大幅に上回った予測をしている。(参照:elpais.com

しかも、今年のスペイン経済への不信から資金の外国への流出は現在まで263億ユーロ(31600億円)。昨年3月の時点までの86億ユーロ(1兆300億円)と比較しても3倍の資金が外国に流出している。それだけ、スペインの今後の経済への期待は薄いということである。(参照:libremercado.com

スペイン政府の見通しが少し楽観的なきらいがある。スペイン経済の特徴はサービス産業がGDP65%を占めているということ。その中で柱になっているのは年間8400万人の外人が訪れる観光産業である。これがGDP15%近くを占めている。ところが、今年はコロナ感染による封鎖が3月から6月まで3カ月続いたということで、その間の外国からの訪問客はゼロに等しい。コロナの影響で政府の歳出が大幅に増大することになった。その上、極左ポデーモスが政権に加わったことでポピュリズム政治に走る傾向をより否めなくなっている

例えば、200万人を対象にした貧困層の所得補償の提供がそれである。筆者もその実行は必要であると思う。しかし、スペインの多くの自治州で既にそれを独自に実施している。ということで、政府からの救済金と二重に受け取ることになる世帯が増えることになる。ということは、働くよりも救援金を貰った方が収入が多いという世帯も出て来る。それは働く意欲をなくす場合もあるということだ。

経済の回復は政府が期待している以上に遅く、サンティアゴ・ニーニョ教授の予測を冒頭に紹介したように、今年9月か10月に政府は資金難に陥可能性は十分にあるということである。

昨年12月の経済まで回復するには20239月まで待たねばならないとコンサルタント「フリーマーケットCI」は指摘している。政府が指摘している「V」字型のようにこれから景気は上向きになって来年には回復するという予測理想論でしかない。(参照:libremercado.com

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白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家

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