ドイツの憂鬱

2020年06月24日 14:00

ドイツが苦しんでいます。経済が堅調だったのは2017年末まででその後、GDPはゼロ付近をさまよっていました。今年の1-3月に及んでマイナス2.2%となり、2009年以来の下落幅となりました。また、1-3月はコロナによる経済封鎖期間が2週間ほどだったのにこれだけのマイナス幅となっており、4-6月は「顕著に低調となる」と見込まれており、3期連続のマイナス成長は確実視されます。

この数年の間にドイツはビジネスイメージを大きく遺棄させてしまいました。ドイツ銀行の経営不振とフォルクスワーゲンの不正問題であります。両社とも倒産こそ免れていますが、市場に残した爪痕は大きいものでありました。そんな中、ドイツ政府が必死に支援した業界がテクノロジー系でありました。

ドイツはIoTなどを含めたテック産業の育成に努めていますが、世界で名が知れたドイツ企業はビジネス向けソフトウェアのSAPが業界で世界4位となっているほかはあまり目立った成長企業がありません。そんな中、期待の星とされていたのがWirecard(ワイヤーカード)社で決済サービスを行うフィンテック企業として著名であります。同社は株価指数を決めるDAX30(ドイツ主要30社)にも入っていました。

(ワイヤーカード社ホームページから:編集部)

(ワイヤーカード社ホームページから:編集部)

そのワイヤーカード社に本来あるはずの19億ユーロ(2300億円相当)がないことで大騒ぎとなり、前CEOが警察に出頭し逮捕される事態に発展しました。経理上、この19億ドルはフィリピンの2つの銀行に預けてあるとされていたのにフィリピン側がその存在を否定、架空取引で帳簿を膨らませていた疑いがもたれています。

当初、この事件は19億ドルを持ち逃げされたのではないか、という見方もあったのですが、そもそもなかった可能性が高まっており、企業統治、会計士E&Yの責任、ドイツ威信を含め、問題が佳境となっています。

会計会社のKPMGが独立調査の任を受け2016年から18年の会計処理を中心に特別調査を行っていますが、その問題が表に出始めたのは昨年の秋、そして6月初めに当事者で逮捕されたマークス ブラウンCEOが辞任と混迷の度合いを深めていっています。問題はアジア地区の取引にあるようですが、第三者企業も絡んでおり、かなり複雑な様相となっています。

ドイツ銀行、フォルクスワーゲンそして今回のワイヤーカードそれぞれにみられる共通点は巧みなごかましであります。調べてもなかなか本当のことが分からないぐらい仕組まれてしまっていることが特徴です。ドイツはまじめである一方、狡猾なところがあるということでしょうか?

本来であればドイツは欧州大陸の経済の機関車として全体を引き上げる役割を果たさねばなりません。ところがこの数年、冴えない理由の一つに国家の向かうべき目標を失っているように感じるのです。

ドイツ全般の外交を見てみましょう。最近注目されているのがロシアとドイツを結ぶ1222キロにもわたるパイプライン「ノルド ストリーム 2」で既に1000キロ以上は完成しています。ところがアメリカがパイプライン敷設に外国企業をかかわらせないという制裁発動をしたことでとん挫し、現在、ロシア企業が最後の部分の工事を行うための準備を行っています。

次にドイツと中国の関係があります。メルケル首相が中国寄りということもあり、貿易や二国間関係を含め、拡大路線を突き進んできました。ご承知の通りメルケル首相は旧東ドイツという共産圏出身者であります。その意味では中国の思想とはウマが合うのかもしれません。

対ロシア、対中国ともアメリカがそれを邪魔します。つまり、ドイツは敵に回したくないはずのアメリカと疎遠になり、EUに所属していた英国も引き裂かれています。盟友、フランスのマクロン大統領とはEUの改革プランを巡り意見が合わない中、孤高のドイツという状況に陥っています。

ドイツがではどこまで我慢できるのでしょうか?私はメルケル首相の21年秋の任期が終わった時、国内ムードは少し揺れるのではないかという気がしています。今のドイツの雰囲気はメルケル首相の存在そのものがマイナスになりつつあるように見え、新風を吹き込まないと欧州の活性化そのものに影響を及ぼすように見受けられます。トランプ大統領との距離感を含め、メルケル氏のネガティブで保身的なスタンスはドイツの長年の不振、そして隠ぺい体質を色濃くしているのかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年6月24日の記事より転載させていただきました。

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