「くまモン」成功を糧に、東京都政に生かす新時代の発想力

小野 泰輔

おはようございます。
東京都知事候補の小野たいすけ(泰輔)です。

選挙戦中盤、「期日前投票で小野さんに入れたよ」とお声がけもいただくようになり、日に日に手応えを感じています。しかし、ついこの前も「小野さんが『くまモン』を手掛けたなんて知らなかった」という反応もあって(苦笑)、私の名前や実績が東京の皆さまにまだまだ伝わりきれてないことを痛感します。

ちょうど「くまモン」の話題が出たので、今回はそれについてお話したいと思います。

「くまモン」はなぜ大成功したのか

「くまモン」はおかげさまで、滋賀県彦根市の「ひこにゃん」、奈良県の「せんとくん」などと並んで、ご当地キャラクターの代表的な存在になりました。

日銀熊本支店の資料がネットに残っていますが、2011年のゆるキャラグランプリで優勝してから2年間の経済効果は、「くまモン利用商品の売上げおよび観光客増加による経済波及効果」が1244億円、パブリシティ効果が90億円。さらにNHKの紅白歌合戦に“出場”するなど、日本国中に知れ渡り、くまもんの関連商品の年間売上高は昨年が1579億円。これは熊本県の調査開始から8年連続で最高を更新する快進撃を続けており、昨年12月までの累計は約8100億円にのぼります。

国民的人気の「くまモン」。2016年にはマット・デイモンさん主演映画の日本プレミアにも登場(Johnson/flickr)

「くまモン」の成功は、これも皆様によく知られていることですが、キャラクター誕生からまもない段階で、熊本県で著作権を買い取って県の許可を得た事業者、個人であれば無料でロゴとキャラクターを使うことができるという「フリー」化を敢行したことにあります。

生みの親である小山薫堂さんが「みんなを幸せにする存在に」ということで、それまでの行政のPRキャンペーンにありがちだった「お上主導」ではなく、県民が主体的に動きたくなるよう仕組みにするという、全く違うコンセプトでつくられました。だから著作権を県で囲うようなことはせず、許可制にしつつも、できるだけ県内の事業者に使っていただきやすいようにしかけました。

猪子さんにも認めていただいた成功の本質

正直ここまでヒットするとは当時思っていませんでしたし、実現までさまざまな課題はあったのですが、くまモンの著作権フリーの経験から言えるのは、デジタル時代の潮流に合わせて、発想を大胆に変えて、仕組みを抜本的に作り上げていくことがいかに重要かということです。コンピューターにたとえると、そもそものハードウェアが古いままでは、OSがどんなに新しくても機能不全に陥るわけです。

副知事時代にIT起業家の猪子寿之さんと対談させていただいた際

「『著作権で食う』って言うのは、20世紀までは大きい産業。今世界では『コピーライトはビジネスにならない』っていうのが常識になりつつある」

くまモンは21世紀っぽい、グローバルなやり方をやられている

と高い評価をしていただきました。猪子さんには、熊本の仲間たちで追求した本質を言い当てていただいたような気がして、とても嬉しく思いました。

東京全体を変えるにはまず都庁内から

写真AC

では、「くまモン」の経験を、私は都知事として東京のために何を生かせるのでしょうか。

デジタル化という点では、いまの都政もようやく本腰を入れ始めて、公文書のインターネット検索の無料化、都庁内のはんこレス、ペーパーレス化などを進めようとしています。大手ネット企業の前社長を副知事に登用もしました。しかし、漏れ聞こえてくるところでは、役所の職員の皆様とカルチャーギャップもあるらしく、思い描かれていたような「“爆速”で事を進める」とは行かないのかもしれません。

東京全体を変えるためには、まず都庁内が重要です。千里の道も一歩から。私は都の職員との関係構築を最重視します。熊本でもそうでしたが、私は基本的に職員をいきなり怒ることはありません。誠意や信義がないときは別ですが、とくにチャレンジをしようとして失敗した職員を結果だけで咎め立てることは絶対にしません。

こういうトップの姿勢がなければ、部下は思い切った挑戦をすることはできません。実は「くまモン」の成功を下支えしたのは、職員の皆さんの意気込みがあったからです。知事をくまモンと一緒に吉本新喜劇に出してズッコケさせたり、山奥の村で私とくまモンがバンジージャンプをやってみたり、といった大胆な企画は、日頃の信頼関係があったからです。

東京都の職員は石原知事の時代に「シャドーガバメント」(影の政府)と言われたほど、霞が関に負けない存在感を発揮しました。公文書のデジタル化、島嶼部のオンライン診療に向けた基盤整備、AIやIoTを導入した都内のインフラ構築…優秀な都庁職員を知事がまとめあげれば、できない政策はないと言っても過言ではありません。

どんなに構想が素晴らしくても、前例のないイノベーションを着実に進めていくには、それを具現化するための仕組みと、関わる人の巻き込み方があってこそ。「くまモン」の経験で得た「成功の方程式」を東京の発展のために生かしてみたいと思います。