今国会で成立したIT・Fintech企業注目の重要法案4選

2020年06月26日 06:00

6月17日に今年の通常国会が閉会しました。

2020年の国会審議では新型コロナウイルスへの対応に多くの時間があてられましたが、63本の法案が成立しました。そのうち、IT企業やFintech企業に大きな影響を及ぼす重要な法案も成立しています。

今回、南知果弁護士(法律事務所ZeLo・外国法共同事業所属)から、2020年の通常国会で成立した重要法案についての紹介記事を寄稿していただきました。

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1 個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律

まず第一に挙げたいのは個人情報保護法です。

個人情報保護法は、平成27年(2015年)の改正時に「3年ごとに見直す」といった規定が設けらました。今回は「3年ごと見直し」の規定を受けて個人情報保護に関する実態把握や論点整理が実施された上で、改正が行われました。

改正内容は多岐に亘りますが、社会におけるデータの利活用が進み、様々な事案を踏まえた中で、利活用と保護のバランスを取りながらも、事業者の遵守すべき義務もまた多様化している傾向にあります。

改正個人情報保護法は、令和4年(2022年)春頃の施行が予定されています。施行に向けて、2020年夏には政令、委員会規則、ガイドライン等の基本的な考え方が提示され、2021年1月~2月には意見募集がなされる予定です。

各事業者は、改正法及び政令、委員会規則、ガイドライン等の内容についてしっかりと理解し、対応していく必要があります。

法律案の概要については、下記の個人情報保護委員会の資料にまとまっています。

2 金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律

二つ目は、主にFintech企業が押さえておくべき重要な法改正です。

オンラインでの金融サービスの提供が可能になり、様々なFintechのサービスが現れていることを受け、キャッシュレス時代に対応した便利でかつ安心安全なサービスが誕生することを目指した法改正です。金融サービス仲介業の新設、資金移動業に関する規制の整備等様々な内容が盛り込まれています。

(1)金融サービス仲介業の新設

これまでは、銀行(預金・住宅ローン)、証券(株式、投資信託、社債)、保険は業態ごとに縦割りとなっており、これらのサービスを仲介するにはそれぞれ別々のライセンスが必要でした。

法改正によって、1つの登録で銀行・証券・保険すべての分野のサービスを仲介可能にする「金融サービス仲介業」という新たなライセンスが設けられました。新たなライセンスを取得する事業者によって、ユーザーにとってより一層便利でかつ安心安全なFintechのサービスが生み出されることが期待されます。

(2)資金決済法の改正

Fintech企業にはおなじみの資金決済法も改正されました。

これまで、資金移動業の登録をすると100万円未満の送金をすることが可能でしたが、法改正によって、資金移動業が「第一種」「第二種」「第三種」と3類型に分かれることになります。

第一種資金移動業は高額送金のための類型で、認可を受けることで100万円以上の金額を送金することが可能になります。また、少額送金を行う第三種資金移動業者は、利用者資金の保全方法について預貯金等による管理が可能になる等、リスクベースアプローチが採用されています。

また、実質的に個人間送金を行う行為が資金移動業の規制対象であることが明確化される等為替取引に関する規定も整備されています。

このほか、具体的な改正内容は今後定められる内閣府令を確認する必要がありますが、前払式支払手段に関する規定も整備されているため、前払式支払手段を発行している事業者も改正内容をよく確認する必要があります。

法律案の概要については、下記の金融庁の資料にまとまっています。

3 割賦販売法の一部を改正する法律案 三つ目もFintech企業等に関係する法改正です。

割賦販売法は、主にクレジットカード会社や加盟店を対象にした法律です。

テクノロジーが発展し、様々な決済サービスが登場していることを受けて、新しい技術に対応するために法改正が行われました。

特にテクノロジーの観点からは、ビッグデータやAIを活用した与信審査を可能にしていくために、新たな審査手法についての認定制度が創設されたことが注目されます。認定の詳細な要件については、今後経済産業省令で定められることになります。

そのほか、スタートアップ等の参入障壁を下げるため、少額の分割払いサービスを提供する事業者向けの新たな登録制度が創設されました。

また、決済代行業者やECモール事業者にクレジットカード番号の適切な管理を義務付けることも盛り込まれており、Fintech企業以外の事業者にも影響がある点には留意が必要です。

法律案の概要については、下記の経済産業省の資料にまとまっています。

4 国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案

いわゆる「スーパーシティ法」です。

「スーパーシティ」とは、AIやビッグデータなど、第四次産業革命における最先端の技術を活用し、未来の暮らしを先行実現する「まるごと未来都市」であると説明されています。

「スーパーシティ法」の下で、実現すべき複数の規制改革を含む事業内容が一体的に検討され、各省での検討が同時・一体・包括的に進むことが期待されています。

スーパーシティ構想を進めたい自治体等は今年(2020年)夏にも公募され、早ければ年内にも選定がされる予定です。特にAIやビッグデータを活用した最先端技術を活用して社会的課題の解決に取り組んでいるような事業者は、スーパーシティにまつわる今後の動きに要注目です。

いずれの法律も施行はまだ先になります。

各事業者は、自社ビジネスに関係する法改正の内容を把握し、法律が実際に施行される前にきちんと準備をしておくことが肝要です。また、施行に向けて政令や規則等がどのような定めになるか注目し、パブリックコメント等で事業者の意見を提出する等ルールメイクに関与していく姿勢も求められます。

(南 知果)

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南 知果(Chika Minami)

弁護士(法律事務所ZeLo・外国法共同事業)。2012年京都大学法学部卒業、2014年京都大学法科大学院修了。2016年西村あさひ法律事務所入所。2018年4月、法律事務所ZeLoに参画。弁護士としての主な取扱分野は、スタートアップ支援、FinTech、M&A、ジェネラル・コーポレート、危機管理・コンプライアンスなど。消費者庁「消費者のデジタル化への対応に関する検討会AIワーキンググループ」委員を務めるなど、ルールメイキング/パブリックアフェアーズに関する業務も行っている。

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編集部より:このエントリーは、メルカリの政策企画ブログ「merpoli(メルポリ)」の2020年6月25日の記事より転載させていただきました。掲載を快諾いただいたメルカリグループに感謝いたします。オリジナル記事をご覧になりたい方は「merpoli」をご覧ください。

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