装甲車開発するならば、既存のトラックベースが良いんじゃないか?

2020年06月26日 06:00

陸自は新型の次期装輪装甲車と共通戦術装輪車の8輪装甲車二種類に加えて軽装甲機動車の後継の小型装甲車を導入しようとしています。

96式装輪装甲車(陸上自衛隊第6師団サイトより)

共通戦術装輪車は16式機動戦闘車の派生型である、三菱重工のMAVの採用が事実上決まっています。次期装輪装甲車はそれとほぼ同じクラスの車体を選ぶことになっており、MAV、外国製のAMV,  LAV6.0が候補になっています。

異なったほぼ同じクラスの2種類の装甲車が必要でしょうか。単に兵站に負担がかかるだけでしょう。その意味ではMAVが選ばれればいい、ということになりますがそう簡単ではありません。恐らくは高価な8輪装甲車を揃えるだけの予算が陸自にはありません。派生型がすべて、毎年少量ずつの調達になってまたもや調達に30年もかかるような話になるでしょう。

個人的には次期装輪装甲車と小型装甲車は一本化して大型で安価な4輪ないし6輪の装甲車を採用した方がよろしいかと思います。4人乗りで武装もない軽装甲機動車を主力APCにした愚行を繰り返すべきではありません。詳しくは以下を参照ください。

軽装甲機動車をAPCとして運用する陸自の見識

次期装輪装甲車と小型装甲車の後継ならば例えばブッシュマスターでもいいでしょう。すでに陸自で採用していますから導入もスムーズでしょう。ただし構造上車高が高いのでやや使い勝手が悪い。

あとは既存のすでに定評のある軍用トラックをベースにした装甲車がいいでしょう。例えばメルセデスのウニモグをベースにしたKMWのディンゴ2は4輪6輪があります。任務に合わせて4輪か6輪を選べます。合わせて同じトラックも採用すれば整備、教育、部品など兵站が随分と楽になります。

国産で外国製トラックをベース開発するオプションもあります。国産のトラックよりもコンポーネントやパーツのコストも安いでしょう。

ウニモグの他に、タトラ、ARQUUS(旧ルノー・トラック・ディフェンス)、MANなどもあるでしょう。すでに多くの国で採用されており、性能も品質も確かです。これらをベースに開発すれば開発、調達コスト、開発リスクも低減できます。またこれらのトラックは諸外国で装甲キャブも開発されているのでそれも魅力です。PKO用にそれらを容易に調達できます

その中でもウニモグならばすでに自衛隊でも民間でも採用されており、整備基盤も存在します。因みにウニモグを最初に装甲車に転用したのは南アフリカです。南アは国産トラックシリーズの採用に伴って不要となったウニモグの車体をブッフェルやマンバMk2に転用しました。ソ連崩壊後の90年代にはウニモグやタトラのトラックを流用した装甲車が多数開発されるようになりました。

三菱重工は自社の強みはエンジン、その他のコンポーネントを内製化しているのですり合わせが強いと言っています。確かに一理はあります。ですが、反面性能、価格で外国製に勝てないもの現実です。三菱重工のエンジンと、カミンス、キャタピラー、シュタイアー、MTUなどのエンジンを比べてみれば歴然でしょう。

重工のエンジンはその車両の専用になりがちで生産数も少ない。アップデートもされない。当然ながらコンポーネントやパーツも高い。例えば軽装甲機動車とランクルのコンポーネントを比べて見れば分かるでしょう。

実際に19式自走榴弾砲の車体は重工の車両をやめて、MANラインメタルディフェンスのトラックを採用しています。

今や装甲車はパソコンと同じで、信頼性があるコンポーネントや素材などを世界中から調達するやり方が増えています。トルコもそれで急速に装甲車両の開発技術を向上させてきました。輸出も増えて、その分経験が積めます。
そして一定以上能力がついてからエンジンなどのコンポーネントの国産化を進めています。

特に我が国の場合、輸出による技術経験の蓄積も知見も得られないので、外国製の車体を使い、開発してみる(当然ながらまともな開発費を装備庁がだす)。またそれを外国製の同様の装甲車と比較して、優れている方を採用し、生産は日本で行う。そうすれば、装甲車両の開発基盤も維持でき、比較的に低リスク、低価格で装甲車両の調達ができると思います。

バトルマネジメントシステムなども外国製を調達すればいいでしょう。国内でまともなものを作るのはノウハウもなく、無理です。

国産のもう一つの宿痾は防衛省と自衛隊に開発に必要な知見と能力が無いことです。コマツの8輪装甲車の失敗や軽装甲機動車をみれば明白です。軍隊としての当事者意識と能力がない。装備庁は基礎研究も殆どやっていないし、技官は実際にものを作った経験もない。海外の動向にも無関心です。

であれば外国のメーカーなりコンサルに丸投げした方が、まともなものが安く入手できるでしょう。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

European Security & Defence に以下の記事を寄稿しました。
Hitachi wins Japanese bulldozer contract

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2020年6月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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